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第五章 : 救世主と英雄
第二次ミラ討伐戦⑳・会仇
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「そん、な・・・。」
目の前でソル・ヴェナがエスプに蹂躙されるのを見て、アウレルは荒い吐息をしながら硬直していた。
まさか竜種をここまで完膚なきまで叩き伏せてしまう人間がいるとは思わなかったからだ。
あれほどの強さを持つ人間だ。
加勢に出たところで手も足も出ず息する間も与えられずやられてしまうのは目に見えている。
そう肌で感じたアウレルは、悔しくて、悔しくて堪らないが足がすくんでとてもじゃないが動けなかった。
どうにか首を動かし、横にいるローランドを見ると、表情から自分と同じ状況に陥ってしまっているようだった。
このままでは、ミラの・・・自分達の主の大切な友人が殺されてしまう。
自分達はその様を、ただ指を咥えて見ていることしかできないのか?
動け、動けと二人は必死に念じ、石のように固まった足を懸命に動かそうとした。
「じゃあなソル・ヴェナ!!テメェとの殺り合い、中々に楽しめたぜッッッ!!!」
エスプは踏み込みの姿勢を取り、その刹那、ダガーナイフを構えてソル・ヴェナに電光石火の速さで向かっていった。
「全意暗転。」
「ぐっ・・・!?」
その時、ソル・ヴェナに突進していったエスプの全ての五感が消え失せ、彼の身体は地に伏した。
アウレルとローランドは、突然のことに理解が追い付かないでいた。
「いつまでそんなところで突っ立っているのですか?」
そんな二人を、静かに叱りつける声が後ろから聞こえてきた。
「「ヒューゴッッッ!!!」」
振り向くと、アローグン国王とドゥミト王子とともに、エボルの兵士を連れたヒューゴがそこにいた。
「ご無事ですか!?ソル・ヴェナ様!!」
エボルの岩削人達は皆、傷ついたソル・ヴェナの許に一目散に走っていった。
「てっ、手助けなど要らぬ!!我は大丈夫だ!!」
エスプに負わされた傷を、持ち前の再生能力で治癒しながら、ソル・ヴェナはゆっくりと立ち上がった。
あまりの覇気に駆け寄った岩削人達はついたじろいでしまったが、それはソル・ヴェナが無事であることの証であるため、同時に心から安心した。
「ヒューゴ!!よくやったぞ!!」
「安心するのはまだ早いですよローランド。アレを見て下さい。」
見ると白目を剥いたエスプが、うめき声を出しながら無理やり身体を動かそうとしていた。
「私の魔能を精神力のみで破ろうとするなんて、彼・・・本当に人間ですか?」
この世界でも指折りの精神支配系魔能の使い手であるヒューゴの術を自分の精神力だけで突破しようとするエスプに、アウレルとローランドは愕然とした。
しかし、当のヒューゴは冷静さを崩そうとはしなかった。
「何をしているのですか?早く戦闘態勢を整えて下さい。」
「だっ、だが・・・!!奴は竜種であるソル・ヴェナ殿を圧倒してしまうほどの実力・・・!!我輩らが敵う相手では・・・。」
「だからって諦めるの?」
ハッと上を見上げると、杖を構えたリリーナがゆっくりと自分達のところに降りて来た。
「ソル・ヴェナはミラお姉様にとって大切な友人・・・。だったら、自分達の主の友人を守るために全力を尽くすのが、良き近衛兵の務めってモンじゃないの?」
「フッ。あなたが私と同じ考えを持つなんて、今夜はここに雪でも降るのですかね?」
「こんな洞穴にどうやって雪が降るっていうのよ。」
いつも通りに軽口を叩き合うリリーナとヒューゴに、アウレルとローランドはなんだか負けているような気がした。
自分達はこんなにも怖がっているのに、この二人は、臆することなく自らの責務を全うしようとしている。
ああ、自分達は・・・なんて不甲斐ないことだろうか・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前達に言われなくても分かっておる!!先程はあまりの気迫につい圧倒されてしまったが、こんな細枝、我輩らの敵ではないわい!!」
「コイツに後悔させてやろうよ。乙女の永友を、敵に回したことを・・・!!」
仲間達に背中を押され、アウレルとローランドは再び奮い立った。
全ては自分達の主の、大切な友人を守らんとするために・・・。
◇◇◇
ソル・ヴェナ様と別れた私は、白丸と茶々助を連れて、街の中を駆けずり回っていた。
永友の方々が頑張ってくれたおかげだろうか?
街を闊歩していた魔獣達が、すっかり消え失せていた。
「よし!!この辺りは大丈夫そうだから、ここは一旦皆様と合流して・・・ッッッ!!!」
曲がり角に差し掛かった時だった。
自分達に向けて、矢を放とうとする者の姿に気付いた。
あれは・・・ノイエフ=オーネスッッッ!!!
