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第五章 : 救世主と英雄
不悔の精神
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“ノイエフが私とルーチェを殺そうとする。”・・・だと・・・?
一体、どういうことだ・・・?
「どういうつもりですか?まさか・・・!ノイエフ君を先に捕らえて脅したのですか!?私とファイセアを始末しなければ殺すと・・・!!」
「普通だったらそう考えるかもしれないね。だがアルーチェ、それは間違いだ。ノイエフはね、私達の仲間になりたいんだよ。これは、そのための試練。彼が僕達の仲間になって、ミラに復讐する覚悟が、一体どれくらいあるのかを問うための・・・。言っただろ?“門出に付き合ってほしい。”って。」
ノイエフが黎明の開手に入りたいと願い、奴らがその意見を汲んだことにより、このようなことになったとでもいうのか!?
「なぁノイエフ!違うよな?奴らに脅されているのだろう?確かにお前は、王国とミラ殿が手を組むことを良しとせず反乱をはたらいた。だが誰よりも私達を想っていたお前が身内殺しなど、そんな残忍なマネはできないはずだ!何とか・・・何とか言ってくれッッッ!!!」
「・・・・・・・。」
私の必死な呼びかけに、ノイエフは沈黙を以って応えた。
だがゆっくりと口を開き、こう言った。
「兄上、義姉様・・・死ね。」
その瞬間、ノイエフは凄まじい加速をつけて私達の間合いに入り、矢を弓につがえた。
「うっ・・・!!」
「ファイセアッッッ!!!」
ノイエフが矢を放った瞬間、私は神の御使いの羽衣を纏ったルーチェに抱えられ、上空にいた。
「ルーチェ!!」
「ノイエフ君、どうやら本気みたい。本当に私達を殺すつもりよ。残念だけど・・・戦うしかないわ。」
「そんな・・・!間違っている・・・。こんなの・・・狂気の沙汰だ!!身内どうしで殺し合うなんて・・・!!!」
「大丈夫よ!!私達は、ノイエフ君を殺す必要はないわ。」
「え?」
「さっき導主が言ったこと覚えている?“倒せばここから出れる。”つまり私達はノイエフ君を殺さずに、ここから出れる可能性があるってことよ。もちろん、彼も一緒に連れてね。」
「しっ、しかし・・・果たして本当に、上手くいくのか?ノイエフを殺さずに倒すなんて・・・。」
「ミラ様なら、迷わず同じ選択をするはずよ。決めたでしょ?絶対ノイエフ君を連れ戻すって・・・。だからしっかりして!!ファイセア!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ルーチェ、下ろしてくれ。」
ルーチェは私を抱えながら、ノイエフから距離を取ったところでそっと下ろした。
「分かったルーチェ。やろう!ノイエフを倒し、3人でここから脱出するぞ!!」
「ファイセア・・・!」
「ノイエフ!!遠慮なくかかって来い!!復讐への妄執に取り憑かれたお前の精神を、私達の手で叩き直してやるッッッ!!!」
私が宣言すると、ノイエフは怒りで顔を激しく震わせた。
「お前達に何が分かる・・・。ミラに全てを奪われた、この俺の気持ちがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
激昂したノイエフは、私達に向けて、今度は矢を2本同時に放ってきた。
私とルーチェは二手に分かれて奴の放った矢を回避した。
「地級第一位・円環の万矢!!」
ノイエフが右足を軸に回転すると、魔力で生成された無数の矢が私とルーチェに襲い掛かった。
天使の羽衣を着たルーチェは途轍もないスピードで走ることによって、矢を全てかわしていたが、私は徐々に目で追い切れなくなった。
「はっ・・・!」
そしてとうとう無数の矢によって射貫かれそうになった刹那、私の前に両手に剣を持った3対の翼の天使が現れて、私を守ってくれた。
「天級第三位・座天使の加護。」
