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最終章:無双代行の結末
空中城塞攻略⑧・賢醒
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激昂したミラ様に圧倒され、私は指一つ動かすことができなかった。
やはりこのお方は人一倍優しいだけに、怒りを露わにした気迫も壮絶を極める。
あのような光景を目の当たりにし、我慢できなかったのだろう・・・。
剣を構え、ミラ様はキネウラの眷族にされた人間達を無視し、宣言通りキネウラのみを狙った。
慈しみの情など一切持ち合わせていない、殺意に満ちた眼差しで・・・。
「きっ・・・!?」
寸でのところで避けたキネウラの首筋をミラ様の剣の切っ先が撫で、傷口から血が噴き出る。
「虫なのに血は赤いんだ?」
「有言実行とは見事です。これはわたくしも、気を引き締めねばなりませんね。」
キネウラが両手の平を地面に向けると、瞬時に大量の薄長い卵が出現し、そこから軍蟻種が成虫の状態で孵化した。
卵から孵った軍蟻種はミラ様にまとわり付き、やがて巨大な玉になって閉じ込めた。
あの❝従蟻主❞という魔能、威力は低いですが、汎用性は吸血鬼の❝血操師❞に匹敵するほどに幅広いようですね。
と思っていると、閉じ込められたミラ様に向かって、蟻にされた10人の内の3人、おそらく魔能騎士達が一斉に斬りかかった。
マズいと思った刹那、ミラ様が冥府の炎で蟻どもを焼き尽くして脱出し、続き襲ってきた元魔能騎士達の首を刎ねて返り討ちにした。
「すみません・・・。」
怒りが一瞬鳴りを潜め、ミラ様は憐れみを込めた声で介錯した者達に詫びた。
「早くも3人やられてしまいましたか。では、癖玉で対応しましょうか。」
ミラ様の前に杖を持った蟻が出てきて、それが杖を振るうと、互いの頭と尾を食った巨大な蛇が顕現し、ミラ様を取り囲んで周り始めた。
「ぐっ・・・!?」
ミラ様が苦悶に満ちた表情で膝を付くと、別のところにいた蟻が両手を大きく上げて巨大な岩を念力で浮かし、それが無数の碧色の宝石の棘蔓になってミラ様に向かった。
「がはっ・・・!?!?」
ミラ様の身体を宝石の蔓が穿ち、どうにかそれらを引き千切ろうとするが動きが緩慢になって脱することができない。
どうやらあれらの魔能・・・二つとも天級のようですね。
蛇の輪は活力を奪い、宝石の棘蔓は単なる岩に高潤の魔力を注ぎ込んで変換したもの・・・といったところでしょうか。
「ぐっ・・・!!うぐぅ・・・!!」
「ミラの動きは封じた。では・・・。」
キネウラが私を捉えた!!
再び蟻で鎌を生成し、私に襲い掛かったキネウラから、白丸と茶々助が捨て身で庇ったが、あっけなく胴を切り裂かれ伏してしまった。
「攻略失敗。あなた達の敗北です。」
「いっ、いや!!まだ・・・」
ッッッ!!!
抵抗しようとする私の手足を、キネウラは目にも留まらぬ速度で斬断した。
「あっ・・・。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
激痛で芋虫のようにのたうち回る私に、キネウラはそっと手をかざした。
「あなたもわたくしの子ども達の一人に加えてあげましょう。乙女の永友・ヒューゴ。」
私もあの人間達と同じように、蟻にされ、彼女の奴隷として使われるのでしょうか・・・?
・・・・・・・。
・・・・・・・。
そんなの絶対に嫌だッッッ!!!
私が・・・僕が忠誠を誓ったのは、ミラ様ただ一人!!
他の誰にも魂を売り渡してなるもんか!!
僕にもっと力があれば、こんな奴どうとでもなれたし、ミラ様だって守れた!!
僕にもっと・・・力を寄越せ!!
そしてミラ様を・・・みんなを守らせろッッッ!!!
◇◇◇
ヒューゴ君がやられちゃう・・・。
この人達みたいに、キネウラに魔能で無理やりアリにされて・・・。
そんなの絶対・・・絶対イヤだッッッ!!!
ヒューゴ君はこれまで、みんなのために必死に知恵絞って頑張ってきたのに、その見返りがこれかよ!?
あたし・・・まだまだ力有り余ってんだろ!?!?
だったらヒューゴ君に、それを分けてみろよ!!
体力と知恵がめちゃくちゃ凄い、最強の戦略家にしてみせろよッッッ!!!
◇◇◇
眩い光とともに、僕の身体から力が湧きあがり、失った手足が一息の間に再生していく。
これって・・・。
「血操師・剣錬成。」
地面に飛び散った自分の血で剣を作ると、かざしたキネウラの腕を斬り飛ばした。
血で剣を作るなんて、今までできなかったのに。
そうか。
これが、ミラ様の・・・。
◇◇◇
「あなたも・・・ですか。」
キネウラが距離を取ったヒューゴ君の髪は、あたしと同じプラチナブロンドに染まっていた。
やった!!
ヒューゴ君・・・共醒状態になったんだッッッ!!!
