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第六章 : 女王の帰還
盾役(タンク)の貴婦人
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総令部の会議室。
ミラとの激しいやり取りをしたグレースはルイギ、ヒューゴを交えて執将らに改めて報告へと参っていた。
「グレース、俺達に見せてくれねぇか?王の証っつう指輪を。」
「はい。」
ラリーザに促され、グレースは薬指にはめられた指輪を4人の執将に見せた。
「それが?」
グレースはコクっと頷く。
「しかし驚いたっス。まさかグレースさんが吸血鬼の王国・ラトヴァールの王家の最後の生き残りだったなんて・・・。」
「私は未だに理解が追い付かずにいます。」
「それは僕も同じです。」
ノヴァク、ソニア、セドヴィグの3人は、グレースが自分達が仕えるべき主君の血を引いているという事実に混乱していた。
だけどグレースは、そんな3人の様子を見ても、表情一つ変えないでいる。
「大丈夫か?」
心配になったラリーザがグレースに聞く。
しかしグレースの反応は、いま一つだ。
「ミラに・・・話したんだな?」
何となく察しがついたラリーザが聞くと、グレースはコクンと寂しそうに頷いた。
「その様子じゃ、相当もめたな?」
「私・・・知りませんでした。まさかミラ様が、あんなに擦り切れていたなんて・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前にはこんなモン見せたくなかったが、仕方ねぇ。」
そう言ってラリーザは、一枚の写真をグレースに投げて渡した。
「こっ、これ・・・!!」
グレースは口元を押さえて驚愕した。
写っていたのは、赤黒い血が溜められた、大量の樽。
「ミラの工房だ。」
「工・・・房・・・?」
「アイツ、地下に自分の血が入った樽を大量に貯めこんでてよ。そっから各防衛ラインに供給する武器を捻出してやがった。あの野郎・・・相当キテんな。」
震える手で写真を眺めるグレースが想起したのは、リヴンポーラーで言われたあの言葉。
エリガラードは全てを知っていた。
だからグレース達にミラをつま弾きにするような試練を言い渡したのだ。
「リヴンポーラーでエリガラードから言われた試練についてはすでにヒューゴから聞いてる。仕方ねぇが、ラトヴァール奪還作戦は、ミラ抜きでやるしかねぇ。それが祖王会議開催の条件だからな。そもそもこんな状態のミラを、とてもじゃねぇが参加させるワケにはいかない。」
グレースはその決定に賛成だった。
真実を打ち明けられた際の反応。
ここに至るまでに重ねた無茶な独断行動。
グレースは、これ以上ミラを戦場に立たせたくはなかった。
「しかしだラリーザ。アマリア・・・いや、キイルはかなりの手練れ。我が弟子を同伴したとてようやく五分に持ち込める強敵ぞ。」
「そこは勿論分かってるよジイさん。だからこっちも助っ人を呼んでおいた。」
「誰じゃ?」
「エズラだよ。」
「何と!?彼女をここに呼んだのか!?」
「ルイギ様、誰なんですか?そのエズラって。」
「昔の馴染みじゃ。儂と同じく元四大戦将の一角にして、吸血鬼軍創設メンバーの一人じゃ。防御に優れた奴での。かつては❝血壁の貴婦人❞と呼ばれ、幅を利かせていたものじゃ。」
それを聞いたグレースは頼もしく思った。
ルイギと同じ四大戦将の一人であった者とあらば、キイルの戦い方に関してよく熟知しているはずだ。
味方は一人でも多い方が心強い。
と、その時、会議室のドアが『ガチャ。』と開かれた。
「この気配・・・きおったな。」
「お払い箱からのご帰還ね!!隠居生活は身体が鈍って仕方なかったわ!!」
「おおエズラ!!よく来てくれ・・・ッッッ!!!」
その場にいる誰もが、部屋に入ってきたエズラに目を奪われた。
そこに立っていたのは・・・長身で、桃色の髪をカールにした、大きく横に広がった巨漢の女だった。
「何よ?」
「えっ、エズラ・・・じゃよな・・・?」
「その老け顔・・・もしかしてルイギね!!またあなたと仕事するなんてなんだか懐かしいわね。」
「なっ、何だか・・・様変わりしたな・・・。」
「100年間も会ってなかったのだから、そりゃちょっとは変わってるわよ。」
❝ちょっとどころではないだろ。❞
そうルイギはツッコミたかったが、仮にも女性なので抑えることにした。
「それで、どこなの?例の女の子って。」
「ああ、それな・・・。」
「あっ、あの・・・。」
「あら!!もしかして・・・・この子!?」
「そう・・・だが・・・。」
「なんてことなのぉ・・・。アリス女王陛下にそっくりじゃない。こんな日が来るなんてねぇ・・・。」
エズラは目に薄っすらと涙を浮かべて感動した。
「初めまして。グレースです。エズラ様ですね。随分と豊満なお方なので驚きました。」
「ばっ・・・!!グレース!!何を・・・!?」
「あらま~!!♡♡♡」
「へ・・・?」
「私ってそんなにいい身体しているかしら!?フフッ。お姉さん、優しい女の子は好きよ♪よし!!頑張って、アマリアのバカから王国を取り戻しましょうね!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前って奴は・・・。」
