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第六章 : 女王の帰還

枠に収まらぬ者

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ルイギ様は教えてくれた。

キイルの正体。

ラトヴァール滅亡の理由。

そして・・・私のご先祖様のこと・・・。

「でっ、でも先生・・・。」

「何じゃトヴィリン?」

「どうしてキイ・・・アマリアは人間になったのでしょうか?」

「それが分からんのじゃ。祖国を滅ぼしたとはいえ、奴も吸血鬼。人間どもの手によってとっくに討ち取られているとばかりと思っておったが・・・。セラメルクであの顔を見た瞬間はさすがに驚いた。」

の手によって変えられたのでしょう。吸血鬼の特性を僅かに残した上で。」

エリガラード様には、何か心当たりがあるみたいだった。

「あの男って・・・。もしかして!?」

「アクメル=フォーレン=フレイザー。はそうでしたね。」

「今の名?それはどういうことですか?」

「私は、あの男をよく知っています。彼が何をしたのか、鮮明に。」

「一体どういう・・・キャッ!?」

詳しく問いただそうとした瞬間、突然リヴンポーラーの結界内が荒れ模様になった。

まるでエリガラード様の怒りを表しているかのように。

「落ち着け森精人エルフよ!!貴様とあの人間との間に何があったかは今回の件とは関係のないこと!!だから鎮まれよ!!」

ソル・ヴェナ様が語気を強めてエリガラード様を諭すと、彼女が落ち着くのに呼応して吹雪が舞っていた結界内は静穏を取り戻した。

「すみません。つい頭に血が上ってしまいました。」

平穏なエリガラード様の語り口に、私はホッとした。

「それでグレース、あなたはどうしますか?」

「え?」

「あなたは自らの血脈を知りました。その上で、どのような決断をするつもりですか?」

「わっ、私は・・・。」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「王位を継ぎます。」

その言葉にエリガラード様以外の全員が目を見開いた。

「グレース!?何を言い出すのですか!?」

「ヒューゴ様。私はこれまで、自分のことを❝この世界に生まれただけの平凡な存在。できることなんて一握り。❞だってずっと思ってました。ですが、私がこの世に生まれてこれたのは、アリス様が吸血鬼にとっての道標である王家を絶やしてならないと最後まで戦ってくれたおかげなんです。私も成人になって、この指輪を・・・全ての吸血鬼の王の証を受け取りました。私は・・・ご先祖様の意志に報いたいです。だから!!私は吸血鬼の王になります。そしてこの戦いの先頭で、戦います!!」

私の姿を見て、ルイギ様は感極まって涙を流した。

「ぐっ、グレース・・・!!!其方がその気なら、儂は・・・あの時陛下に捧げきれなかった忠義を其方に尽くそう!どんな苦境が待っていようと、其方を守ってみせるッッッ!!!」

片膝を付きながら剣をぬぐったルイギ様に少し困惑したけど、私は彼の肩にそっと手を置いた。

「頼りにしています。」

その言葉にルイギ様は顔を上げず、グッと大きく頷いた。

「私がこの戦争の代表になります。エリガラード様、どうか祖王会議を、開催して下さい!」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「断る。」

「え・・・?」

エリガラード様の予想外の返事に、私は言葉は失った。

「なっ、何故じゃ!?グレースが代表になってくれれば、祖王会議の開催に異論はなかろう!?」

「確かに、あなたの正体を開示すれば全ての吸血鬼はあなたに集ってくれるでしょう。しかし、一人いるじゃないですか。あなたの枠には決して収まり切れない強大な存在が・・・。」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「ミラ様・・・。」

「そうです。あなたが王位に着いたとしても、この戦争を終わらせることができるのはあの子しかいません。ですが、あの子の心は今、とても不安定です。もう二度と大切な者達を失いたくないという恐怖心に突き動かされ、道を踏み外すかの瀬戸際に立たされています。あの子が足並みを揃えてくれなければ、あなた達はこの戦争に負けます。」

ミラ様がこの戦争を終わらせるカギだというのは、私も勿論知っている。

だけどあの方は、エリガラード様の言うように、そこまで追い詰められているのか・・・?

私には到底、そんなようには見えない。

「ですが、あなた達に後がないのも重々承知しています、ですから、私のを成すことができたら、祖王会議の開催を許可しましょう。」

「試練?」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

で、ラトヴァールを奪還しなさい。」

ミラ様の手助けなしに、ラトヴァールを奪還・・・!?

「ラトヴァールは現在、アドニサカ魔政国領になっているのとともに、キイルの住まいになっています。それをあなた達の手で取り戻して下さい。」

「しっ、しかしエリガラード様!!キイルは黎明の開手ひらきての中でも指折りの実力者。とてもミラ様の手を借りずに奪還なんて・・・!!」

「黙れ。」

エリガラード様が放つ威圧感に圧倒され、私達はその場で身動き一つ取れなかった。

「私を納得させたければ、救血の乙女など頼らないところを見せてみろ。もう一度言う。」

凄むエリガラード様に、私は固唾を飲んだ。

「王国を逆徒の手から奪い返せ。そしてその娘をかの国の玉座に着かせるのだ。」
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