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第六章 : 女王の帰還
バラバラの始まり
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後日、マースミレンに帰還し、暫しの療養期間を送ったソル・ヴェナは、ヒューゴとプリクトスに呼び出されていた。
「ではこの数日間の調査で得た、ロスドゥルガでの戦いにおける魔族側の損害を報告します。」
ヒューゴが書類を手にしイスから立ち上がる。
「まずリセについてですが、死体が確認できなかったため、ソル・ヴェナの放った最後の一撃から逃げ延び、生存している可能性が極めて高いです。」
ヒューゴからの報告を聞き、ソル・ヴェナは深々と頭を下げた。
「すまん!!本来であればリセを討ち取る任をもらったはずなのに、目先の敵に夢中になるあまり奴を取り逃してしまって・・・!!」
「そう落胆しないで下さいソル・ヴェナ。あなたが今回の戦いで得た戦果はかなり有益です。」
「なっ・・・?」
「ソル・ヴェナがロスドゥルガの地に眠っていた太古の怪物、鬼竜種を倒したおかげでマースミレンは滅亡の危機から脱したのは勿論のこと、集結していた魔族1万の内の8割があなたの力によって葬られました。これにより、アドニサカは南方方面における戦力回復に大きな期間を要することでしょう。また、不浄の毒気の原因となっていた鬼竜種が死んだことで、ロスドゥルガは、時間はかかりますが、確実に清浄に向かいつつある・・・と言ってもいいでしょう。」
「そう、か・・・。なら・・・良かった!!」
自分がした行いは決して無駄ではなく、今回の戦いばかりか後々の未来にも恩恵をもたらすと知り、ソル・ヴェナは心から安堵した。
「ありがとうございます、ソル・ヴェナ様。この国と民を厄災から守って頂き・・・。」
「我の手にかかればこの程度の厄介事を片付けることなど造作もないことよ!!」
「あまり調子に乗らないで下さいね。実際あなた、かなり危なかったみたいじゃないですか。」
「うっ・・・!!」
ヒューゴから指摘され、ソル・ヴェナはバツの悪そうな顔をした。
「とにかく、あなたにはもう少し静養してもらいます。今回の一件で受けた身体的、精神的負担を全快してもらうために。」
「そうやって、またソル・ヴェナに無茶させるんだ?」
「「「ッッッ!!!」」」
ハッと皆が一斉に声がした方を見ると、この会議に招いていない者が、窓枠に悠々と片膝を立てて座っていた。
「ミラ様・・・。」
◇◇◇
いきなりあたしがマースミレンに来たことに、三人ともすごくビックリしたみたいだった。
まっ、そりゃそうだろう・・・。
「我が兄弟・・・!どうしてここに・・・?」
「んん?なぁ~んか三人揃ってコソコソやってるからさ。あたしも混ぜてくんない?」
ジト目でソル・ヴェナを見た後、あたしはヒューゴ君の方へツカツカと歩いていった。
「ヒューゴ君。なんで今回のことあたしに知らせてくんなかったワケ?」
「ミラ様こそ、どのように今回の件を知ったのですか?」
ビビらず質問してくるヒューゴ君に、あたしはタネ明かしをすることにした。
「簡単なことだよ。大まかだけど、あたしはみんながどこに行ったか分かるようにマークしてある。ソル・ヴェナが一人でロスドゥルガに行ったから、何してんのか気になって詳しく調べてみたら・・・この通りってこと。」
タネ明かしをしたあたしに向かって、ヒューゴ君は露骨に不快そうな顔をした。
「我々のことを監視していたってことですか?」
「監視なんて人聞きの悪いこと言わないでよ。あたしはさ、ただみんなが危ないところに行ってないか心配で見張ってただけだよ。」
「ですがこれは・・・どうしても罷りなりません。はっきり申し上げて・・・背信行為にあたるのではないでしょうか?」
「背信だって言うんだったらさ、やってることはそっちも同じじゃん。だってあたしに一切の相談もなく、ソル・ヴェナ一人に片付けさせたんだから。彼にもしものことがあったら、どう責任取るつもりだったの?え?」
問い詰めるあたしに対し、ヒューゴ君は毅然としながらも、どこか悲しむような声でこう返した。
「あなたに・・・これ以上、ご無理をさせることが・・・心苦しく・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「まぁいいや。とりあえず、もしまたこういうことがないように、見張りのシステム強化しておくからそのつもりで。それこそもう二度と隠し事、できないくらいに。」
そう言うとあたしは、門を開いて北方司令街の自分の部屋へと帰った。
“無理をさせることが心苦しい”?
何だよそれ?
