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第五章 : 救世主と英雄

メルフ陸海戦②

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「む・・・!?」

出航から2、30分が経った時、前方に一個の島が見えた。

あれが敵の本部が置いてある“メルフ砦島”だなぁ~。

「艦隊長さん!!島が・・・!!」

「分かっております!!全艦、大笛を鳴らせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

艦隊長さんが命令を出すと、全ての戦艦に付いてる大きな笛から『ボォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』と大きな音が鳴り響いた。

ついさっき聞いた話だけど、本来これは敵への警告用に使われるらしい。

だけど、今回に限っては使う目的が違う。

これは、アピールのため。

向こうにに対して、“島を落としに来たぞ!!止めれるモンならやってみろ!!”とあたし達の存在を大げさに知らせるのが目的。

そうすれば、敵の目がこっちに一点集中して、ソニアさん達が島に入りやすくなる。

案の定、島を巡回していた敵の戦艦が一斉にこっちに向かってきた。

どうやら、まんまとあたし達エサに食いついてくれたようだ。

「投石器用意!!」

船の武装である4つの投石器に岩が装填されていく。

前2つが近距離用で、残り後ろが遠距離用だ。

「放てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

投石器から岩が発射された。

何発かは敵の船の帆に命中して動きを奪ったが、半分以上が外れて海に落下していった。

「艦隊長!!敵艦から投石!!」

上空を見上げると、敵が撃った岩の弾が剛速球で向かってきた。

「全艦退避行動を・・・!!」

「いや!!大丈夫です!!任せて!!」

あたしは船首に立って、向かってくる岩弾に手をかざした。

消失ヴァニシング全範囲オールレンジッッッ!!!」

敵の岩弾は、あたし達に直撃する前に全部パッと消えた。

「おお!!お見事ですミラ様!!」

「こんなの大したことないですよ!!それで、次はどうします!?」

「敵側の旗艦に突撃します!!取り舵いっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」

あたし達の船はグッと左側に舵を切って、敵旗艦の側面に回り込んだ。

「総員、激突および戦闘準備ッッッ!!!」

衝撃に備えて、あたし達は近くの物にしっかり捕まりながら、それぞれ武器を用意した。

血操師ブラッド・スター不殺剣錬成キルレス・ブレードクリエイト!」

次の瞬間、あたし達の船は敵の船の右わき腹に激突して、『ドォン!!』と激しい轟音がした。

「総員突撃ッッッ!!!」

武器を持ったあたし達は敵の船に流れ込んでそのまま戦闘になった。

「いいか!?絶対に殺すな!!槍で殴るか海に落とすかで無力化しろぉ!!!」

「「「おおッッッ!!!」」」

艦隊長さんが飛ばした檄に、味方達は熱気がいっぱいな返事を返した。

彼等の勢いに負けじと、あたしも全力で戦って敵を殺さず、倒していった。

「なっ、何だコイツ等!?吸血鬼が指揮ってるぞ!!」

「オマケにこの吸血鬼・・・バカ強いじゃねぇか!!」

全くの想定外な吸血鬼あたしという存在に、敵はひどく混乱していた。

「構うな!!押し戻せぇ!!!」

向こうの指揮官に命令されて、敵は攻撃の勢いを増してきた。

そんな彼等の前に、遅れて乗り込んだヒューゴ君が立ちはだかった。

全意暗転オールセンス・ブラックアウト広範囲スキャッター。」

ヒューゴ君の魔能をまともに受けて、敵のみんなは五感を一時的に失って、立ったまま気絶した。

「制圧完了です。この船が沈む前に急いで連行して下さい。」

「ヒューゴ様・・・。助けて頂きありがとうございます!!おかげで双方ともに死傷者を出さず、敵の旗艦を制圧できました!!」

「喜ぶのは、どうやらまだ早いようですよ。」

ハッと向こうを見ると、最初に遭遇した数の明らかに倍は行ってる戦艦が島の方から押し寄せてきた。

「騒ぎを聞きつけた増援でしょう。」

「クソ!!まだこちらも全ての敵艦を制圧できてないのに・・・!!」

迫り来る敵の増援に、ローマン公国の人達はすごく心苦しい顔をした。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「あたしが何とかします!」

「ミラ様!?」

「あたしがアイツ等の相手をしている内に皆さんは残ってる敵の制圧に。それと、あたしが足止めを開始したら、最後尾で待機してるソニアさんに出るように伝えて下さい!ヒューゴ君、皆さんの支援・・・頼んだよ!」

「ミラ様・・・承知いたしました。」

「ありがと!じゃあ行ってくる!!」

「ミラ様!!あの数の艦隊をたったお一人で・・・無謀過ぎますッッッ!!!」

「あたしなら大丈夫です。アイツ等に見せてきます。“救血の乙女のコワさ”ってヤツを!!」

笑顔でそう言うと、あたしは海に飛び込んで、弾丸走破バレット・フィートで海面を走った。

「行きましょう。」

「ヒューゴ様!?よろしいのですか!?」

「あの方なら大丈夫です。だって・・・吸血鬼わたしたちの救世主なのですから。」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

海面をバシャバシャと走ってると、なんだかだんだん笑けてきた。

多分・・・になってきてるんだと思う。

「異世界初の海じゃ!!思う存分、楽しませてもらうよッッッ!!!」
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