どうやらルーチェが魔能で呼び出してくれたみたいだ。
「座天使、ファイセアを守って。」
「ぎぃぃ・・・!!くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
天使を呼び出されて怒り心頭になったノイエフは、歴然としているルーチェを仕留めにかかった。
だけどノイエフがどれだけ矢を放とうと、天使の羽衣を身に纏ったルーチェは悉くそれを回避してしまう。
「ノイエフ君、終わりよ。」
ノイエフの片腕をルーチェの剣が斬り飛ばそうとした瞬間、ノイエフははるか上空に向かって跳躍した。
「えっ!?」
「俺の力を見くびるなよ!!この・・・人間の面汚しどもがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
天高く跳んだノイエフは弓に矢をつがえて、弦を大きく引き絞った。
「天級第五位・爆焔の滅矢ッッッ!!!」
ノイエフが放った矢は、地面に着弾と同時に大爆発を起こした。
「はぁ~・・・!!はぁ~・・・!!これでもう、終わり・・・ッッッ!?」
地面に着地したノイエフが驚するのも無理もないだろう。
何故なら、跡形も無くなったと思っていた私とルーチェは、6対の翼を持つ巨大な天使によって守られていたのだから。
「天級第二位・不滅の熾天使。私が呼び出せる最強の天使よ。」
「ばっ、馬鹿な・・・。俺の、渾身の一撃が・・・。」
「さっきのが全力?なら、これで証明されたわね。あなたの復讐心は、私達の前では無力だってことが。」
「何・・・!?」
「私にばかり構っているせいで後ろがガラ空きよ、ノイエフ君。」
ノイエフは咄嗟に後ろを振り返ったが、もう遅かった。
「獲ったぞ!!ノイエフッッッ!!!」
私は弾丸走破でノイエフに向け一気に畳みかけ、そのまま奴の左腕を吹き飛ばし、高められた脚力で大きな蹴りを入れた。
「ぐふぅ・・・!!!」
横っ面を激しく蹴られたノイエフは地面を転がっていき、仰向けになって動かなくなった。
◇◇◇
「ソールよ。この勝負、奴らの勝ちみたいじゃぞ。どうやら貴様の目は、曇っていたようじゃのぅ。」
「私の見当違いだった・・・ということか・・・。」
「諦めるのはまだ早いよ、二人とも。」
会話するソールとリセの傍に、いつの間にかアクメルが立っていた。
そのことにソールは慌てなかったが、リセはドキっとした。
気配を全く感じなかったからだ。
「どういうことでしょうか?導主様。」
「リセ、君は冥王である自分の父親を殺されたからミラを憎んでいるんだよね?」
「そっ、その通りです・・・。」
「じゃあさ、もし父親が甦って“ミラに復讐するのは止めてくれ。”って言ってきたらどうする?」
「そっ、そんなこと!あるはずが・・・!!」
「あくまで仮定の話だ。君ならどうする?」
アクメルの問いに、リセは答えを出せずにいた。
「答えが出てこない。いや、復讐に迷いが生まれるって言った方が正しいか?普通だったらそうなるのは当たり前だ。だけど、ノイエフは違う。彼は決してミラへの復讐を止めないよ。たとえ、甦った仲間をもう一度殺しても・・・ね。だけどそれこそが、復讐を完遂するのに不可欠で、だけども常識の範疇だったら絶対に手に入らない代物なんだよ。」
「それは、一体なんですか?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「“不悔の精神”。何人にも臆せず、何事にも絆されず、己の復讐をやり遂げるためなら、あらゆる残酷な手段も厭わずに、徹頭徹尾憎悪の対象を殺すことにのみ集中する氷の心・・・。僕が期待しているのは、彼の深淵にあるそれなんだよ。彼は決して止まらないよ。ミラへの復讐を終わらせるまで。そしてその過程での行ないを、絶対に悔い改めはしない。」
アクメルはそう言い残して、主催者席へと戻っていった。
と、その時。
仰向けになっているノイエフの指がピクっと動いた。
一体、どういうことだ・・・?
