上 下
409 / 514
最終章:無双代行の結末

軍蟻種(ハーレンメイル)奇襲④

しおりを挟む
「ん?何だありゃ!?」

あたし達側が大幅にリードし始めた時だった。

新しいタイプのアリが出現した。

それは大きさは兵隊アリタイプの半分ほどなんだけど、なんと二足歩行をしていて、二対の肢・・・というか手に剣を持っていて、顔つきもなんだか、若干人寄りの、言わばみたいな見た目をしていた。

っていうか・・・結構グロい・・・。

「うっわ~何じゃアレ?って、ちょっと!?」

今まで呑気にパイプを吸ってたイスラルフさんが、樹から降りてモニターをかぶりつきで見始めた。

「これは・・・。」

「どうかしたんですか?」

「私も初めてみる個体だ。というより、本来軍蟻種ハーレンメイルは、あのような眷族こどもを生んだりなんかしないはず・・・!」

イスラルフさんの表情は、明らかに動揺していた。

それにつられてあたしも、なんか不安になってきた・・・。

「ウリヤドさん!!明らか様子の違うヤツがそっちに出てきたんでくれぐれも注意して下さい!!」

不安な気持ちをどうにか落ち着かせようと、あたしは急いでウリヤドさんに忠告した。

その直後だった。

が、全身を強くねじり始めて、エンジンをかけた車みたいにブルブル震えると、回転しながらウリヤドさん目がけて突っ込んできた。

「ぬっ・・・!!」

ウリヤドさんはアリ人間タイプの攻撃を避けると、木の根やツルを総動員させて拘束した。

「やった!!」

「よし・・・。このまま殺・・・ッッッ!!!」

「なっ・・・!?!?」

アリ人間タイプは、なんと身体に炎を纏って、自分を縛る根っこやツルを燃やして脱出した。

「あれってもしかして・・・魔能!?!?」

軍蟻種ハーレンメイルが魔能を操るなど・・・そんな馬鹿な・・・!!」

驚くあたし達だったが、アリ人間タイプは、今度は持ってた剣に炎を宿らせてウリヤドさんを斬ろうとした。

あれは・・・紅蓮の剣筋フレイム・ストライク!?

やっぱりアイツ・・・魔能を・・・。

ってかヤバい!!!

全身木でできてる森護種エントのウリヤドさんにとって、火は致命的な弱点なんじゃ・・・!!!

アリ人間タイプの剣の切っ先がウリヤドさんにすぐそこまで迫ったその時だった。

上空から急降下してきたドッペルちゃんに頭部を剣で貫かれて、アリ人間タイプは間一髪倒された。

「ドッペルちゃん!!」

「爆弾型は全部殺した。あとは地上だけ。」

「うっ、うん分かった!!森護種エントやローランドさんと協力して地上のアリ達を頼むね!」

そこから先は消化試合となって、1万匹以上いた軍蟻種ハーレンメイルは、あっという間に全滅した。

戦いを終えたあたし達は、さっき倒されたアリ人間タイプの死体まで向かった。

「それにしてもコイツ、一体なんだったんだろ?見た目他の奴より明らか違うし、魔能まで使ってきたよ?」

「イスラルフ殿。くどいようだが、本当に軍蟻種ハーレンメイルからかような眷族は生まれないのか?」

「そうだローランド。私も正直驚いている。」

イスラルフさんがド忘れしてたって線は考えられないし・・・。

う~ん・・・。

「しょうがないわね!私が調べてやるわ。」

「リリー?」

地級アース第四位・生まれを明かせレイス・インジケート。」

リリーは死体の側でしゃがみ込んで、手をかざしながら目を瞑った。

そうか!

その魔能でコイツの種族を明らかにするってワケね?

でも軍蟻種ハーレンメイルの群れに混じってたんだから、結果は分かりきってるんじゃ・・・。

「ッッッ!!!」

「どっ、どした!?」

「そんな・・・ウソでしょ!?」

「なっ、何て結果が出たの?」

「ミラお姉様・・・コイツの種族名・・・❝軍蟻種ハーレンメイルと人間❞って出たんですけど・・・。」

「え・・・?」

つまりこの、アリ人間は・・・。

軍蟻種ハーレンメイルと人間の融合体ミックスってことなのかよ!?!?




◇◇◇




「導主様、敵に差し向けていた子ども達が掃討されました。」

「ふうん・・・。で、の結果はどうだった?」

「はい。で人間と子どもを掛け合わせると、素体となった者の魔能を使用できるみたいです。」

「なるほど。それで?向こうの戦力は?」

「数は1万程度。吸血鬼と森護種エントの混成軍です。率いているのは・・・ミラです。」

「ちゃんと空中城塞こっちに来てるみたいだね。威力偵察ご苦労。融合させる人間をアドニサカ魔政国僕の国から集めておくよ。ミラとの決戦に備えて大量に必要になるだろうし。」

「ありがとうございます。」

「ところで・・・には慣れた?」

「導主様の御力で頂き、誠に感謝しております。それによって、わたくしも魔能を手にすることができたのですから。ただ、少し心残りが・・・。」

「何?」

「前のわたくしの姿・・・導主様大層ご満足だったのに、それをもうお見せできないのが・・・。」

アクメルはイスから立ち上がると、キネウラの顔をそっと撫でた。

「僕の夢が叶ったら、キネウラだって無事じゃ済まないんだしこれで良かったんだよ。それに・・・そっちの姿も結構好きだけどな。」

「あっ、・・・。」

「これからも頼りにしてるよ?❝母蟻雄ぼぎゆう・キネウラ❞。昔からの友人で、新しい英雄様?」

恍惚の表情を見せるキネウラだったが、その容姿はシルエットこそ人間だが外骨格で包まれており、唯一柔らかい顔も、眼球が複眼状になっていて、とても人間には見えない風貌をしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~

平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。 しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。 パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...