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第五章 : 救世主と英雄
始動
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「ということなのだ。」
「はぁ・・・。」
ソル・ヴェナとの戦いを終えたあたしは、彼から本物のミラとの馴れ初めを聞かされた。
いかにもあの子らしい答えだ。
自分のために命を尽くそうとする相手に対して、「自分の人生を生きて。」なんて言うなんて。
それにしても・・・まさかそんな経緯で二人が知り合いになってたとは・・・。
バチバチにケンカした相手から大切に扱われるなんて、まるでひと昔前の青春ドラマみたいだな。
待てよ。
ひょっとして・・・。
「ソル・ヴェナ。あなたがまさかこの国を乗っ取って顧問になったのって・・・。」
「この岩削人の国がお前に仇なす人間の国と懇意になっているという話を耳にしてな。余計な助太刀をさせぬために牽制するためにな。」
やっぱり・・・。
そうでなきゃアドニサカをお得意先にしてる国なんかをピンポイントで襲撃したりしないもん。
「いらぬ世話だったのは認める!!だが我は、僅かにでもお前の力になりたかったのだ。それだけは、分かってほしい・・・!!」
「ちょちょちょっ!?顔を上げて!!ありがとね。あたしをずっと想ってくれて。あなたの気持ち、すごく嬉しいよ。」
「おおっ・・・!!我が兄弟にここまで感謝されるとは・・・!!我は、果報者ぞッッッ!!!」
あたしに褒められたことがよっぽど嬉しかったらしく、ソル・ヴェナはまた号泣しだした。
いちいち感動されるとなんかちょっと・・・疲れる・・・。
「ほらほら!!もう泣かないの!!長生きしてる竜がそんなんじゃダメでしょ?」
「そう、だな!すまぬ。しかしミラ。一つ聞きたい。」
「何?」
「かつてのお前は仲間を守るためとあらば、敵を殺すことも厭わなかった。それが何故、仲間のみならず、敵にも慈悲をかけるようになったのだ?」
「え?う~ん・・・そうだねぇ・・・。単純にイヤになったから・・・かな?」
「どういうことか?」
「あたし達の敵・・・つまりは人間だけど、本質はあたし達と一緒なんだよ。みんな同じように、毎日必死に生きて、大切な誰かがいて、それを守るためだったら自分の命だって賭けることができる・・・。それが分かってふと思ったんよ。“なんで自分達と同じ人達を殺さなくちゃいけないんだ。冗談じゃない。”ってね。あたしはさ・・・人間と吸血鬼がお互い理解し合って、一緒に暮らせる世界を創っていきたいんよ。最初はさ、そんなの夢物語じゃないかってドキドキしたもんよ。でもさ、いざ行動に移してみると、巡り巡ってそれが実現できるかもしれない可能性が見つかって、今まで敵だったはずの人間達にも、大切な人ってのができたんだよ。良かったね!思い切って自分の理想に挑戦することができて・・・。」
あたしの言葉を、ソル・ヴェナは何も言わず、ただ黙って聞いていた。
「そうか・・・。」
「甘っちょろいよね!?今まで戦って生きてきたあなたにとっては。」
「否!!断じて甘くはないッッッ!!!」
「え?」
「戦いにおいて、迷わず敵を討ち取れることは、確かに勇気あること。だが敵・・・なおかつ今まで自分達を虐げてきた怨敵に慈悲をかけることは、更に勇気があり、途轍もない苦難が伴うこと・・・。お前はそれを、己の信条に則り、実現できている。ミラよ、お前は自分を誇れ。」
「あたし、何も間違ってなんか、ない・・・?」
「“銀武竜ソル・ヴェナ”の名の下に宣言しよう!!我が愛しの兄弟、餮欲・・・いや、“救血の乙女・ミラ”はとても勇気がある、偉大な救世主だとッッッ!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ありがとね、ソル・ヴェナ・・・。」