「見つけたぞ。ミラの下僕がッッッ!!!」
悪鬼のように憎悪に歪んだ表情を浮かべながら、ノイエフは私達に向けて矢を放った・・・。
目の前でソル・ヴェナがエスプに蹂躙されるのを見て、アウレルは荒い吐息をしながら硬直していた。
まさか竜種をここまで完膚なきまで叩き伏せてしまう人間がいるとは思わなかったからだ。
あれほどの強さを持つ人間だ。
加勢に出たところで手も足も出ず息する間も与えられずやられてしまうのは目に見えている。
そう肌で感じたアウレルは、悔しくて、悔しくて堪らないが足がすくんでとてもじゃないが動けなかった。
どうにか首を動かし、横にいるローランドを見ると、表情から自分と同じ状況に陥ってしまっているようだった。
このままでは、ミラの・・・自分達の主の大切な友人が殺されてしまう。
自分達はその様を、ただ指を咥えて見ていることしかできないのか?
動け、動けと二人は必死に念じ、石のように固まった足を懸命に動かそうとした。
「じゃあなソル・ヴェナ!!テメェとの殺り合い、中々に楽しめたぜッッッ!!!」
エスプは踏み込みの姿勢を取り、その刹那、ダガーナイフを構えてソル・ヴェナに電光石火の速さで向かっていった。
「全意暗転。」
「ぐっ・・・!?」
その時、ソル・ヴェナに突進していったエスプの全ての五感が消え失せ、彼の身体は地に伏した。
アウレルとローランドは、突然のことに理解が追い付かないでいた。
「いつまでそんなところで突っ立っているのですか?」
そんな二人を、静かに叱りつける声が後ろから聞こえてきた。
「「ヒューゴッッッ!!!」」
振り向くと、アローグン国王とドゥミト王子とともに、エボルの兵士を連れたヒューゴがそこにいた。
「ご無事ですか!?ソル・ヴェナ様!!」
エボルの岩削人達は皆、傷ついたソル・ヴェナの許に一目散に走っていった。
「てっ、手助けなど要らぬ!!我は大丈夫だ!!」
エスプに負わされた傷を、持ち前の再生能力で治癒しながら、ソル・ヴェナはゆっくりと立ち上がった。
あまりの覇気に駆け寄った岩削人達はついたじろいでしまったが、それはソル・ヴェナが無事であることの証であるため、同時に心から安心した。
「ヒューゴ!!よくやったぞ!!」
「安心するのはまだ早いですよローランド。アレを見て下さい。」
見ると白目を剥いたエスプが、うめき声を出しながら無理やり身体を動かそうとしていた。
「私の魔能を精神力のみで破ろうとするなんて、彼・・・本当に人間ですか?」
この世界でも指折りの精神支配系魔能の使い手であるヒューゴの術を自分の精神力だけで突破しようとするエスプに、アウレルとローランドは愕然とした。
しかし、当のヒューゴは冷静さを崩そうとはしなかった。
「何をしているのですか?早く戦闘態勢を整えて下さい。」
「だっ、だが・・・!!奴は竜種であるソル・ヴェナ殿を圧倒してしまうほどの実力・・・!!我輩らが敵う相手では・・・。」
「だからって諦めるの?」
ハッと上を見上げると、杖を構えたリリーナがゆっくりと自分達のところに降りて来た。
「ソル・ヴェナはミラお姉様にとって大切な友人・・・。だったら、自分達の主の友人を守るために全力を尽くすのが、良き近衛兵の務めってモンじゃないの?」
「フッ。あなたが私と同じ考えを持つなんて、今夜はここに雪でも降るのですかね?」
「こんな洞穴にどうやって雪が降るっていうのよ。」
いつも通りに軽口を叩き合うリリーナとヒューゴに、アウレルとローランドはなんだか負けているような気がした。
自分達はこんなにも怖がっているのに、この二人は、臆することなく自らの責務を全うしようとしている。
ああ、自分達は・・・なんて不甲斐ないことだろうか・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前達に言われなくても分かっておる!!先程はあまりの気迫につい圧倒されてしまったが、こんな細枝、我輩らの敵ではないわい!!」
「コイツに後悔させてやろうよ。乙女の永友を、敵に回したことを・・・!!」
仲間達に背中を押され、アウレルとローランドは再び奮い立った。
全ては自分達の主の、大切な友人を守らんとするために・・・。
◇◇◇
ソル・ヴェナ様と別れた私は、白丸と茶々助を連れて、街の中を駆けずり回っていた。
永友の方々が頑張ってくれたおかげだろうか?
街を闊歩していた魔獣達が、すっかり消え失せていた。
「よし!!この辺りは大丈夫そうだから、ここは一旦皆様と合流して・・・ッッッ!!!」
曲がり角に差し掛かった時だった。
自分達に向けて、矢を放とうとする者の姿に気付いた。
あれは・・・ノイエフ=オーネスッッッ!!!
「見つけたぞ。ミラの下僕がッッッ!!!」
悪鬼のように憎悪に歪んだ表情を浮かべながら、ノイエフは私達に向けて矢を放った・・・。
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