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第六章 : 女王の帰還
ラトヴァール奪還戦⑤・調戦
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「フフッ♪」
自らに立ち向かう姿勢を見せるルイギとエズラを、キイルは嘲笑する。
「ずいぶんとまぁ、カッコつけるねぇ~。あん時みたいになるにのは目に見えてんのに?」
キイルがラトヴァールを滅ぼしたあの夜、二人は果敢に立ち向かったが、竜種の魔能を獲得した彼女に敗北を喫してしまった。
「確かに貴様の言う通りじゃ。あの夜・・・儂らは貴様に敗れた。じゃが儂は、とても嬉しゅう思っておるぞ。」
「何が?」
「その続きを、今この場で出来る機が巡ってきおったのだからな。長生きはしてみるモンじゃわい。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「あんまイキがんなよ?ジ・ジ・イ♪」
見栄を切ったルイギに向け、キイルは風の斬撃を放った。
その顔はまるで、自分の顔の辺りを飛び回る羽虫を叩き落とすのに似ていた。
「ぬっ・・・!!」
ルイギは居合の構えを取り、風の刃を弾こうとした。
しかし目の前に、エズラが作った血の盾がスッと出てきて、技を披露し損ねてしまった。
「何をするか!!折角の見せ場が・・・。」
「そんなわざとらしくカッコつける必要なんてないの!!あの子達には、ありのままの私達でいいんだから。」
「お前は相変わらず❝男の性❞というものが分かっておらぬな。」
「私、女の子よ!!そんなの分からなくたって生きていける・・・ッッッ!!!」
軽口を叩き合っている二人に、キイルは風の斬撃を一発ずる放った。
ルイギは居合で、エズラは自分の周りに浮遊する盾で防いだ。
「なに駄弁ってんだよ。今殺い合いの最中だろうが。」
「殺し合い?否、これは喧嘩だ。さすれば気軽にやらんとどうする。」
「そうね。私はあなたを殺しに来たんじゃない。ブッ倒しに来たんだから!!」
ルイギとエズラは、息を合わせて、キイルに向かっていった。
「最初に潰しておくのはやっぱエズラじゃないとね!!天級第四位・風神の大息!!」
キイルは巨大な風の渦をエズラに向けて放った。
自律する5枚の盾がそれを防いだが、あまりのパワーに一枚ずつ砕かれてゆく。
そしてとうとう、最後の一枚が砕かれてしまった。
「❝まずは一人!!❞ってか?」
「血操師・全身鎧錬成。」
粉々になった盾の破片がすぐに元の液体になり、鎧となってエズラの身体を包み込んだ。
そのおかげで、エズラは吹き飛ばされずに済んだ。
「昔のまんまかよ・・・。一体どうやってやってんだよ?その早業。」
四大戦将の中で、エズラは血液の操作がずば抜けていた。
それは❝血操師❞という、汎用性の高い魔能を、フル活用できる利点だった。
「そういうあなたも、相変わらずよそ見が多いわね。」
「ッッッ!!!」
エズラに集中するあまり、キイルは同じように向かってくるルイギへの注意が疎かになってしまった。
「クソ!!」
キイルは風の斬撃で咄嗟にカウンターを図ったが、威力が不十分だったせいでエズラの作った盾を一枚も壊せず、防がれてしまった。
「はっ!!」
「がっ・・・!!!」
キイルはルイギの斬れない剣の一太刀を額にまともに受けてしまい、後ろにたじろいだ後、急いで滞空して距離を取ろうとした。
「逃すか!!エズラ!!」
「任せて!!」
ルイギを守っていた5枚の盾がキイルの周囲を取り囲み、ルイギはそれを足場にして、連続してキイルに踏み込み斬りを叩き込む。
「がっ・・・!!あぎゃ・・・!!ぎぎっ・・・!!」
吸血鬼屈指の剣速の持ち主であるルイギの動きについていけず、キイルは攻められる一方だった。
それでもどうにか気力を振り絞り、風の斬撃を一撃でも与えようとする。
「させない!!!」
しかしエズラが新しく作った盾に邪魔されてしまった。
四大戦将の中で攻めと護りに特化した二人の連携は、調和の取れた鮮やかな戦法へと昇華される。
それを前に、敵はただ翻弄されるのみしかない。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
しかし、相手は人間最強の英雄達の一角。
そう易々と敗れる敵ではなかった。
「天級第三位・降り穿つ雨弾!!」
魔能によって緻密に操作された雨の弾丸がルイギとエズラに降り注ぎ、ルイギは全てを捌ききれず身体の複数個所に風穴を開けられてしまった。
エズラも、全身の鎧が耐えきれずバラバラになってしまった。
「くっ・・・!!」
足場にしていた鎧も全て砕かれ、ルイギは痛みを堪えながらキイルと距離を取った。
「あ~痛っ!!中々やるじゃん。でも言ったでしょ。❝あん時みたいになるのは目に見えてる。❞って。」
400年前、ルイギとエズラはキイルに敗れたが、どうにか拮抗することができていた。
しかしそれは、❝天級第五位から上の魔能は獲得できたとしても行使できない。❞という吸血鬼の制約がアマリアにあった上での状況だった。
今の彼女は吸血鬼ではなく人間。
先の戦いで使えなかったより強力な魔能を存分に発揮できる。
無情にも、両者の実力差は縮まるどころか、更に開いてしまった。
二人では、かつての裏切り者を倒すことはできない。
