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第六章 : 女王の帰還

軽率な告白

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二日後の夜、私達は北方の吸血鬼軍総令部に到着した。

今回知ったことが、内容が内容なだけに直接話した方がいいと思ったからだ。

そう決心したのはいいものの、やはり落ち着かない。

自分のことなんだから、もっとしっかりしなくちゃいけないのは分かってる。

だけど・・・。

「グレース?」

「はい!?」

「大丈夫ですか?顔色が優れませんが。」

「だっ、大丈夫です!」

「落ち着かないのも無理はなかろう。これよりグレースは吸血鬼の命運を担う重要な存在となるのだから。」

総令部の廊下を先に歩くヒューゴ様とルイギ様と違って私の足取りは重い。

露骨に緊張していることに気が付かれても無理はなかった。

「グレース。」

「はい!?」

「今回の件で知った一連の事実、ミラ様にお伝えしますか?」

「え?」

私は質問の意味が分からなかった。

「ヒューゴよ。エリガラードが申したことは事実か?」

❝ミラは今、とても不安定で、道を踏み外す瀬戸際に立たされている。❞

エリガラード様はそう言った。

おそらく、あの方は知ってるんだろう。

エボルでの出来事を。

確かにミラ様は、あのことがあってから、私達の身の安全に執着するようになったかもしれない。

だけどそれは、私達のことをすごく大切にしてくれてる結果だ。

ミラ様は、根っこの部分は仲間想い、友達想いの優しいお方だって、私は信じている。

「あまり芳しいとは、言えないですね。エリガラード様の言う通り、ミラ様は心のバランスを失いつつあると思ってもいいでしょう。話すのはあまり得策ではないかと・・・。」

「ちょっ、ちょっと待って下さいヒューゴ様!!」

聞いてられなかった私は、ヒューゴ様に向けて声を荒げた。

「ミラ様にだけこの事実を打ち明けないというのは納得いきません!!ミラ様も吸血鬼の一人。しかも私達のために今まで頑張って戦ってくれました!!あの方には、知る権利がありますッッッ!!!」

「では、どうしますか?」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「私が自分で、面と向かって話してきます!!ミラ様なら、きっとご理解して受け入れてくれると信じていますから!!」

そう啖呵を切って、私はミラ様の部屋へと向かった。

ドアの前に立ち、緊張しながらノックすると、部屋着姿のミラ様が出てきた。

「おわ!?グレースちゃん。どったの?」

「あの・・・!!お話が・・・あります!!」

「どうしたの?そんなに緊張して。もしかして・・・深刻な内容?」

私が大きく頷くと。ミラ様は優しくしながら私を部屋に招き入れた。

私は鏡台のイス。

ミラ様はベッドに座って、私はそれぞれ向かい合わせになった。

「それで、何があったの?私で良かったら、力になるからさ。」

「ええ。実は・・・。」

それから私は、ミラ様に全部、正直に話した。

セラメルクであったこと。

この指輪に秘められた、私の出自の秘密。

エリガラード様からの試練のこと。

ミラ様は私の話を、淡々と聞いてくれた。

「以上が、今回私が体験したことです。」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「グレースちゃん?」

「はい。」

「本気で吸血鬼の女王様になる気?」

「はい。ラトヴァールの王位に就いて、吸血鬼達を導く希望となる。それこそが、私の一族が、私の代まで繋いでくれた役目であり、願いですから!」

、か・・・。はっ、ははっ・・・!!」

ベッドであぐらをかいているミラ様は、突然俯きながら自分の頭を平手で叩きだした。

「みっ、ミラ、様・・・?」

「ってことは・・・何?あたし・・・最初から要らなかったって、ワケ?」

「なっ、何を言って・・・ッッッ!!!」

私は思わず息を飲んだ。

正面を向いたミラ様の表情は、目は焦点が合っておらず、涙を流していて、それでいて引きつった笑いを浮かべていた。

私はこの時、自分がどれだけ軽率な行動を取ってしまったのか、今になって理解して、そして後悔した。
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