まっさらな言葉で自分の理想を褒めてくれたソル・ヴェナに、あたしはとっても感動した。
“兄弟”か・・・。
親友二人に続いて、また大切な人ができちゃったよ・・・。
「気にするな!ただ事実を言ったまでだ。」
「いやそんなことないって!!本当感謝してる!!」
「そっ、そうか・・・。そうか!!」
顔を赤くしながら満面の笑みを浮かべるソル・ヴェナ。
この人気持ちが顔に出るタイプだな・・・。
「でさ、今回の同盟の件だけど・・・。」
「勿論!!喜んで受諾するとしよう!!我が国エボルは、救血の乙女・ミラ・・・そして吸血鬼軍への協力を惜しまぬ!」
「うし!!そんじゃまぁ~これからも、長い付き合いをヨロシクね!!」
「おうとも!お前達の後ろにはこの“銀武竜ソル・ヴェナ”が付いておる!!大船に乗った気概でいろ!!」
力のこもった握手を交わすあたしとソル・ヴェナ。
こうして、吸血鬼軍と鉱神の山・エボルとの和睦が成立した。
「そんじゃまぁ~!!交渉も上手くいったことだし、早いトコヒューゴ君達に報告しにいかなきゃ。」
「一緒に行かぬか?お前の仲間に、是非とも我も顔合わせしたい!!」
「いいね♪それじゃあ一緒に・・・」
「悪いけど、そうはさせないよ。」
ッッッ!!!
辺りを見回すと、あたし達はいつの間にか6人の人間達によって囲まれていた。
「なんだ貴様ら?どこから入ってきた?」
「僕の力さえあれば、こんな穴倉に入り込むのなんて簡単だよ。」
「ほう。よほど死ぬ度胸があると見える?せっかく入って来たのだ。名くらい明かせ。人間。」
「僕は・・・“全能雄・アクメル=フォーレン=フレイザー”。吸血鬼の救世主、人間の仇敵・・・救血の乙女・ミラに二度目の死を与えるため、仲間とともにここに来た。」
◇◇◇
アルスワルド新世歴3024年10月18日。
岩削人の大国、“鉱神の山・エボル”において、第二次ミラ討伐戦・・・始動。
「はぁ・・・。」
ソル・ヴェナとの戦いを終えたあたしは、彼から本物のミラとの馴れ初めを聞かされた。
いかにもあの子らしい答えだ。
自分のために命を尽くそうとする相手に対して、「自分の人生を生きて。」なんて言うなんて。
それにしても・・・まさかそんな経緯で二人が知り合いになってたとは・・・。
バチバチにケンカした相手から大切に扱われるなんて、まるでひと昔前の青春ドラマみたいだな。
待てよ。
ひょっとして・・・。
「ソル・ヴェナ。あなたがまさかこの国を乗っ取って顧問になったのって・・・。」
「この岩削人の国がお前に仇なす人間の国と懇意になっているという話を耳にしてな。余計な助太刀をさせぬために牽制するためにな。」
やっぱり・・・。
そうでなきゃアドニサカをお得意先にしてる国なんかをピンポイントで襲撃したりしないもん。
「いらぬ世話だったのは認める!!だが我は、僅かにでもお前の力になりたかったのだ。それだけは、分かってほしい・・・!!」
「ちょちょちょっ!?顔を上げて!!ありがとね。あたしをずっと想ってくれて。あなたの気持ち、すごく嬉しいよ。」
「おおっ・・・!!我が兄弟にここまで感謝されるとは・・・!!我は、果報者ぞッッッ!!!」
あたしに褒められたことがよっぽど嬉しかったらしく、ソル・ヴェナはまた号泣しだした。
いちいち感動されるとなんかちょっと・・・疲れる・・・。
「ほらほら!!もう泣かないの!!長生きしてる竜がそんなんじゃダメでしょ?」
「そう、だな!すまぬ。しかしミラ。一つ聞きたい。」
「何?」
「かつてのお前は仲間を守るためとあらば、敵を殺すことも厭わなかった。それが何故、仲間のみならず、敵にも慈悲をかけるようになったのだ?」
「え?う~ん・・・そうだねぇ・・・。単純にイヤになったから・・・かな?」
