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第五章 : 救世主と英雄
第二次ミラ討伐戦㉑・霹靂
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「今日、ここまで。」
「はい!!ありがとうございました!!」
それは、ドーラ様といつもの鍛練を終えた時だった。
「グレース、いい成長ぶり。今後、楽しみ。」
「あっ、ありがとうございます!!」
「でも、忘れちゃ、ダメ。それ、敵も同じ。前、戦った敵、次、強くなってる、こと、多い。気を引き締める、絶対。」
ドーラ様に釘を刺され、浮かれそうになった気持ちがグッと引き戻された。
それと同時に、私の頭にある人物の顔が浮かんだ。
ミラ様に復讐を誓う、ファイセア様の弟、ノイエフだ。
どうしてかは分からない。
きっと、私が今まで戦った敵の中で、彼に最も成長の可能性があるからだと思う。
「どうした?」
「いえ、ちょっと・・・。一人だけ、強くなる見込みが大きな相手をイメージしまして。」
「だったら、次、そいつに、会った時、決して、油断、したら、ダメ。」
「はっ、はい!!」
もしまた今度ノイエフと相対した時、絶対に隙を見せてはならないことを、その場で固く決心したのだった。
◇◇◇
曲がり角の向こうから私に矢を放ってきたノイエフ。
しかし咄嗟の判断で冥府の炎の鎧を纏うことで、どうにか身を守ることができた。
「くそ!!」
歯がゆい顔をしながらノイエフは、間髪入れず矢を連射してきた。
私はその中を白丸に乗って掻い潜り、ノイエフに急接近した。
「地級第二位・爆ぜる五連矢!!」
ノイエフが放った矢が五発に増え、華麗な渦を起こしながら私に向かって一つに集約した。
「地級第一位・冥炎の加護・同胞付与!!」
私は白丸と茶々助にも同様に冥府の炎の鎧を与え、ノイエフの攻撃を切り抜けた。
「血操師・不殺剣錬成!!」
白丸から飛び降りた私は、そのままノイエフの頭に斬れない剣の一撃を食らわそうとしたが、後少しのところでかわされた。
「へぇ~ザコ吸血鬼にしてはずいぶんやるじゃない♪」
上を見ると、建物の上で一人の女性が私達の戦いを観戦していた。
純白の羽衣・・・!!
彼女は、黎明の開手の一人。
“天舞雄・キイル=デンセ=ウスキル”!!
「そう強張った表情しないでよ♪私はただ、可愛い後輩の活躍を見に来ただけなんだからさ。」
後輩?
まさかノイエフが・・・黎明の開手に・・・!!
「貴様も今すぐミラと同じようにしてやるから覚悟しろ。もっとも、お前はアイツと違って、死んだらそこで終わりなんだがな。」
そうか・・・!!
ノイエフが、ミラ様を・・・!!
私の心に激しい怒りが湧き起こった。
しかしそれは、ミラ様が一応は無事であるという事実によって、すぐにかき消された。
「そう・・・。失敗したのね。ミラ様への仇討ち。ホッとしたわ。あなた、意外と弱いままなのね。」
「なっ、なんだと・・・!!!」
私に挑発されて、ノイエフは怒り心頭になった。
「あなた達は下がってて。コイツは私は相手する。」
白丸と茶々助を下がらせて、私は剣を構えた。
相手は王都で私を打ち負かした男だ。
しかも黎明の開手の一員になり、一時的ではあるけれど、ミラ様を殺すほどの力まで手に入れている。
だけど・・・それはこっちも同じ!!
この男にぶつけるんだ。
私の今までの努力の成果を・・・!!
