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第五章 : 救世主と英雄

親友への贈り物

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およそ一年ぶりの再会を果たしたあたしとソウリンさん達は、あれこれ喋りながら拠点に向かっていた。

「しかしミラ殿が永友のお二方を連れて戻ってくるなんて驚きです。」

「二人とはあの難民達を連れてった先の南方吸血鬼軍本部で会いました!他のみんなとも、バッチリ合流することができました。」

「そうですか~。それは何よりです。」

楽しそうに話すあたしとソウリンさんの後ろでは、反省モードになったネー君に、リリーが無言で圧をかけていた。

「あっ、あの・・・。」

「何?」

「さっきは、誠に申し訳ありませんでした・・・!!ミラ様達だったとは本当に知らなくて・・・。」

「今度やったらヒューゴの歯ブラシにで変えるから覚悟しなさい。」

「私を勝手に巻き込まないで下さい。」

「弟が無礼なマネをしでかして、本当すみませんでしたぁ!!!」

はぁ・・・。

全く・・・。

「その辺にしとかないと、リリー、アンタもあたしの靴に姿変えちゃうよぉ~?」

「それは・・・!!むしろ・・・ご褒美♡♡♡・・・」

「ぅおい!!!」

「ははっ。賑やかで良いことですね!」

「いっつもこうなんですよ!?本当勘弁してほしいモンです・・・。」

「いいじゃないですか。それだけ慕われている・・・ってことですよ。」

慕われている・・・のか?

ジ~っとリリーを見ると、いやらしい上目遣いでウィンクされた。

うううっ!?!?

サブいぼ立った!!

絶対アレは慕ってる子の目つきじゃないッッッ!!!

と、そんなことがある内に、あたし達は魔能でカモフラージュされたソウリンさんの拠点の入口にたどり着いた。




◇◇◇




「おっ!!ミラ様だ!!」

「えっ!?ウソ・・・!!」

「ミラ様~!!!」

石段を下って拠点内部に入ると、住民のみんなが歓迎してくれた。

その中には、転生したての頃にあたしが助けたり、お世話になった人も何人かいて、懐かしくなった。

「皆さんお久しぶりです!!また何日かお世話になると思うので、どうぞよろしくお願いします!!」

あたしがそう言うと、拠点は一気にお祭りムードになった。

帰省をこんなにも盛大に迎えられるのは、生まれて始めてだ。

住民の手厚い歓迎を何とか相手しながら、あたしは白丸はくまると茶々助を厩舎に預けた。

彼等にとっても一年振りの寝床だったため、いつにも増してリラックスしているように感じられた。

「じゃあみんな!!一旦ここで別れて休もうか!!アーさん!あたしが使ってた空き家、まだ空いてる?」

「はい。ミラ様がいつでも帰ってきてもいいように、毎日お手入れを欠かさずやってきましたので。」

「おっ!そりゃ助かる♪そんじゃあたしは行くから、リリーとヒューゴ君にもそれぞれ空いてる家、宛がってあげて。」

「分かりました。ではリリーナ様、ヒューゴ様。こちらへ。」

「私、ミラお姉様と一緒の部屋がいい~!!」

「あっ、言い忘れてたけど、リリーの部屋はあたしの部屋からウンと遠くにして!!」

「なっ、何でですか~!?」

「だって絶対ヘンなことしに押しかけてくるから。でしょヒューゴ君?」

「ええ。必ずやりますね。」

「ってことで、お願いしや~す!!」

「ちょっと!!ミラお姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

駄々をこねるリリーは、ヒューゴ君によって連行されていった。

そしてあたしは、異世界転生してから初めて過ごした家に、帰ってきたのだった。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「ただいま。」

家に入った時、誰に言うでもなく、静かにそう言った。

このベッド、この窓からの景色・・・久しぶりだぁ・・・。

目に映る物全てに懐かしさを感じて、一気にノスタルジックな気分になる。

「あっ!このドレスよく着てたなぁ~!!」

白と金の明らかに露出が激しめのドレスをタンスから引っ張り出して、自然に笑みがこぼれる。

やっと、帰ってきたんだ・・・。

こっちの世界の、ふるさとに・・・。

ジーンとなった気分に浸ってると、家のドアをノックする音が聞こえて、出てみると、一人の人物が立っていた。

その顔をあたしは忘れやしなかった。

だって、この世界に転生して、最初に助けた人なんだから・・・。

「あっ!グレースちゃんのお父さん!!」

「どうも。ご無沙汰しておりました。ミラ様。」

「どうぞどうぞ入って下さい!!」

少し遠慮しがちなグレースちゃんのお父さんを、あたしは半ば強引に中に招待した。

「まぁどうぞ!かけて下さい!」

客間のテーブル席に、グレースちゃんのお父さんを座らせた。

「こっ、これはどうも・・・。」

「何か飲みます?すぐ用意するんで!」

「あっ、いえ大丈夫です!!そんなに大した用ではございませんので。ミラ様も、どうかお座りになって下さい。」

「ああ、はい・・・。」

グレースちゃんのお父さんと向かい合う形で、あたしもテーブルに座った。

「あの・・・。」

「はい?」

「娘は・・・元気にやってますか?」

「はい!!そりゃもう元気いっぱいで!!本当に頼りになります。親友として・・・。」

「そうですか。それは、良かった・・・。」

グレースちゃんのお父さんは安心しながらそう言った。

「近々、会う予定は?」

「え?そうですね・・・。南方吸血鬼軍の本部で会うかもしれません。今回の仕事は、娘さんにも手伝ってもらう予定になっているので。」

「分かりました。では、会った時に、これをお渡し願いないでしょうか?」

グレースちゃんのお父さんが取り出した物・・・。

それは、だった。

ルビーの宝石が付いてその中に、両手に剣を持って背中にコウモリの翼が生えたヒトガタの銀細工が施された鮮やかな指輪。

「これは?」

「亡くなった女房の家で代々受け継がれてきたお守りの指輪です。吸血鬼の、97歳の成人の際に渡すしきたりだったのですが、娘は誕生日の時不在だったので私が預かっていたのです。」

そっか。

確かグレースちゃん、あたしが転生した時点で96歳だったけか。

「分かりました!会った時にしっかり渡しておきます。お父さんからの、ちょっと遅めのバースデープレゼント・・・。」

「ありがとうございます。では、私はこれで。ミラ様・・・これからも、娘をどうか、よろしくお願いします。」

グレースちゃんのお父さんは深々とお辞儀して、あたしに見送られながら、家を後にした。

「グレースちゃんいいなぁ・・・。こんな綺麗な指輪なんかもらえて。おおっとそうだ!どうせならキキチンとした入れ物に入れておかないと!」

あたしは魔能で『誕生日おめでとう!!』と文字が刻まれた指輪ケースを作って、その中に例の指輪を入れた。

「これでヨシ!!グレースちゃん喜ぶぞ~♪」

指輪を渡されたグレースちゃんの喜ぶ様子をイメージして、あたしはニヤニヤが止まらなかった。
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