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第六章 : 女王の帰還

ラトヴァール奪還戦⑫・信拳

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「あっ!!ああっ・・・!!!」

キイルとの激闘に集中するあまり、大事なことに完全に気付かなかった。

「グレースちゃん!!ローランドさんは・・・!?」

この戦いには、ローランドさんも参加しているはずだ。

なのにグレースちゃん達とは一緒にいない。

どこに行ったって言うんだ!?

「ああアイツね。ジョルドの相手を一人で引き受けてるよ。」

キイルの言葉を真偽を確かめるために、あたしはグレースちゃん達の方を見た。

黙ってるってことは、もしかして・・・。

「今頃殺されてんじゃない?」

キイルが平然と恐ろしいことを言った直後に真っ先に思い浮かんだのは、ステラフォルトの時にリリーが殺された時の記憶・・・。

「ろっ、ローランドさん!!!」

急いでローランドさんと通信を取ったが、向こうが応答が来ない。

「うっ、ウソ・・・。やだ・・・やだやだやだ!!!」

返事をしないローランドさんに、あたしの心臓はバクバクと鼓動を速めて、胸が破裂するかと思った。

(みっ、ミラ様・・・。)

「ローランドさんッッッ!!!」

出た!!

ってことは、まだ生きてる!!!

「良かったぁ・・・。全くなにバカなことやってんのッッッ!!!」

「申しござりませぬ。無謀なマネをしてしまい・・・。」

「帰ったら一発ブン殴らせろ!!それでチャラにしてやる!!」

(甘んじて受けましょう。しかし、この天候の荒れ具合・・・。やはり御出でになられたのですね。)

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「友達が命張ってんだよ?助けに来ないバカがどこにいる?」

ローランドさんは「フフッ・・・。」と優しく笑った。

「そっちは今どんな状況?ジョルド相手に一人は危険だよ。今からそっちに合流・・・」

(いえ、我輩はこのまま戦闘を継続いたします。)

って・・・は!?!?

「さっきのあたしの話聞いてた!?一人じゃ危険だって言ってんの!!!」

(お言葉ですが、今ここでキイルとジョルドを同時に相手にする方がリスクがあるかと。)

「どういう意味?」

(先程とは比べ物にはならぬ程の荒天。そして離れていても全身にひしひしと伝わるこの魔力・・・。今のキイルは、間違いなくミラ様に匹敵するほどの力を有しています。)

否定できなかった。

だってさっきまで、あたしも殺されるかどうかホントにギリギリだった。

今のキイルをジョルドがフォローしたら、マジで勝ち目ないかもしれない。

(そう不安にならないで下さい。これでも奴を手こずらせているのですよ?あまり我輩を見くびらないで下さい。)

「でっ、でも・・・。」

(頼みます。アウレルの仇・・・どうか取らせて下さい。)

「ッッッ!!!」

ローランドさん・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「信じていいんだよね?❝勝ち目ある❞って。」

(勿論です!)

「そこまで言うんだったらローランドさん・・・アンタを信じる。あたしの代わりにジョルドそいつ、ボコボコにしてやんな!!!」

(ご下命通りに!!!)

あたしはローランドさんとの通信を切った。

「ミラ様、ローランド様は・・・。」

「今も頑張ってる。だったらリーダーとして、あたしも負けてらんない!やるべきことを全力でやるだけだよ!!グレースちゃん!!!」




◇◇◇




久方振りにミラ様から心躍る命を受けた・・・。

感無量である。

「しかし・・・。」

果たすにはそれ相応の覚悟がいるか。

左目は潰れ、折れた右のあばらが肺に刺さり、息苦しさとともに咳がせり上がり、口いっぱいに血の味が広がる。

対して向こうは、額の裂傷と数本の歯が飛んだのみ。

どちらが深手か容易に分かる。

だが・・・。

「やはりミラが来たんだな?キイルの奥の手は文字通り命を燃やす。限界が来る前に何としても合流しないといけないんだ。だからいい加減に道を開けろ。」

「それを聞いて素直に通すと思うてか!?貴様は断じて通さん!!必ずやここで我が拳の錆びにしてくれるわ!!!」

啖呵を切り、我輩はジョルドに対し、両の拳を構える。

闘志だけは負けとらん!!

ミラ様は我輩を信じた。

ならば配下として、その期待に応えるのみ!!!
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