覚悟を決めた私は、剣を構えながら地面を大きく蹴って、ノイエフに向かっていった。
「天級第五位・雨矢の鉄槌!!」
ノイエフが天高く一発の矢を放つと、それが幾千にも増えて私に降り注いだ。
「地級第一位・冥炎の剣!!」
不殺の剣を冥府の炎の剣に持ち替えて、私は降り注ぐ矢を次々と焼き斬っていく。
全部を捌ききることはできなかったが、私の身体は冥府の鎧で守られているので命中する前に燃え尽きていった。
やがて降り注ぐ矢が底を尽き、私は再びノイエフに突進する。
「ちっ!!地級第一位・不浄の死矢!!」
ノイエフがバックステップしながら放ったのは、ロスドゥルガの呪毒が付与された矢。
身体のどこに命中しても死は免れない。
魔力不足で冥府の鎧はほぼ消えかかっている。
防ぎ切れない。
「だったら・・・!!地級第一位・弾丸走破!!」
私は最後に残った魔力を使って発動した魔能で、脚力を極限まで高め、それにより矢を正面から砕いた。
「あっ・・・!!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
怒りで絶叫したノイエフは、藍色の矢を発現しようとしていた。
このただならぬ魔力。
おそらくアレが、ミラ様を殺した、ノイエフの奥の手!!
あの矢が完全に顕現した時、魔能が発動する!
だけど・・・!!
私が再び持った斬れない剣の切っ先は、ノイエフの頬をすぐそこまで捉えていた。
このまま行けば・・・あとはもう・・・行くしかないッッッ!!!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ノイエフが魔能を発動する前に、私は勝負にケリを付けようとした。
◇◇◇
「中々やるね、アイツ。しょうがない!ここはいっちょ、助けてやるか・・・ッッッ!!!」
キイルはノイエフを倒そうとするグレースの右手の薬指に目が留まった。
そして彼女を風で捕らえると、自分の顔のすぐそこまで引き寄せた。
「ぐっ・・・!!なっ、何を・・・!?」
必死にもがくグレースにキイルが問う。
「お前に聞きたい。どこで手に入れた?指輪。」
グレースに問いただすキイルからは、いつものふざけたような態度は消え失せ、思わず身震いするほどの殺意を漂わせていた・・・。
「はい!!ありがとうございました!!」
それは、ドーラ様といつもの鍛練を終えた時だった。
「グレース、いい成長ぶり。今後、楽しみ。」
「あっ、ありがとうございます!!」
「でも、忘れちゃ、ダメ。それ、敵も同じ。前、戦った敵、次、強くなってる、こと、多い。気を引き締める、絶対。」
ドーラ様に釘を刺され、浮かれそうになった気持ちがグッと引き戻された。
それと同時に、私の頭にある人物の顔が浮かんだ。
ミラ様に復讐を誓う、ファイセア様の弟、ノイエフだ。
どうしてかは分からない。
きっと、私が今まで戦った敵の中で、彼に最も成長の可能性があるからだと思う。
「どうした?」
「いえ、ちょっと・・・。一人だけ、強くなる見込みが大きな相手をイメージしまして。」
「だったら、次、そいつに、会った時、決して、油断、したら、ダメ。」
「はっ、はい!!」
もしまた今度ノイエフと相対した時、絶対に隙を見せてはならないことを、その場で固く決心したのだった。
◇◇◇
曲がり角の向こうから私に矢を放ってきたノイエフ。
しかし咄嗟の判断で冥府の炎の鎧を纏うことで、どうにか身を守ることができた。
「くそ!!」
歯がゆい顔をしながらノイエフは、間髪入れず矢を連射してきた。
私はその中を白丸に乗って掻い潜り、ノイエフに急接近した。
「地級第二位・爆ぜる五連矢!!」
ノイエフが放った矢が五発に増え、華麗な渦を起こしながら私に向かって一つに集約した。
「地級第一位・冥炎の加護・同胞付与!!」
私は白丸と茶々助にも同様に冥府の炎の鎧を与え、ノイエフの攻撃を切り抜けた。
「血操師・不殺剣錬成!!」
白丸から飛び降りた私は、そのままノイエフの頭に斬れない剣の一撃を食らわそうとしたが、後少しのところでかわされた。
「へぇ~ザコ吸血鬼にしてはずいぶんやるじゃない♪」
上を見ると、建物の上で一人の女性が私達の戦いを観戦していた。
純白の羽衣・・・!!
