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最終章:無双代行の結末
軍蟻種(ハーレンメイル)奇襲④
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「ん?何だありゃ!?」
あたし達側が大幅にリードし始めた時だった。
新しいタイプのアリが出現した。
それは大きさは兵隊アリタイプの半分ほどなんだけど、なんと二足歩行をしていて、二対の肢・・・というか手に剣を持っていて、顔つきもなんだか、若干人寄りの、言わばアリ人間みたいな見た目をしていた。
っていうか・・・結構グロい・・・。
「うっわ~何じゃアレ?って、ちょっと!?」
今まで呑気にパイプを吸ってたイスラルフさんが、樹から降りてモニターをかぶりつきで見始めた。
「これは・・・。」
「どうかしたんですか?」
「私も初めてみる個体だ。というより、本来軍蟻種は、あのような眷族を生んだりなんかしないはず・・・!」
イスラルフさんの表情は、明らかに動揺していた。
それにつられてあたしも、なんか不安になってきた・・・。
「ウリヤドさん!!明らか様子の違うヤツがそっちに出てきたんでくれぐれも注意して下さい!!」
不安な気持ちをどうにか落ち着かせようと、あたしは急いでウリヤドさんに忠告した。
その直後だった。
アリ人間タイプが、全身を強くねじり始めて、エンジンをかけた車みたいにブルブル震えると、回転しながらウリヤドさん目がけて突っ込んできた。
「ぬっ・・・!!」
ウリヤドさんはアリ人間タイプの攻撃を避けると、木の根やツルを総動員させて拘束した。
「やった!!」
「よし・・・。このまま殺・・・ッッッ!!!」
「なっ・・・!?!?」
アリ人間タイプは、なんと身体に炎を纏って、自分を縛る根っこやツルを燃やして脱出した。
「あれってもしかして・・・魔能!?!?」
「軍蟻種が魔能を操るなど・・・そんな馬鹿な・・・!!」
驚くあたし達だったが、アリ人間タイプは、今度は持ってた剣に炎を宿らせてウリヤドさんを斬ろうとした。
あれは・・・紅蓮の剣筋!?
やっぱりアイツ・・・魔能を・・・。
ってかヤバい!!!
全身木でできてる森護種のウリヤドさんにとって、火は致命的な弱点なんじゃ・・・!!!
アリ人間タイプの剣の切っ先がウリヤドさんにすぐそこまで迫ったその時だった。
上空から急降下してきたドッペルちゃんに頭部を剣で貫かれて、アリ人間タイプは間一髪倒された。
「ドッペルちゃん!!」
「爆弾型は全部殺した。あとは地上だけ。」
「うっ、うん分かった!!森護種やローランドさんと協力して地上のアリ達を頼むね!」
そこから先は消化試合となって、1万匹以上いた軍蟻種は、あっという間に全滅した。
戦いを終えたあたし達は、さっき倒されたアリ人間タイプの死体まで向かった。
「それにしてもコイツ、一体なんだったんだろ?見た目他の奴より明らか違うし、魔能まで使ってきたよ?」
「イスラルフ殿。くどいようだが、本当に軍蟻種からかような眷族は生まれないのか?」
「そうだローランド。私も正直驚いている。」
イスラルフさんがド忘れしてたって線は考えられないし・・・。
う~ん・・・。
「しょうがないわね!私が調べてやるわ。」
「リリー?」
「地級第四位・生まれを明かせ。」
リリーは死体の側でしゃがみ込んで、手をかざしながら目を瞑った。
そうか!
その魔能でコイツの種族を明らかにするってワケね?
でも軍蟻種の群れに混じってたんだから、結果は分かりきってるんじゃ・・・。
「ッッッ!!!」
「どっ、どした!?」
「そんな・・・ウソでしょ!?」
「なっ、何て結果が出たの?」
「ミラお姉様・・・コイツの種族名・・・❝軍蟻種と人間❞って出たんですけど・・・。」
「え・・・?」
つまりこの、アリ人間は・・・。
軍蟻種と人間の融合体ってことなのかよ!?!?