「どういうつもりですか?まさか・・・!ノイエフ君を先に捕らえて脅したのですか!?私とファイセアを始末しなければ殺すと・・・!!」
「普通だったらそう考えるかもしれないね。だがアルーチェ、それは間違いだ。ノイエフはね、私達の仲間になりたいんだよ。これは、そのための試練。彼が僕達の仲間になって、ミラに復讐する覚悟が、一体どれくらいあるのかを問うための・・・。言っただろ?“門出に付き合ってほしい。”って。」
ノイエフが黎明の開手に入りたいと願い、奴らがその意見を汲んだことにより、このようなことになったとでもいうのか!?
「なぁノイエフ!違うよな?奴らに脅されているのだろう?確かにお前は、王国とミラ殿が手を組むことを良しとせず反乱をはたらいた。だが誰よりも私達を想っていたお前が身内殺しなど、そんな残忍なマネはできないはずだ!何とか・・・何とか言ってくれッッッ!!!」
「・・・・・・・。」
私の必死な呼びかけに、ノイエフは沈黙を以って応えた。
だがゆっくりと口を開き、こう言った。
「兄上、義姉様・・・死ね。」
その瞬間、ノイエフは凄まじい加速をつけて私達の間合いに入り、矢を弓につがえた。
「うっ・・・!!」
「ファイセアッッッ!!!」
ノイエフが矢を放った瞬間、私は神の御使いの羽衣を纏ったルーチェに抱えられ、上空にいた。
「ルーチェ!!」
「ノイエフ君、どうやら本気みたい。本当に私達を殺すつもりよ。残念だけど・・・戦うしかないわ。」
「そんな・・・!間違っている・・・。こんなの・・・狂気の沙汰だ!!身内どうしで殺し合うなんて・・・!!!」
「大丈夫よ!!私達は、ノイエフ君を殺す必要はないわ。」
「え?」
「さっき導主が言ったこと覚えている?“倒せばここから出れる。”つまり私達はノイエフ君を殺さずに、ここから出れる可能性があるってことよ。もちろん、彼も一緒に連れてね。」
「しっ、しかし・・・果たして本当に、上手くいくのか?ノイエフを殺さずに倒すなんて・・・。」
「ミラ様なら、迷わず同じ選択をするはずよ。決めたでしょ?絶対ノイエフ君を連れ戻すって・・・。だからしっかりして!!ファイセア!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ルーチェ、下ろしてくれ。」
ルーチェは私を抱えながら、ノイエフから距離を取ったところでそっと下ろした。
「分かったルーチェ。やろう!ノイエフを倒し、3人でここから脱出するぞ!!」
「ファイセア・・・!」
「ノイエフ!!遠慮なくかかって来い!!復讐への妄執に取り憑かれたお前の精神を、私達の手で叩き直してやるッッッ!!!」
私が宣言すると、ノイエフは怒りで顔を激しく震わせた。
「お前達に何が分かる・・・。ミラに全てを奪われた、この俺の気持ちがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
激昂したノイエフは、私達に向けて、今度は矢を2本同時に放ってきた。
私とルーチェは二手に分かれて奴の放った矢を回避した。
「地級第一位・円環の万矢!!」
ノイエフが右足を軸に回転すると、魔力で生成された無数の矢が私とルーチェに襲い掛かった。
天使の羽衣を着たルーチェは途轍もないスピードで走ることによって、矢を全てかわしていたが、私は徐々に目で追い切れなくなった。
「はっ・・・!」
そしてとうとう無数の矢によって射貫かれそうになった刹那、私の前に両手に剣を持った3対の翼の天使が現れて、私を守ってくれた。
「天級第三位・座天使の加護。」
どうやらルーチェが魔能で呼び出してくれたみたいだ。
「座天使、ファイセアを守って。」
「ぎぃぃ・・・!!くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