彼女は、黎明の開手の一人。
“天舞雄・キイル=デンセ=ウスキル”!!
「そう強張った表情しないでよ♪私はただ、可愛い後輩の活躍を見に来ただけなんだからさ。」
後輩?
まさかノイエフが・・・黎明の開手に・・・!!
「貴様も今すぐミラと同じようにしてやるから覚悟しろ。もっとも、お前はアイツと違って、死んだらそこで終わりなんだがな。」
そうか・・・!!
ノイエフが、ミラ様を・・・!!
私の心に激しい怒りが湧き起こった。
しかしそれは、ミラ様が一応は無事であるという事実によって、すぐにかき消された。
「そう・・・。失敗したのね。ミラ様への仇討ち。ホッとしたわ。あなた、意外と弱いままなのね。」
「なっ、なんだと・・・!!!」
私に挑発されて、ノイエフは怒り心頭になった。
「あなた達は下がってて。コイツは私は相手する。」
白丸と茶々助を下がらせて、私は剣を構えた。
相手は王都で私を打ち負かした男だ。
しかも黎明の開手の一員になり、一時的ではあるけれど、ミラ様を殺すほどの力まで手に入れている。
だけど・・・それはこっちも同じ!!
この男にぶつけるんだ。
私の今までの努力の成果を・・・!!
覚悟を決めた私は、剣を構えながら地面を大きく蹴って、ノイエフに向かっていった。
「天級第五位・雨矢の鉄槌!!」
ノイエフが天高く一発の矢を放つと、それが幾千にも増えて私に降り注いだ。
「地級第一位・冥炎の剣!!」
不殺の剣を冥府の炎の剣に持ち替えて、私は降り注ぐ矢を次々と焼き斬っていく。
全部を捌ききることはできなかったが、私の身体は冥府の鎧で守られているので命中する前に燃え尽きていった。
やがて降り注ぐ矢が底を尽き、私は再びノイエフに突進する。
「ちっ!!地級第一位・不浄の死矢!!」
ノイエフがバックステップしながら放ったのは、ロスドゥルガの呪毒が付与された矢。
身体のどこに命中しても死は免れない。
魔力不足で冥府の鎧はほぼ消えかかっている。
防ぎ切れない。
「だったら・・・!!地級第一位・弾丸走破!!」
私は最後に残った魔力を使って発動した魔能で、脚力を極限まで高め、それにより矢を正面から砕いた。
「あっ・・・!!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
怒りで絶叫したノイエフは、藍色の矢を発現しようとしていた。
このただならぬ魔力。
おそらくアレが、ミラ様を殺した、ノイエフの奥の手!!
あの矢が完全に顕現した時、魔能が発動する!
だけど・・・!!
私が再び持った斬れない剣の切っ先は、ノイエフの頬をすぐそこまで捉えていた。
このまま行けば・・・あとはもう・・・行くしかないッッッ!!!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ノイエフが魔能を発動する前に、私は勝負にケリを付けようとした。
◇◇◇
「中々やるね、アイツ。しょうがない!ここはいっちょ、助けてやるか・・・ッッッ!!!」
キイルはノイエフを倒そうとするグレースの右手の薬指に目が留まった。
そして彼女を風で捕らえると、自分の顔のすぐそこまで引き寄せた。
「ぐっ・・・!!なっ、何を・・・!?」
必死にもがくグレースにキイルが問う。
「お前に聞きたい。どこで手に入れた?指輪。」
グレースに問いただすキイルからは、いつものふざけたような態度は消え失せ、思わず身震いするほどの殺意を漂わせていた・・・。
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