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第五章 : 救世主と英雄
メルフ陸海戦④
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道を歩いていると、一人の男の子が他の子達に囲まれながら突き飛ばされているのが見えた。
いわゆる、イジメってやつだ。
私はその瞬間、「早く助けなきゃ!!」と思って走り出したが、イジメられている男の子の顔を見た途端に、「またか・・・。」と少しウンザリした気持ちになった。
何故ならその子は・・・私の家の近所に住んでいる、変わっている子として有名だったからだ。
男の子なのに女の子の格好なんかしてるから、そんな評判をされても当たり前といえば、当たり前だった。
そして案の定、そこを突かれて他の男の子からイジメの標的になった。
一体何回あの子のことを助けたことか・・・。
正直なところ、その格好を止めるようにいくら忠告しても止めないその子の聞き分けのなさに、飽き飽きしていた。
だけどここで助けないと、あの子が可哀相すぎる。
だってその子が女の子の格好をするのには、のっぴきならない理由があったからだ。
私はやれやれと思いながらも、いつものようにその子を助けることにした。
「男のクセして女の服なんか着やがって!!」
「気持ち悪いんだよお前!!」
「うっ・・・!止めて・・・。」
「コラぁ~!!あなた達!またヒューちゃんイジメてるわねぇ~!!」
私の顔を見た瞬間、ヒューちゃんをイジメていた男の子達の顔がギョッとなった。
「げっ・・・!ソニアだ!!」
「行こうぜ!アイツの魔能のせいでまた痛い目遭う前に・・・!!」
男の子達は、蜘蛛の子を散らすかのように、ヒューちゃんの傍を離れていった。
「ヒューちゃん大丈夫?」
うずくまって泣きじゃくるヒューちゃんに、私は優しく声をかけた。
「ヒグッ・・・グスッ・・・とう・・・。」
「え?なに?」
「あり、がとう・・・。ニア・・・。」
目を真っ赤にさせて、涙でぐしょぐしょになった顔を精一杯上げながらヒューちゃんは私にお礼を言ってきた。
「気にしないで。いつものことだもん。ほら、立って。」
私はヒューちゃんに手を差し伸べて、泣いている彼をゆっくり立たせた。
「ホント・・・ゴメンね。僕のせいで、いつも・・・迷惑かけて・・・。」
私に手を引かれてトボトボ歩きながら、ヒューちゃんは私に謝ってきた。
「悪いと思ってるなら、いい加減その格好止めればいいのに・・・。」
「ヤダよぅ・・・。ニアだって、知ってるでしょ?僕が女の子の服を着る理由・・・。」
「そうだったね。確か・・・死んじゃった家族に“軍に入隊されにくいように。”って女の子として育てられてたんだっけ・・・。」
「うん・・・。だけどみんな、女の子の服を着た僕のこと、“可愛い”ってすごく褒めてくれたんだよ?僕がこの格好するの、止めちゃったら・・・パパもママも、お姉ちゃんも悲しんじゃうよ・・・。だからどんなにイジメられたって、僕はこの格好、止めたくない・・・。」
口をもごもごしながらも、ヒューちゃんは固い意志を私に伝えてきた。
ヒューちゃんが女の子の格好をするのは、もういない家族との絆を感じたいからだ。
だから私がどれだけ口を挟もうとも、結局ムダなんだ。
「ヒューちゃんがそこまで言うなら、私はもう何も言わない。それに・・・。」
「それに?」
「確かに可愛いもんね。その格好のヒューちゃん。」
私が茶化すと、ヒューちゃんは顔を赤くしながら俯いた。
まるで、「そんなこと言うなよ。」って思ってるかのように。
「でも参ったなぁ~。ヒューちゃんがそんなんだったら、私・・・いつも助けなきゃいけないよ。」
「できたら・・・そうして、くれる?ニア、すごく、頼りになるから・・・。」
「ッッッ!」
全く、もう・・・。
「しょうがないな。いいよ。これからも、どんどん私を頼りにしてね!」
「ありがと・・・。」
「ところでさ、今日のことおじさんに言うの?」
「だっ、ダメだよ!!僕よりおっかない目に遭っちゃうよ!!」
ヒューちゃんの今の親、執将でこの街の責任者だからちょっとは相談してもバチは当たらないと思うけど。
本当優しいんだから・・・。
「分かった。言わない。だけどさ、今日久しぶりにヒューちゃん家でご飯食べていい?」
「いいよ!ニアが来てくれると、おじさんも喜ぶし!」
「ありがとう。」
手を繋ぎながら、私達はヒューちゃんの家を目指して歩き続けた。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「・・・様。執将様!!」
ッッッ!!!