天使を呼び出されて怒り心頭になったノイエフは、歴然としているルーチェを仕留めにかかった。
だけどノイエフがどれだけ矢を放とうと、天使の羽衣を身に纏ったルーチェは悉くそれを回避してしまう。
「ノイエフ君、終わりよ。」
ノイエフの片腕をルーチェの剣が斬り飛ばそうとした瞬間、ノイエフははるか上空に向かって跳躍した。
「えっ!?」
「俺の力を見くびるなよ!!この・・・人間の面汚しどもがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
天高く跳んだノイエフは弓に矢をつがえて、弦を大きく引き絞った。
「天級第五位・爆焔の滅矢ッッッ!!!」
ノイエフが放った矢は、地面に着弾と同時に大爆発を起こした。
「はぁ~・・・!!はぁ~・・・!!これでもう、終わり・・・ッッッ!?」
地面に着地したノイエフが驚するのも無理もないだろう。
何故なら、跡形も無くなったと思っていた私とルーチェは、6対の翼を持つ巨大な天使によって守られていたのだから。
「天級第二位・不滅の熾天使。私が呼び出せる最強の天使よ。」
「ばっ、馬鹿な・・・。俺の、渾身の一撃が・・・。」
「さっきのが全力?なら、これで証明されたわね。あなたの復讐心は、私達の前では無力だってことが。」
「何・・・!?」
「私にばかり構っているせいで後ろがガラ空きよ、ノイエフ君。」
ノイエフは咄嗟に後ろを振り返ったが、もう遅かった。
「獲ったぞ!!ノイエフッッッ!!!」
私は弾丸走破でノイエフに向け一気に畳みかけ、そのまま奴の左腕を吹き飛ばし、高められた脚力で大きな蹴りを入れた。
「ぐふぅ・・・!!!」
横っ面を激しく蹴られたノイエフは地面を転がっていき、仰向けになって動かなくなった。
◇◇◇
「ソールよ。この勝負、奴らの勝ちみたいじゃぞ。どうやら貴様の目は、曇っていたようじゃのぅ。」
「私の見当違いだった・・・ということか・・・。」
「諦めるのはまだ早いよ、二人とも。」
会話するソールとリセの傍に、いつの間にかアクメルが立っていた。
そのことにソールは慌てなかったが、リセはドキっとした。
気配を全く感じなかったからだ。
「どういうことでしょうか?導主様。」
「リセ、君は冥王である自分の父親を殺されたからミラを憎んでいるんだよね?」
「そっ、その通りです・・・。」
「じゃあさ、もし父親が甦って“ミラに復讐するのは止めてくれ。”って言ってきたらどうする?」
「そっ、そんなこと!あるはずが・・・!!」
「あくまで仮定の話だ。君ならどうする?」
アクメルの問いに、リセは答えを出せずにいた。
「答えが出てこない。いや、復讐に迷いが生まれるって言った方が正しいか?普通だったらそうなるのは当たり前だ。だけど、ノイエフは違う。彼は決してミラへの復讐を止めないよ。たとえ、甦った仲間をもう一度殺しても・・・ね。だけどそれこそが、復讐を完遂するのに不可欠で、だけども常識の範疇だったら絶対に手に入らない代物なんだよ。」
「それは、一体なんですか?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「“不悔の精神”。何人にも臆せず、何事にも絆されず、己の復讐をやり遂げるためなら、あらゆる残酷な手段も厭わずに、徹頭徹尾憎悪の対象を殺すことにのみ集中する氷の心・・・。僕が期待しているのは、彼の深淵にあるそれなんだよ。彼は決して止まらないよ。ミラへの復讐を終わらせるまで。そしてその過程での行ないを、絶対に悔い改めはしない。」
アクメルはそう言い残して、主催者席へと戻っていった。
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