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第六章 : 女王の帰還
氷鳥の便り
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「ぅお!?ととっ・・・。」
気絶したキイルの足首を掴んでゆっくり降りて来るグレースちゃんが、いきなりふらついて落ちてきたモンだから、慌てて受け止めた。
「ちょっと大丈夫?」
「すっ、すみません・・・。ちょっと張り切り過ぎてしまいましたね・・・。」
「ってアレ?グレースちゃん、髪・・・。」
急いでたから気付かなかったけど、グレースちゃんの髪の色が元に戻っていた。
グレースちゃんも、鏡でそれを確認した。
「なんで?だってさっきまで・・・。」
「あたしとおんなじだったよね?」
「です、よね・・・。」
そもそも一体アレは何だったんだぁ?
なぜにグレースちゃんの髪があたしのようなプラチナブロンドに?
それに力まで増して・・・。
「ミラ様!ローランドを・・・!!」
あっ!!
そうだ!!
ローランドさんがジョルドと戦ってるんだ!!
こうしちゃ・・・!!
「おおミラ様!!やはりご見参なされておりましたか!!!」
「へ・・・?」
ついさっきまで話に上がっていたローランドさんが、軽やかな足取りでこっちに向かってきた。
ってかその背中に乗ってんの・・・!!
なんでジョルドまでKOされてんの!?!?
◇◇◇
「なるほど・・・。つまりグレースも。」
聞くとジョルド戦っていたローランドさんも、絶対絶命の大ピンチの時に、突然あたしと同じ髪になって、そこから一気に逆転勝利を収めたみたいだった。
「この現象は果たして何なのでしょうか?」
ヒューゴ君が聞いてくるけど、あたしにも全く見当が付かん。
あたしの意志が成せたモノなのか?
いやそうだとしたら、この二人だけじゃなく、他のみんなにも同じ現象が現れてもいいはずなんだが・・・。
っていうかそもそも・・・。
ミラって一体、何なんだ?
なんであたしだけ、他の吸血鬼と違って、こんなにもチートキャラなんだ?
てっきりあたしはこれを、吸血鬼の特異体質か何かだと思っていた。
でも黎明の開手のボスのアクメルも、どうやら同じみたいだし・・・。
う~ん・・・。
「ああもう!!考えるのは取りあえず後回しにしよ!!今はとにかく!キイルを倒して、ラトヴァールを取り戻した!!そのことを喜ぶことにしようじゃんか!?」
「そっ、そうですね。皆さんこうして無事に、誰一人欠けることなく勝利を収められた。誠に嬉しい限りです。」
みんながグレースちゃんの意見に納得しかけた時だった。
「ですがグレース・・・。これでは試練が。」
あっ!!
そっかぁ~!!
そっちの問題もあったんだぁ・・・。
「確か・・・あたしが参加しちゃいけないんだったっけ?」
「はい・・・。それがエリガラード様から提示された、祖王会議の開催条件です。」
参ったなぁ・・・。
どうやって誤魔化そう?
いや。
エリガラードは、『世界の観察者』の異名を持つほどの実力者。
どんな誤魔化しだって、一発で見抜いてしまうに違いない・・・!!
マジでどうしよ・・・。
「あっ、あれ・・・!!」
頭を悩ませていると、こっちに何かが飛んできているのが見えた。
あれは・・・氷の、鳥・・・?
それはカラスくらいの大きさの鳥で、全身が氷でできていてカチコチだった。
よく見ると、なんか銜えている。
あれは・・・手紙?
その鳥はグレースちゃんの前で止まると、羽ばたいてホバリングした。
どうやら「受け取れ。」というみたいだ。
グレースちゃんが手紙をもらうと、氷の鳥は役目を終えたみたいで粉々になって消え去った。
「こっ、これは・・・!!エリガラード様からの書状です!!!」
マジで!?!?
それがここに届いたってことは、やっぱりここで起きたこと全部バレてるぅ~!!
「ぐっ、グレース!早く中身を・・・!!」
「はっ、はい!!」
封を切って、グレースちゃんはまじまじとエリガラードからの手紙に目を通し始めた。
うわぁ~!!
ヤダなぁ・・・。
あたしが出しゃばったばっかりに、グレースちゃん達の努力が全部台無しになってしまったら・・・。
「こっ、これは・・・!!!」
ドキっとした顔をした後、グレースちゃんはこっちに来て一緒に読むよう促した。
ナニナニ・・・?
❝吸血鬼の皆様方。ラトヴァールでのご勝利、お慶び申し上げます。強敵を前にしても決して臆さず、素晴らしき団結力を示した貴殿らの奮闘ぶりに、とても感銘を受けました。よって・・・
「祖王会議の開催を決定します❞ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?!?」
ええ何で何で何で!?!?!?
試練には不合格のはずなのに!?
「やりましたねミラ様!!!これでアドニサカ魔政国以外の国家と連携することができますよッッッ!!!」
「エリガラード様は我らの戦いぶりをご寛大に評価して下さったのですな!!!」
「これで、問題解決に向けて大きく前進することができますね。」
「そっ、そうだね・・・。」
まさかの大どんでん返しにみんなすっかり湧き上がっていた。
とりま・・・一件落着・・・。
ということなのか・・・?
「んんっ・・・!?」
「どうかしましたかミラ様?」
「んっ!?ううん別に!!なんでも!」
よく見ると、手紙の末尾には、もう一文付け加えられていた。
みんなにはどうやらそれが見えないらしく、あたしだけに向けられた言葉のようだった。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
❝見事に私をいい意味で裏切ってくれましたね。❞
その一文から、彼女の・・・エリガラードの真意が分かった。
全く・・・。
悪趣味なことしてくれんじゃないの?