「何ですかオースト?」
「伝令です。“ミラ様が敵を引き付けている間に、発進せよ。”と。」
「分かりました。上陸後すぐに戦闘態勢に入れるように、準備するように伝えて下さい。」
「了解しました!!」
オーストが船室を後にすると、私は深くため息を吐いた。
「どうしてこんな時に思い出すのかしらね?あんな昔のこと・・・。」
いわゆる、イジメってやつだ。
私はその瞬間、「早く助けなきゃ!!」と思って走り出したが、イジメられている男の子の顔を見た途端に、「またか・・・。」と少しウンザリした気持ちになった。
何故ならその子は・・・私の家の近所に住んでいる、変わっている子として有名だったからだ。
男の子なのに女の子の格好なんかしてるから、そんな評判をされても当たり前といえば、当たり前だった。
そして案の定、そこを突かれて他の男の子からイジメの標的になった。
一体何回あの子のことを助けたことか・・・。
正直なところ、その格好を止めるようにいくら忠告しても止めないその子の聞き分けのなさに、飽き飽きしていた。
だけどここで助けないと、あの子が可哀相すぎる。
だってその子が女の子の格好をするのには、のっぴきならない理由があったからだ。
私はやれやれと思いながらも、いつものようにその子を助けることにした。
「男のクセして女の服なんか着やがって!!」
「気持ち悪いんだよお前!!」
「うっ・・・!止めて・・・。」
「コラぁ~!!あなた達!またヒューちゃんイジメてるわねぇ~!!」
私の顔を見た瞬間、ヒューちゃんをイジメていた男の子達の顔がギョッとなった。
「げっ・・・!ソニアだ!!」
「行こうぜ!アイツの魔能のせいでまた痛い目遭う前に・・・!!」
男の子達は、蜘蛛の子を散らすかのように、ヒューちゃんの傍を離れていった。
「ヒューちゃん大丈夫?」
うずくまって泣きじゃくるヒューちゃんに、私は優しく声をかけた。
「ヒグッ・・・グスッ・・・とう・・・。」
「え?なに?」
「あり、がとう・・・。ニア・・・。」
目を真っ赤にさせて、涙でぐしょぐしょになった顔を精一杯上げながらヒューちゃんは私にお礼を言ってきた。
「気にしないで。いつものことだもん。ほら、立って。」
私はヒューちゃんに手を差し伸べて、泣いている彼をゆっくり立たせた。
「ホント・・・ゴメンね。僕のせいで、いつも・・・迷惑かけて・・・。」
私に手を引かれてトボトボ歩きながら、ヒューちゃんは私に謝ってきた。
「悪いと思ってるなら、いい加減その格好止めればいいのに・・・。」
「ヤダよぅ・・・。ニアだって、知ってるでしょ?僕が女の子の服を着る理由・・・。」
「そうだったね。確か・・・死んじゃった家族に“軍に入隊されにくいように。”って女の子として育てられてたんだっけ・・・。」
「うん・・・。だけどみんな、女の子の服を着た僕のこと、“可愛い”ってすごく褒めてくれたんだよ?僕がこの格好するの、止めちゃったら・・・パパもママも、お姉ちゃんも悲しんじゃうよ・・・。だからどんなにイジメられたって、僕はこの格好、止めたくない・・・。」
口をもごもごしながらも、ヒューちゃんは固い意志を私に伝えてきた。
ヒューちゃんが女の子の格好をするのは、もういない家族との絆を感じたいからだ。
だから私がどれだけ口を挟もうとも、結局ムダなんだ。
「ヒューちゃんがそこまで言うなら、私はもう何も言わない。それに・・・。」
「それに?」
「確かに可愛いもんね。その格好のヒューちゃん。」
私が茶化すと、ヒューちゃんは顔を赤くしながら俯いた。
まるで、「そんなこと言うなよ。」って思ってるかのように。
「でも参ったなぁ~。ヒューちゃんがそんなんだったら、私・・・いつも助けなきゃいけないよ。」
「できたら・・・そうして、くれる?ニア、すごく、頼りになるから・・・。」
「ッッッ!」
全く、もう・・・。
「しょうがないな。いいよ。これからも、どんどん私を頼りにしてね!」
「ありがと・・・。」
「ところでさ、今日のことおじさんに言うの?」
「だっ、ダメだよ!!僕よりおっかない目に遭っちゃうよ!!」
ヒューちゃんの今の親、執将でこの街の責任者だからちょっとは相談してもバチは当たらないと思うけど。
本当優しいんだから・・・。
「分かった。言わない。だけどさ、今日久しぶりにヒューちゃん家でご飯食べていい?」
「いいよ!ニアが来てくれると、おじさんも喜ぶし!」
「ありがとう。」
手を繋ぎながら、私達はヒューちゃんの家を目指して歩き続けた。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「・・・様。執将様!!」
ッッッ!!!
「何ですかオースト?」
「伝令です。“ミラ様が敵を引き付けている間に、発進せよ。”と。」
「分かりました。上陸後すぐに戦闘態勢に入れるように、準備するように伝えて下さい。」
「了解しました!!」
オーストが船室を後にすると、私は深くため息を吐いた。
「どうしてこんな時に思い出すのかしらね?あんな昔のこと・・・。」
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