◇◇◇
「導主様、敵に差し向けていた子ども達が掃討されました。」
「ふうん・・・。で、実験の結果はどうだった?」
「はい。わたくしの魔能で人間と子どもを掛け合わせると、素体となった者の魔能を使用できるみたいです。」
「なるほど。それで?向こうの戦力は?」
「数は1万程度。吸血鬼と森護種の混成軍です。率いているのは・・・ミラです。」
「ちゃんと空中城塞に来てるみたいだね。威力偵察ご苦労。融合させる人間をアドニサカ魔政国から集めておくよ。ミラとの決戦に備えて大量に必要になるだろうし。」
「ありがとうございます。」
「ところで・・・その身体には慣れた?」
「導主様の御力で人間に生まれ変わらせて頂き、誠に感謝しております。それによって、わたくしも魔能を手にすることができたのですから。ただ、少し心残りが・・・。」
「何?」
「前のわたくしの姿・・・導主様大層ご満足だったのに、それをもうお見せできないのが・・・。」
アクメルはイスから立ち上がると、キネウラの顔をそっと撫でた。
「僕の夢が叶ったら、キネウラだって無事じゃ済まないんだしこれで良かったんだよ。それに・・・そっちの姿も結構好きだけどな。」
「あっ、アド様・・・。」
「これからも頼りにしてるよ?❝母蟻雄・キネウラ❞。昔からの友人で、新しい英雄様?」
恍惚の表情を見せるキネウラだったが、その容姿はシルエットこそ人間だが外骨格で包まれており、唯一柔らかい顔も、眼球が複眼状になっていて、とても人間には見えない風貌をしていた。
あたし達側が大幅にリードし始めた時だった。
新しいタイプのアリが出現した。
それは大きさは兵隊アリタイプの半分ほどなんだけど、なんと二足歩行をしていて、二対の肢・・・というか手に剣を持っていて、顔つきもなんだか、若干人寄りの、言わばアリ人間みたいな見た目をしていた。
っていうか・・・結構グロい・・・。
「うっわ~何じゃアレ?って、ちょっと!?」
今まで呑気にパイプを吸ってたイスラルフさんが、樹から降りてモニターをかぶりつきで見始めた。
「これは・・・。」
「どうかしたんですか?」
「私も初めてみる個体だ。というより、本来軍蟻種は、あのような眷族を生んだりなんかしないはず・・・!」
イスラルフさんの表情は、明らかに動揺していた。
それにつられてあたしも、なんか不安になってきた・・・。
「ウリヤドさん!!明らか様子の違うヤツがそっちに出てきたんでくれぐれも注意して下さい!!」
不安な気持ちをどうにか落ち着かせようと、あたしは急いでウリヤドさんに忠告した。
その直後だった。
アリ人間タイプが、全身を強くねじり始めて、エンジンをかけた車みたいにブルブル震えると、回転しながらウリヤドさん目がけて突っ込んできた。
「ぬっ・・・!!」
ウリヤドさんはアリ人間タイプの攻撃を避けると、木の根やツルを総動員させて拘束した。
「やった!!」
「よし・・・。このまま殺・・・ッッッ!!!」
「なっ・・・!?!?」
アリ人間タイプは、なんと身体に炎を纏って、自分を縛る根っこやツルを燃やして脱出した。
「あれってもしかして・・・魔能!?!?」
「軍蟻種が魔能を操るなど・・・そんな馬鹿な・・・!!」
驚くあたし達だったが、アリ人間タイプは、今度は持ってた剣に炎を宿らせてウリヤドさんを斬ろうとした。
あれは・・・紅蓮の剣筋!?
やっぱりアイツ・・・魔能を・・・。
ってかヤバい!!!
全身木でできてる森護種のウリヤドさんにとって、火は致命的な弱点なんじゃ・・・!!!
アリ人間タイプの剣の切っ先がウリヤドさんにすぐそこまで迫ったその時だった。
上空から急降下してきたドッペルちゃんに頭部を剣で貫かれて、アリ人間タイプは間一髪倒された。
「ドッペルちゃん!!」
「爆弾型は全部殺した。あとは地上だけ。」
「うっ、うん分かった!!森護種やローランドさんと協力して地上のアリ達を頼むね!」
そこから先は消化試合となって、1万匹以上いた軍蟻種は、あっという間に全滅した。
戦いを終えたあたし達は、さっき倒されたアリ人間タイプの死体まで向かった。
「それにしてもコイツ、一体なんだったんだろ?見た目他の奴より明らか違うし、魔能まで使ってきたよ?」
「イスラルフ殿。くどいようだが、本当に軍蟻種からかような眷族は生まれないのか?」
「そうだローランド。私も正直驚いている。」
イスラルフさんがド忘れしてたって線は考えられないし・・・。
う~ん・・・。
「しょうがないわね!私が調べてやるわ。」
「リリー?」
「地級第四位・生まれを明かせ。」
リリーは死体の側でしゃがみ込んで、手をかざしながら目を瞑った。
そうか!
その魔能でコイツの種族を明らかにするってワケね?
でも軍蟻種の群れに混じってたんだから、結果は分かりきってるんじゃ・・・。
「ッッッ!!!」
「どっ、どした!?」
「そんな・・・ウソでしょ!?」
「なっ、何て結果が出たの?」
「ミラお姉様・・・コイツの種族名・・・❝軍蟻種と人間❞って出たんですけど・・・。」
「え・・・?」
つまりこの、アリ人間は・・・。
軍蟻種と人間の融合体ってことなのかよ!?!?
◇◇◇
「導主様、敵に差し向けていた子ども達が掃討されました。」
「ふうん・・・。で、実験の結果はどうだった?」
「はい。わたくしの魔能で人間と子どもを掛け合わせると、素体となった者の魔能を使用できるみたいです。」
「なるほど。それで?向こうの戦力は?」
「数は1万程度。吸血鬼と森護種の混成軍です。率いているのは・・・ミラです。」
「ちゃんと空中城塞に来てるみたいだね。威力偵察ご苦労。融合させる人間をアドニサカ魔政国から集めておくよ。ミラとの決戦に備えて大量に必要になるだろうし。」
「ありがとうございます。」
「ところで・・・その身体には慣れた?」
「導主様の御力で人間に生まれ変わらせて頂き、誠に感謝しております。それによって、わたくしも魔能を手にすることができたのですから。ただ、少し心残りが・・・。」
「何?」
「前のわたくしの姿・・・導主様大層ご満足だったのに、それをもうお見せできないのが・・・。」
アクメルはイスから立ち上がると、キネウラの顔をそっと撫でた。
「僕の夢が叶ったら、キネウラだって無事じゃ済まないんだしこれで良かったんだよ。それに・・・そっちの姿も結構好きだけどな。」
「あっ、アド様・・・。」
「これからも頼りにしてるよ?❝母蟻雄・キネウラ❞。昔からの友人で、新しい英雄様?」
恍惚の表情を見せるキネウラだったが、その容姿はシルエットこそ人間だが外骨格で包まれており、唯一柔らかい顔も、眼球が複眼状になっていて、とても人間には見えない風貌をしていた。
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