あたしはただ、みんなのこと想ってやってるだけじゃんか。
なのにあんな、全否定するような目でそんなこと言われたらさぁ・・・。
「っざけんなよ・・・あたしのこと軽く見やがって・・・。」
ボソッと悪態をつくと、あたしはみんなに掛けたマーキング魔能の強化に取り掛かった。
「ではこの数日間の調査で得た、ロスドゥルガでの戦いにおける魔族側の損害を報告します。」
ヒューゴが書類を手にしイスから立ち上がる。
「まずリセについてですが、死体が確認できなかったため、ソル・ヴェナの放った最後の一撃から逃げ延び、生存している可能性が極めて高いです。」
ヒューゴからの報告を聞き、ソル・ヴェナは深々と頭を下げた。
「すまん!!本来であればリセを討ち取る任をもらったはずなのに、目先の敵に夢中になるあまり奴を取り逃してしまって・・・!!」
「そう落胆しないで下さいソル・ヴェナ。あなたが今回の戦いで得た戦果はかなり有益です。」
「なっ・・・?」
「ソル・ヴェナがロスドゥルガの地に眠っていた太古の怪物、鬼竜種を倒したおかげでマースミレンは滅亡の危機から脱したのは勿論のこと、集結していた魔族1万の内の8割があなたの力によって葬られました。これにより、アドニサカは南方方面における戦力回復に大きな期間を要することでしょう。また、不浄の毒気の原因となっていた鬼竜種が死んだことで、ロスドゥルガは、時間はかかりますが、確実に清浄に向かいつつある・・・と言ってもいいでしょう。」
「そう、か・・・。なら・・・良かった!!」
自分がした行いは決して無駄ではなく、今回の戦いばかりか後々の未来にも恩恵をもたらすと知り、ソル・ヴェナは心から安堵した。
「ありがとうございます、ソル・ヴェナ様。この国と民を厄災から守って頂き・・・。」
「我の手にかかればこの程度の厄介事を片付けることなど造作もないことよ!!」
「あまり調子に乗らないで下さいね。実際あなた、かなり危なかったみたいじゃないですか。」
「うっ・・・!!」
ヒューゴから指摘され、ソル・ヴェナはバツの悪そうな顔をした。
「とにかく、あなたにはもう少し静養してもらいます。今回の一件で受けた身体的、精神的負担を全快してもらうために。」
「そうやって、またソル・ヴェナに無茶させるんだ?」
「「「ッッッ!!!」」」
ハッと皆が一斉に声がした方を見ると、この会議に招いていない者が、窓枠に悠々と片膝を立てて座っていた。
「ミラ様・・・。」
◇◇◇
いきなりあたしがマースミレンに来たことに、三人ともすごくビックリしたみたいだった。
まっ、そりゃそうだろう・・・。
「我が兄弟・・・!どうしてここに・・・?」
「んん?なぁ~んか三人揃ってコソコソやってるからさ。あたしも混ぜてくんない?」
ジト目でソル・ヴェナを見た後、あたしはヒューゴ君の方へツカツカと歩いていった。
「ヒューゴ君。なんで今回のことあたしに知らせてくんなかったワケ?」
「ミラ様こそ、どのように今回の件を知ったのですか?」
ビビらず質問してくるヒューゴ君に、あたしはタネ明かしをすることにした。
「簡単なことだよ。大まかだけど、あたしはみんながどこに行ったか分かるようにマークしてある。ソル・ヴェナが一人でロスドゥルガに行ったから、何してんのか気になって詳しく調べてみたら・・・この通りってこと。」
タネ明かしをしたあたしに向かって、ヒューゴ君は露骨に不快そうな顔をした。
「我々のことを監視していたってことですか?」
「監視なんて人聞きの悪いこと言わないでよ。あたしはさ、ただみんなが危ないところに行ってないか心配で見張ってただけだよ。」
「ですがこれは・・・どうしても罷りなりません。はっきり申し上げて・・・背信行為にあたるのではないでしょうか?」
「背信だって言うんだったらさ、やってることはそっちも同じじゃん。だってあたしに一切の相談もなく、ソル・ヴェナ一人に片付けさせたんだから。彼にもしものことがあったら、どう責任取るつもりだったの?え?」
問い詰めるあたしに対し、ヒューゴ君は毅然としながらも、どこか悲しむような声でこう返した。
「あなたに・・・これ以上、ご無理をさせることが・・・心苦しく・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「まぁいいや。とりあえず、もしまたこういうことがないように、見張りのシステム強化しておくからそのつもりで。それこそもう二度と隠し事、できないくらいに。」
そう言うとあたしは、門を開いて北方司令街の自分の部屋へと帰った。
“無理をさせることが心苦しい”?
何だよそれ?
あたしはただ、みんなのこと想ってやってるだけじゃんか。
なのにあんな、全否定するような目でそんなこと言われたらさぁ・・・。
「っざけんなよ・・・あたしのこと軽く見やがって・・・。」
ボソッと悪態をつくと、あたしはみんなに掛けたマーキング魔能の強化に取り掛かった。
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