気絶したキイルの足首を掴んでゆっくり降りて来るグレースちゃんが、いきなりふらついて落ちてきたモンだから、慌てて受け止めた。
「ちょっと大丈夫?」
「すっ、すみません・・・。ちょっと張り切り過ぎてしまいましたね・・・。」
「ってアレ?グレースちゃん、髪・・・。」
急いでたから気付かなかったけど、グレースちゃんの髪の色が元に戻っていた。
グレースちゃんも、鏡でそれを確認した。
「なんで?だってさっきまで・・・。」
「あたしとおんなじだったよね?」
「です、よね・・・。」
そもそも一体アレは何だったんだぁ?
なぜにグレースちゃんの髪があたしのようなプラチナブロンドに?
それに力まで増して・・・。
「ミラ様!ローランドを・・・!!」
あっ!!
そうだ!!
ローランドさんがジョルドと戦ってるんだ!!
こうしちゃ・・・!!
「おおミラ様!!やはりご見参なされておりましたか!!!」
「へ・・・?」
ついさっきまで話に上がっていたローランドさんが、軽やかな足取りでこっちに向かってきた。
ってかその背中に乗ってんの・・・!!
なんでジョルドまでKOされてんの!?!?
◇◇◇
「なるほど・・・。つまりグレースも。」
聞くとジョルド戦っていたローランドさんも、絶対絶命の大ピンチの時に、突然あたしと同じ髪になって、そこから一気に逆転勝利を収めたみたいだった。
「この現象は果たして何なのでしょうか?」
ヒューゴ君が聞いてくるけど、あたしにも全く見当が付かん。
あたしの意志が成せたモノなのか?
いやそうだとしたら、この二人だけじゃなく、他のみんなにも同じ現象が現れてもいいはずなんだが・・・。
っていうかそもそも・・・。
ミラって一体、何なんだ?
なんであたしだけ、他の吸血鬼と違って、こんなにもチートキャラなんだ?
てっきりあたしはこれを、吸血鬼の特異体質か何かだと思っていた。
でも黎明の開手のボスのアクメルも、どうやら同じみたいだし・・・。
う~ん・・・。
「ああもう!!考えるのは取りあえず後回しにしよ!!今はとにかく!キイルを倒して、ラトヴァールを取り戻した!!そのことを喜ぶことにしようじゃんか!?」
「そっ、そうですね。皆さんこうして無事に、誰一人欠けることなく勝利を収められた。誠に嬉しい限りです。」
みんながグレースちゃんの意見に納得しかけた時だった。
「ですがグレース・・・。これでは試練が。」
あっ!!
そっかぁ~!!
そっちの問題もあったんだぁ・・・。
「確か・・・あたしが参加しちゃいけないんだったっけ?」
「はい・・・。それがエリガラード様から提示された、祖王会議の開催条件です。」
参ったなぁ・・・。
どうやって誤魔化そう?
いや。
エリガラードは、『世界の観察者』の異名を持つほどの実力者。
どんな誤魔化しだって、一発で見抜いてしまうに違いない・・・!!
マジでどうしよ・・・。
「あっ、あれ・・・!!」
頭を悩ませていると、こっちに何かが飛んできているのが見えた。
あれは・・・氷の、鳥・・・?
それはカラスくらいの大きさの鳥で、全身が氷でできていてカチコチだった。
よく見ると、なんか銜えている。
あれは・・・手紙?
その鳥はグレースちゃんの前で止まると、羽ばたいてホバリングした。
どうやら「受け取れ。」というみたいだ。
グレースちゃんが手紙をもらうと、氷の鳥は役目を終えたみたいで粉々になって消え去った。
「こっ、これは・・・!!エリガラード様からの書状です!!!」
マジで!?!?
それがここに届いたってことは、やっぱりここで起きたこと全部バレてるぅ~!!
「ぐっ、グレース!早く中身を・・・!!」
「はっ、はい!!」
封を切って、グレースちゃんはまじまじとエリガラードからの手紙に目を通し始めた。
うわぁ~!!
ヤダなぁ・・・。
あたしが出しゃばったばっかりに、グレースちゃん達の努力が全部台無しになってしまったら・・・。
「こっ、これは・・・!!!」
ドキっとした顔をした後、グレースちゃんはこっちに来て一緒に読むよう促した。
ナニナニ・・・?
❝吸血鬼の皆様方。ラトヴァールでのご勝利、お慶び申し上げます。強敵を前にしても決して臆さず、素晴らしき団結力を示した貴殿らの奮闘ぶりに、とても感銘を受けました。よって・・・
「祖王会議の開催を決定します❞ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?!?」
ええ何で何で何で!?!?!?
試練には不合格のはずなのに!?
「やりましたねミラ様!!!これでアドニサカ魔政国以外の国家と連携することができますよッッッ!!!」
「エリガラード様は我らの戦いぶりをご寛大に評価して下さったのですな!!!」
「これで、問題解決に向けて大きく前進することができますね。」
「そっ、そうだね・・・。」
まさかの大どんでん返しにみんなすっかり湧き上がっていた。
とりま・・・一件落着・・・。
ということなのか・・・?
「んんっ・・・!?」
「どうかしましたかミラ様?」
「んっ!?ううん別に!!なんでも!」
よく見ると、手紙の末尾には、もう一文付け加えられていた。
みんなにはどうやらそれが見えないらしく、あたしだけに向けられた言葉のようだった。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
❝見事に私をいい意味で裏切ってくれましたね。❞
その一文から、彼女の・・・エリガラードの真意が分かった。
全く・・・。
悪趣味なことしてくれんじゃないの?
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