「どういうことか?」
「あたし達の敵・・・つまりは人間だけど、本質はあたし達と一緒なんだよ。みんな同じように、毎日必死に生きて、大切な誰かがいて、それを守るためだったら自分の命だって賭けることができる・・・。それが分かってふと思ったんよ。“なんで自分達と同じ人達を殺さなくちゃいけないんだ。冗談じゃない。”ってね。あたしはさ・・・人間と吸血鬼がお互い理解し合って、一緒に暮らせる世界を創っていきたいんよ。最初はさ、そんなの夢物語じゃないかってドキドキしたもんよ。でもさ、いざ行動に移してみると、巡り巡ってそれが実現できるかもしれない可能性が見つかって、今まで敵だったはずの人間達にも、大切な人ってのができたんだよ。良かったね!思い切って自分の理想に挑戦することができて・・・。」
あたしの言葉を、ソル・ヴェナは何も言わず、ただ黙って聞いていた。
「そうか・・・。」
「甘っちょろいよね!?今まで戦って生きてきたあなたにとっては。」
「否!!断じて甘くはないッッッ!!!」
「え?」
「戦いにおいて、迷わず敵を討ち取れることは、確かに勇気あること。だが敵・・・なおかつ今まで自分達を虐げてきた怨敵に慈悲をかけることは、更に勇気があり、途轍もない苦難が伴うこと・・・。お前はそれを、己の信条に則り、実現できている。ミラよ、お前は自分を誇れ。」
「あたし、何も間違ってなんか、ない・・・?」
「“銀武竜ソル・ヴェナ”の名の下に宣言しよう!!我が愛しの兄弟、餮欲・・・いや、“救血の乙女・ミラ”はとても勇気がある、偉大な救世主だとッッッ!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ありがとね、ソル・ヴェナ・・・。」
まっさらな言葉で自分の理想を褒めてくれたソル・ヴェナに、あたしはとっても感動した。
“兄弟”か・・・。
親友二人に続いて、また大切な人ができちゃったよ・・・。
「気にするな!ただ事実を言ったまでだ。」
「いやそんなことないって!!本当感謝してる!!」
「そっ、そうか・・・。そうか!!」
顔を赤くしながら満面の笑みを浮かべるソル・ヴェナ。
この人気持ちが顔に出るタイプだな・・・。
「でさ、今回の同盟の件だけど・・・。」
「勿論!!喜んで受諾するとしよう!!我が国エボルは、救血の乙女・ミラ・・・そして吸血鬼軍への協力を惜しまぬ!」
「うし!!そんじゃまぁ~これからも、長い付き合いをヨロシクね!!」
「おうとも!お前達の後ろにはこの“銀武竜ソル・ヴェナ”が付いておる!!大船に乗った気概でいろ!!」
力のこもった握手を交わすあたしとソル・ヴェナ。
こうして、吸血鬼軍と鉱神の山・エボルとの和睦が成立した。
「そんじゃまぁ~!!交渉も上手くいったことだし、早いトコヒューゴ君達に報告しにいかなきゃ。」
「一緒に行かぬか?お前の仲間に、是非とも我も顔合わせしたい!!」
「いいね♪それじゃあ一緒に・・・」
「悪いけど、そうはさせないよ。」
ッッッ!!!
辺りを見回すと、あたし達はいつの間にか6人の人間達によって囲まれていた。
「なんだ貴様ら?どこから入ってきた?」
「僕の力さえあれば、こんな穴倉に入り込むのなんて簡単だよ。」
「ほう。よほど死ぬ度胸があると見える?せっかく入って来たのだ。名くらい明かせ。人間。」
「僕は・・・“全能雄・アクメル=フォーレン=フレイザー”。吸血鬼の救世主、人間の仇敵・・・救血の乙女・ミラに二度目の死を与えるため、仲間とともにここに来た。」
◇◇◇
アルスワルド新世歴3024年10月18日。
岩削人の大国、“鉱神の山・エボル”において、第二次ミラ討伐戦・・・始動。
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