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第五章 : 救世主と英雄

第二次ミラ討伐戦⑱・殺醒

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アウレルとローランドが参戦することに、エスプは大層不服そうな顔をした。

「拙者は銀武竜と一対一での戦いを望んでいる。貴様らのような三下には用がない。」

「ひどく見くびられたね僕達も。」

「同意!!三下かどうか、一度試してみるとよい!!」

アウレルとローランドは、それぞれ血操師ブラッド・スターで作成した斧と鎚を持って突撃した。

しかしエスプは防御の姿勢も取らず、ただ棒立ちするのみ・・・。

アウレルとローランドの一撃が直撃し、エスプの鎧に火花が散る。

「えっ・・・!?」

「なんと・・・!!」

アウレルとローランドは驚愕した。

なんとエスプの鎧には、傷一つ付いていなかったからである。

二人はいったんエスプから間合いを取った。

地級アース第二位・二重の斬撃ダブル・スラッシュ!!」

アウレルはエスプの胴体に、一度に二撃の斬撃を与える魔能攻撃を繰り出した。

地級アース第二位・溶焔の一打メルティング・ブロウ!!」

そしてローランドはエスプの被っている兜を溶かそうと、焔熱の攻撃を頭部に浴びせた。

しかし先程と同じく、エスプには全く聞いていなかった。

「これだけやっても、まだダメなんて・・・!!」

「どれだけ頑丈なのだ!?こやつの鎧は・・・!!」

歯がゆい思いをする二人を余所に、エスプは鎧から大振りの剣を二本取り出し、二刀流に構えた。

「だから三下は下がっておれと言ったであろう!!」

エスプの高速の薙ぎ払い攻撃が、アウレルとローランドの身体を掠めた。

「くっ・・・!!」

「ちぃ・・・!!」

アウレルは腹に、ローランドは額に軽い刀傷を負い、二人はソル・ヴェナの許まで一旦後退した。

「下がっていろ。お前達では、奴を仕留められん。」

「そんな・・・!!!」

「我輩達はまだやれます!!ソル・ヴェナ殿こそ下がって・・・」

「ならん!!」

ソル・ヴェナから一喝され。アウレルとローランドに緊張が走った。

「奴の鎧、どれほどの強度か見させてもらったが・・・恐らく我の鱗と大差ないほど頑強だろう。」



それはつまり、エスプは竜種ドラゴレイス随一の防御力を誇るソル・ヴェナと同等の護りを誇っているということ。

それではいかに乙女の永友である二人でも、奴に傷をつけることはほぼ不可能であろう・・・。

「やはりここは、我が出張るほかにあるまいて。」

ソル・ヴェナが前に出て、エスプは鎧の中で笑みを浮かべた。

「やっと貴様と勝負することができるな。ソル・ヴェナ。」

「こちらとて時間の余裕はない。故にさっさと終わらせたい。」

「そう連れないことを申さず、この戦いを楽しもう・・・ッッッ!!!」

まだ話し合いの途中にも関わらず、ソル・ヴェナはエスプの胴に槍尾の突きを見舞った。

その衝撃で、エスプは石造の建物を10軒ほど貫き吹き飛んだ。

「なっ、何を・・・!!」

立ち上がろうとしたエスプに、ソル・ヴェナは間髪入れず刃翼の斬り上げをした。

「ぐはぁ・・・!!!」

エスプの身体は天高く舞い、ソル・ヴェナは翼をはためかせ飛翔し、逆さに回転しながら宙を舞うエスプに突進し、地面に叩きつけた。

「ウソだろ・・・。」

「なんと猛々しい・・・。」

新参とはいえ、自分達の攻撃をものともしなかった黎明の開手ひらきてのメンバーがボロ雑巾のように扱われている光景に、アウレルとローランドは愕然とした。

“これが伝説と名高い竜種ドラゴレイスの力か?”と・・・。

「言っただろう。“時間の余裕はない。”とな。」

パラパラと土煙が舞う中で、ソル・ヴェナは大の字で倒れているエスプに語り掛けた。

「驚いた・・・。よもや、これほどの物とは・・・。」

「抜かせ。貴様こそどうなっておるのだその鎧。我の連撃を食らっても、とは・・・。」

あれだけの攻撃を与えても、新品同様の輝きを放っているエスプの鎧を、ソル・ヴェナは異常に感じていた。

「これは拙者にとって身を守る物であると同時にとなる物・・・。だがしかし、その必要は無くなった。」

「何?」

「何故なら・・・久しぶりに本気を出す相手と会えたんだからなぁ!!!」

次の瞬間、エスプは鎧をまるで殻のようにバラバラと壊しながら立ち上がった。

鎧の中にいたのは・・・整った顔立ちをしながらも、全身だらけで、腰身の一枚のみを着た青年だった。

彼は散らばった鎧の中から一本のダガーナイフを取り出した。

それにはこう銘打ってあった。

強者敬殺きょうじゃけいさつ”と・・・。

「銀武竜ソル・ヴェナ!!テメェはこのが敬意を持って正々堂々この一本のみで相手してやる!!さぁ!!思う存分楽しもうぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
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