外見こそ大きく変わったものの、相変わらずのポジティブ思考な戦友に、ルイギは苦笑いを浮かべつつも喜んだ。
ミラとの激しいやり取りをしたグレースはルイギ、ヒューゴを交えて執将らに改めて報告へと参っていた。
「グレース、俺達に見せてくれねぇか?王の証っつう指輪を。」
「はい。」
ラリーザに促され、グレースは薬指にはめられた指輪を4人の執将に見せた。
「それが?」
グレースはコクっと頷く。
「しかし驚いたっス。まさかグレースさんが吸血鬼の王国・ラトヴァールの王家の最後の生き残りだったなんて・・・。」
「私は未だに理解が追い付かずにいます。」
「それは僕も同じです。」
ノヴァク、ソニア、セドヴィグの3人は、グレースが自分達が仕えるべき主君の血を引いているという事実に混乱していた。
だけどグレースは、そんな3人の様子を見ても、表情一つ変えないでいる。
「大丈夫か?」
心配になったラリーザがグレースに聞く。
しかしグレースの反応は、いま一つだ。
「ミラに・・・話したんだな?」
何となく察しがついたラリーザが聞くと、グレースはコクンと寂しそうに頷いた。
「その様子じゃ、相当もめたな?」
「私・・・知りませんでした。まさかミラ様が、あんなに擦り切れていたなんて・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前にはこんなモン見せたくなかったが、仕方ねぇ。」
そう言ってラリーザは、一枚の写真をグレースに投げて渡した。
「こっ、これ・・・!!」
グレースは口元を押さえて驚愕した。
写っていたのは、赤黒い血が溜められた、大量の樽。
「ミラの工房だ。」
「工・・・房・・・?」
「アイツ、地下に自分の血が入った樽を大量に貯めこんでてよ。そっから各防衛ラインに供給する武器を捻出してやがった。あの野郎・・・相当キテんな。」
震える手で写真を眺めるグレースが想起したのは、リヴンポーラーで言われたあの言葉。
エリガラードは全てを知っていた。
だからグレース達にミラをつま弾きにするような試練を言い渡したのだ。
「リヴンポーラーでエリガラードから言われた試練についてはすでにヒューゴから聞いてる。仕方ねぇが、ラトヴァール奪還作戦は、ミラ抜きでやるしかねぇ。それが祖王会議開催の条件だからな。そもそもこんな状態のミラを、とてもじゃねぇが参加させるワケにはいかない。」
グレースはその決定に賛成だった。
真実を打ち明けられた際の反応。
ここに至るまでに重ねた無茶な独断行動。
グレースは、これ以上ミラを戦場に立たせたくはなかった。
「しかしだラリーザ。アマリア・・・いや、キイルはかなりの手練れ。我が弟子を同伴したとてようやく五分に持ち込める強敵ぞ。」
「そこは勿論分かってるよジイさん。だからこっちも助っ人を呼んでおいた。」
「誰じゃ?」
「エズラだよ。」
「何と!?彼女をここに呼んだのか!?」
「ルイギ様、誰なんですか?そのエズラって。」
「昔の馴染みじゃ。儂と同じく元四大戦将の一角にして、吸血鬼軍創設メンバーの一人じゃ。防御に優れた奴での。かつては❝血壁の貴婦人❞と呼ばれ、幅を利かせていたものじゃ。」
それを聞いたグレースは頼もしく思った。
ルイギと同じ四大戦将の一人であった者とあらば、キイルの戦い方に関してよく熟知しているはずだ。
味方は一人でも多い方が心強い。
と、その時、会議室のドアが『ガチャ。』と開かれた。
「この気配・・・きおったな。」
「お払い箱からのご帰還ね!!隠居生活は身体が鈍って仕方なかったわ!!」
「おおエズラ!!よく来てくれ・・・ッッッ!!!」
その場にいる誰もが、部屋に入ってきたエズラに目を奪われた。
そこに立っていたのは・・・長身で、桃色の髪をカールにした、大きく横に広がった巨漢の女だった。
「何よ?」
「えっ、エズラ・・・じゃよな・・・?」
「その老け顔・・・もしかしてルイギね!!またあなたと仕事するなんてなんだか懐かしいわね。」
「なっ、何だか・・・様変わりしたな・・・。」
「100年間も会ってなかったのだから、そりゃちょっとは変わってるわよ。」
❝ちょっとどころではないだろ。❞
そうルイギはツッコミたかったが、仮にも女性なので抑えることにした。
「それで、どこなの?例の女の子って。」
「ああ、それな・・・。」
「あっ、あの・・・。」
「あら!!もしかして・・・・この子!?」
「そう・・・だが・・・。」
「なんてことなのぉ・・・。アリス女王陛下にそっくりじゃない。こんな日が来るなんてねぇ・・・。」
エズラは目に薄っすらと涙を浮かべて感動した。
「初めまして。グレースです。エズラ様ですね。随分と豊満なお方なので驚きました。」
「ばっ・・・!!グレース!!何を・・・!?」
「あらま~!!♡♡♡」
「へ・・・?」
「私ってそんなにいい身体しているかしら!?フフッ。お姉さん、優しい女の子は好きよ♪よし!!頑張って、アマリアのバカから王国を取り戻しましょうね!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前って奴は・・・。」
外見こそ大きく変わったものの、相変わらずのポジティブ思考な戦友に、ルイギは苦笑いを浮かべつつも喜んだ。
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