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第五章 : 救世主と英雄

第二次ミラ討伐戦②・打堅

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ソル・ヴェナを逃がして、一人で黎明の開手ひらきてに挑むことになったあたし。

「どうした?誰からでもいいよ。何ならまとめてかかってきたって・・・」

「いや、それはやめておく。」

「は?」

「正直なところ、僕達はまだ、生き返ったお前の実力を正確には見極められていない。戦った者がいないからね。」

「へぇそう。そこのリセだったら分かんじゃないの?今のあたしがどんだけ強いか。」

あたしが視線をチラッと向けると、人間の身体に受肉したリセは眉間にシワを寄せて睨みつけた。

「マースミレンでのお前とリセの戦いなら当然知っている。だけど僕としては、実際にこの目で見ないと納得できない。」

「“百聞は一見に如かず。”ってヤツね。中々いい性格してんじゃん。」

「ありがとう。」

あたしの評価に、アクメルはペコリと頭を少し下げた。

「で、どうすんの?リーダーさん。誰をにする?」

「嫌な言い方はやめてくれよ。ただ、そうだな・・・。ジョルド、エスプ。小手調べ、頼んだ。」

「分かりました、導主様。」

「有難きご采配、感謝いたします!!」

アクメルの指示の下、二人の男があたしの前に出てきた。

一人は薄着で、いかにも肉弾戦が得意そうな若い男。

そしてもう一人は正反対の、全身フルアーマーな奴。

アルーチェさんとトヴィリンから仕入れた情報で、誰なのか見当は付いている。

地撼雄ぢかんゆう・ジョルド=ネイヴ=リスティ”と“敬殺雄けいさつゆう・エスプ=ドーレア=イゴス”。

ジョルドの能力は知っている。

何せアルーチェさんと同じ、前回のミラ討伐戦の生き残りだから。

でもエスプの能力は知らない。

トヴィリンとリセと一緒に新しく加入したメンバーだから。

となると、まず戦うべきは・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「こっちか!!」

考え終えたあたしは、エスプの頭に斬れない剣を叩き込んだ。

剣と鎧がぶつかった瞬間、大きな衝撃波が生まれたが、エスプはビクともしなかった。

「なっ・・・!?」

「くっ、くくっ・・・!」

「なんかおかしいか?」

「これが伝説の吸血鬼の一撃・・・!!中々に、響く。素晴らしい!!」

どうやらエスプは、あたしから貰った一撃に快感しているみたいだ。

コイツ、戦闘狂キャラかよ・・・。

イヤな気分になっていると、エスプの鎧から剣の柄が伸びてきて、奴はそれを手に取ると、なんと鎧から剣を取り出して、あたしの首目がけてそれを横薙ぎした。

だけど魔能も何も付与されてない一撃だから、当然刎ねれるワケなんかなく、逆に剣の方が折れた。

「素の攻撃が効かんとは聞いてたが、まさか拙者の扱う武具の中で業物わざものの内に数えられる一振りを逆に砕いてみせるとは・・・!救血の乙女・ミラよ。貴様こそ、拙者が探し求めていた強者ッッッ!!!」

あたしの実力を知って、エスプはかなり興奮してるみたいだった。

「殺し甲斐がある?何ならもっとやってみろよ。」

「いいとも。拙者が強者から奪ってきた獲物の全てを貴様に捧げよう!!」

燃えてきたエスプは、鎧からたくさんの武器を取り出した。

剣、斧、双剣、槍・・・。

だけどただの攻撃だから、使う度にバキバキ折れていく。

それでもまだまだストックは減らない。

コイツ、今までどんだけの人を殺してきたっていうんだよ・・・。

エスプが鎧からを出せば出すほど、あたしは奴の所業にウンザリした。

だけどこれで、奴の実力は何となく分かってきた。

次はもっと強く殴れば、コイツをブチのめせるかもしれない。

「そんじゃもう一回、あたしも行かせてもらうとす・・・」

「そうはさせるか!!」

ハッとして後ろを見ると、ジョルドが拳を振り上げて向かってきたので、あたしは咄嗟に横に避けた。

だけど、少しタイミングが合わず、奴の一撃が顔をかすめ、あたしの左の眉がザックリ切れた。

「痛っ・・・!!」

あたしの身体に傷を付けるなんて・・・。

今のは間違いなく、天級ヘヴンの魔能!!

「ジョルド!!邪魔をするな!!ミラは拙者の獲物だぞッッッ!!!」

「いつまで遊んでるつもりだエスプ。導主様の手を煩わせるな。」

「貴様・・・!!偉そうに・・・!!」

楽しみを邪魔されて、エスプは怒り心頭といった具合だった。

「ここから先は俺がやる。お前は俺の後に続け。」

「大した威勢だけど、アンタだったら、あたしを殺せんの?」

ジョルドを挑発しつつ、あたしは顔に受けた傷を全回復フル・ヒーリングで治した。

「気になるなら試してみるか?」

ジョルドが両腕を地面に向かって伸ばすと、地面から伸びた何かが、彼の両腕にまとわり付いた。

天級ヘヴン第四位・砕破の連拳シャッター・フィスト!!」

ジョルドは一気に間合いを詰めて来て、ほとんど目で追えない連打を浴びせてきた。

あたしはそれらを目で必死に追いながら、何とか剣でガードする。

だけどジョルドが腕に纏ってるモノの力が尋常じゃなく、逆にあたしの剣が折れそうになる。

マズい!!

こんな攻撃をもし心臓に打ち込まれたりなんかしたら、あたしは死ぬ・・・!!

「中々いい見切りだ!!だがこれは防げるか!?」

ジョルドは腕に纏っていたモノを、今度は足に纏い出した。

天級ヘヴン第四位・地砕きの蹴打グランドクラッシュ・ブート!!」

ジョルドはあたしの顔面を蹴り殴ろうとしてきたので、あたしは腕でガードしたが、二の腕からバキボキと腕が粉々になる音が聞こえ、あたしは思いっきり吹っ飛ばされた。

「ぐっ・・・!!ああっ・・・!!」

腕に全然力が入んない・・・。

それにめちゃくちゃ痛い・・・!!

こりゃ完全に骨イッてる。

「腕は飛ばなかったな。相変わらず頑丈だな。」

ミラ討伐戦の生き残りとは聞いてたけど、まさかこれほど実力とは・・・。

黎明の開手、ジョルド=ネイヴ=リスティ。

大地を流れる“地波ぢば”というエネルギーを身体に纏うことで強力な攻撃を繰り出すことができる。

その一撃はまさに・・・“地をるがす”ほど・・・。

アルーチェさんから前情報は聞いてたけど、これは、予想以上だな・・・。

「どうしたミラ?俺が怖くなったか?」

「いや。アンタは確かに強い。だけど知ってるよね?あたし・・・まだまだ本気じゃないよ?」

鋭い眼光を向けるあたしに、ジョルドは一瞬ながらたじろいだ。
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