やはりこの者を倒せるのは、グレースとトヴィリンを置いていなかった・・・。
自らに立ち向かう姿勢を見せるルイギとエズラを、キイルは嘲笑する。
「ずいぶんとまぁ、カッコつけるねぇ~。あん時みたいになるにのは目に見えてんのに?」
キイルがラトヴァールを滅ぼしたあの夜、二人は果敢に立ち向かったが、竜種の魔能を獲得した彼女に敗北を喫してしまった。
「確かに貴様の言う通りじゃ。あの夜・・・儂らは貴様に敗れた。じゃが儂は、とても嬉しゅう思っておるぞ。」
「何が?」
「その続きを、今この場で出来る機が巡ってきおったのだからな。長生きはしてみるモンじゃわい。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「あんまイキがんなよ?ジ・ジ・イ♪」
見栄を切ったルイギに向け、キイルは風の斬撃を放った。
その顔はまるで、自分の顔の辺りを飛び回る羽虫を叩き落とすのに似ていた。
「ぬっ・・・!!」
ルイギは居合の構えを取り、風の刃を弾こうとした。
しかし目の前に、エズラが作った血の盾がスッと出てきて、技を披露し損ねてしまった。
「何をするか!!折角の見せ場が・・・。」
「そんなわざとらしくカッコつける必要なんてないの!!あの子達には、ありのままの私達でいいんだから。」
「お前は相変わらず❝男の性❞というものが分かっておらぬな。」
「私、女の子よ!!そんなの分からなくたって生きていける・・・ッッッ!!!」
軽口を叩き合っている二人に、キイルは風の斬撃を一発ずる放った。
ルイギは居合で、エズラは自分の周りに浮遊する盾で防いだ。
「なに駄弁ってんだよ。今殺い合いの最中だろうが。」
「殺し合い?否、これは喧嘩だ。さすれば気軽にやらんとどうする。」
「そうね。私はあなたを殺しに来たんじゃない。ブッ倒しに来たんだから!!」
ルイギとエズラは、息を合わせて、キイルに向かっていった。
「最初に潰しておくのはやっぱエズラじゃないとね!!天級第四位・風神の大息!!」
キイルは巨大な風の渦をエズラに向けて放った。
自律する5枚の盾がそれを防いだが、あまりのパワーに一枚ずつ砕かれてゆく。
そしてとうとう、最後の一枚が砕かれてしまった。
「❝まずは一人!!❞ってか?」
「血操師・全身鎧錬成。」
粉々になった盾の破片がすぐに元の液体になり、鎧となってエズラの身体を包み込んだ。
そのおかげで、エズラは吹き飛ばされずに済んだ。
「昔のまんまかよ・・・。一体どうやってやってんだよ?その早業。」
四大戦将の中で、エズラは血液の操作がずば抜けていた。
それは❝血操師❞という、汎用性の高い魔能を、フル活用できる利点だった。
「そういうあなたも、相変わらずよそ見が多いわね。」
「ッッッ!!!」
エズラに集中するあまり、キイルは同じように向かってくるルイギへの注意が疎かになってしまった。
「クソ!!」
キイルは風の斬撃で咄嗟にカウンターを図ったが、威力が不十分だったせいでエズラの作った盾を一枚も壊せず、防がれてしまった。
「はっ!!」
「がっ・・・!!!」
キイルはルイギの斬れない剣の一太刀を額にまともに受けてしまい、後ろにたじろいだ後、急いで滞空して距離を取ろうとした。
「逃すか!!エズラ!!」
「任せて!!」
ルイギを守っていた5枚の盾がキイルの周囲を取り囲み、ルイギはそれを足場にして、連続してキイルに踏み込み斬りを叩き込む。
「がっ・・・!!あぎゃ・・・!!ぎぎっ・・・!!」
吸血鬼屈指の剣速の持ち主であるルイギの動きについていけず、キイルは攻められる一方だった。
それでもどうにか気力を振り絞り、風の斬撃を一撃でも与えようとする。
「させない!!!」
しかしエズラが新しく作った盾に邪魔されてしまった。
四大戦将の中で攻めと護りに特化した二人の連携は、調和の取れた鮮やかな戦法へと昇華される。
それを前に、敵はただ翻弄されるのみしかない。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
しかし、相手は人間最強の英雄達の一角。
そう易々と敗れる敵ではなかった。
「天級第三位・降り穿つ雨弾!!」
魔能によって緻密に操作された雨の弾丸がルイギとエズラに降り注ぎ、ルイギは全てを捌ききれず身体の複数個所に風穴を開けられてしまった。
エズラも、全身の鎧が耐えきれずバラバラになってしまった。
「くっ・・・!!」
足場にしていた鎧も全て砕かれ、ルイギは痛みを堪えながらキイルと距離を取った。
「あ~痛っ!!中々やるじゃん。でも言ったでしょ。❝あん時みたいになるのは目に見えてる。❞って。」
400年前、ルイギとエズラはキイルに敗れたが、どうにか拮抗することができていた。
しかしそれは、❝天級第五位から上の魔能は獲得できたとしても行使できない。❞という吸血鬼の制約がアマリアにあった上での状況だった。
今の彼女は吸血鬼ではなく人間。
先の戦いで使えなかったより強力な魔能を存分に発揮できる。
無情にも、両者の実力差は縮まるどころか、更に開いてしまった。
二人では、かつての裏切り者を倒すことはできない。
やはりこの者を倒せるのは、グレースとトヴィリンを置いていなかった・・・。
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