倒れた白丸と茶々助を全回復で直してあげると、ヒューゴ君はキネウラに凛々しく剣を構えた。
「武術を用いるのは初めてですが丁度良い機会です。この身に宿ったミラ様の御力、智恵者として、余すことなく検証してみることにしましょう。」
やはりこのお方は人一倍優しいだけに、怒りを露わにした気迫も壮絶を極める。
あのような光景を目の当たりにし、我慢できなかったのだろう・・・。
剣を構え、ミラ様はキネウラの眷族にされた人間達を無視し、宣言通りキネウラのみを狙った。
慈しみの情など一切持ち合わせていない、殺意に満ちた眼差しで・・・。
「きっ・・・!?」
寸でのところで避けたキネウラの首筋をミラ様の剣の切っ先が撫で、傷口から血が噴き出る。
「虫なのに血は赤いんだ?」
「有言実行とは見事です。これはわたくしも、気を引き締めねばなりませんね。」
キネウラが両手の平を地面に向けると、瞬時に大量の薄長い卵が出現し、そこから軍蟻種が成虫の状態で孵化した。
卵から孵った軍蟻種はミラ様にまとわり付き、やがて巨大な玉になって閉じ込めた。
あの❝従蟻主❞という魔能、威力は低いですが、汎用性は吸血鬼の❝血操師❞に匹敵するほどに幅広いようですね。
と思っていると、閉じ込められたミラ様に向かって、蟻にされた10人の内の3人、おそらく魔能騎士達が一斉に斬りかかった。
マズいと思った刹那、ミラ様が冥府の炎で蟻どもを焼き尽くして脱出し、続き襲ってきた元魔能騎士達の首を刎ねて返り討ちにした。
「すみません・・・。」
怒りが一瞬鳴りを潜め、ミラ様は憐れみを込めた声で介錯した者達に詫びた。
「早くも3人やられてしまいましたか。では、癖玉で対応しましょうか。」
ミラ様の前に杖を持った蟻が出てきて、それが杖を振るうと、互いの頭と尾を食った巨大な蛇が顕現し、ミラ様を取り囲んで周り始めた。
「ぐっ・・・!?」
ミラ様が苦悶に満ちた表情で膝を付くと、別のところにいた蟻が両手を大きく上げて巨大な岩を念力で浮かし、それが無数の碧色の宝石の棘蔓になってミラ様に向かった。
「がはっ・・・!?!?」
ミラ様の身体を宝石の蔓が穿ち、どうにかそれらを引き千切ろうとするが動きが緩慢になって脱することができない。
どうやらあれらの魔能・・・二つとも天級のようですね。
蛇の輪は活力を奪い、宝石の棘蔓は単なる岩に高潤の魔力を注ぎ込んで変換したもの・・・といったところでしょうか。
「ぐっ・・・!!うぐぅ・・・!!」
「ミラの動きは封じた。では・・・。」
キネウラが私を捉えた!!
再び蟻で鎌を生成し、私に襲い掛かったキネウラから、白丸と茶々助が捨て身で庇ったが、あっけなく胴を切り裂かれ伏してしまった。
「攻略失敗。あなた達の敗北です。」
「いっ、いや!!まだ・・・」
ッッッ!!!
抵抗しようとする私の手足を、キネウラは目にも留まらぬ速度で斬断した。
「あっ・・・。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
激痛で芋虫のようにのたうち回る私に、キネウラはそっと手をかざした。
「あなたもわたくしの子ども達の一人に加えてあげましょう。乙女の永友・ヒューゴ。」
私もあの人間達と同じように、蟻にされ、彼女の奴隷として使われるのでしょうか・・・?
・・・・・・・。
・・・・・・・。
そんなの絶対に嫌だッッッ!!!
私が・・・僕が忠誠を誓ったのは、ミラ様ただ一人!!
他の誰にも魂を売り渡してなるもんか!!
僕にもっと力があれば、こんな奴どうとでもなれたし、ミラ様だって守れた!!
僕にもっと・・・力を寄越せ!!
そしてミラ様を・・・みんなを守らせろッッッ!!!
◇◇◇
ヒューゴ君がやられちゃう・・・。
この人達みたいに、キネウラに魔能で無理やりアリにされて・・・。
そんなの絶対・・・絶対イヤだッッッ!!!
ヒューゴ君はこれまで、みんなのために必死に知恵絞って頑張ってきたのに、その見返りがこれかよ!?
あたし・・・まだまだ力有り余ってんだろ!?!?
だったらヒューゴ君に、それを分けてみろよ!!
体力と知恵がめちゃくちゃ凄い、最強の戦略家にしてみせろよッッッ!!!
◇◇◇
眩い光とともに、僕の身体から力が湧きあがり、失った手足が一息の間に再生していく。
これって・・・。
「血操師・剣錬成。」
地面に飛び散った自分の血で剣を作ると、かざしたキネウラの腕を斬り飛ばした。
血で剣を作るなんて、今までできなかったのに。
そうか。
これが、ミラ様の・・・。
◇◇◇
「あなたも・・・ですか。」
キネウラが距離を取ったヒューゴ君の髪は、あたしと同じプラチナブロンドに染まっていた。
やった!!
ヒューゴ君・・・共醒状態になったんだッッッ!!!
倒れた白丸と茶々助を全回復で直してあげると、ヒューゴ君はキネウラに凛々しく剣を構えた。
「武術を用いるのは初めてですが丁度良い機会です。この身に宿ったミラ様の御力、智恵者として、余すことなく検証してみることにしましょう。」
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