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第五章 : 救世主と英雄
勝利をこの手に
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翌朝。
あたし達は宮殿の玄関に集まって、今日の戦いの最終チェックをすることになった。
「全員揃いましたね?ではこれより、本日の作戦の最終確認を行います。」
ヒューゴ君の言葉に全員が頷いた。
「大公様とアウヴァ様は、北部で地上部隊の指揮にあたって下さい。もちろん、なるべく目立つようにです。」
「分かった!」
「そして、陛下達が陽動している間に、ミラ様と私が艦隊を率いて、メルフ砦島を巡回する敵の艦隊と交戦。その隙に、ソニア様率いる東方吸血鬼軍100名の兵士が島に潜り込み、ほぼ無人となった敵の指揮系統を無効化・・・よろしいですね?」
「うん!!その方向で!」
「私達も、確認しました。」
素っ気なく返事するソニアさんに気まずさを感じたのか、ヒューゴ君はパッと視線を逸らした。
「皆!!我々が敵の目を逸らしている間に、どうか作戦を成功させてくれ!!この国の内戦終結は、皆の働きにかかっている・・・!!」
「もちろんです!!大公様こそ、どうか死なないで下さいね。この国には、まだまだあなたが必要なんですから!」
「ミラ・・・。多大な心遣い感謝する!!やはり君は、私の15番目の妻に相応し・・・」
「その話ならとっくに“いいえ”って決まってますよ♪」
あたしが笑顔で言うと、大公様はひどくガックリした顔をした。
全く。
どこまでも諦めが悪い人なんだから。
「そいじゃリリー!大公様のこと、くれぐれも頼んだよ!?」
「お任せ下さい!!このふしだらな男には、敵の剣の切っ先一つ掠めさせやしませんよ!!」
大事にしてるのかけなしてるのか分からん意思表明だな・・・。
「ではこれで、作戦の最終確認を終了します。皆様!それぞれの持ち場へ。」
ヒューゴ君の号令で、あたし達はそれぞれのチームに分かれた。
◇◇◇
「ミラ様!!お待ちしておりました!」
イスラドの港に行くと、マント付きの鎧に身を包んだ男の人が出迎えてくれた。
「自分はこの艦隊の指揮を任されている者です。陛下よりお話は賜っております!本作戦の間、我々が全力でミラ様方をお支えいたします!!」
「こっ、これはご丁寧にどうも!!こちらこそ、今日はよろしくお願いします!!」
「ではこちらへ!もう既に出航の準備は整っておりますので!!」
そう言われてあたし達は、戦艦が停泊しているところまで案内された。
ローマン公国の戦艦は手漕ぎ式で・・・“ガレー船”って言うのかな?
それに近い形状をしていた。
定員はざっと500人くらい。
武装は投石器とバリスタ、そして船首の下辺りに敵の船の底に穴を開けるためと思われる大きな槍が付いていた。
「ソニア様がお乗りになる船はこちらです。」
ソニアさん達、東方吸血鬼軍のみんなに用意されたのは、言うまでもなく小振りな船。
武装もほとんど付いてなくて、明らかに『上陸用』と見て取れるものだった。
「では私達はひとまずこれで・・・。オースト、乗船しますよ。」
「了解しました。」
ソニアさんの指示の下、東方吸血鬼軍のみんなは船に乗り込んでいった。
「ニア!!」
ヒューゴ君がソニアさんを呼び止めた。
敬称ではなく、あだ名で・・・。
「何ですか?ヒューゴ様。」
それに対して、ソニアさんは冷淡に敬称で応えた。
「くれぐれも・・・無茶だけはしないでくれ!!君、昔からそういうところ、あるから・・・。君のことを蔑ろにしておいてこんなこと言うのはどうかと思うけど言わせてくれ。命の危機を感じたら、僕やミラ様のことを頼ってほしい。僕達は、必ず駆け付けるから。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
切実に話すヒューゴ君に返事を返さず、ソニアさんは船に乗り込んだ。
「ニア・・・。」
途方に暮れるヒューゴ君の肩に、あたしは優しく手を置いた。
「ソニアさんがピンチになったら、絶対行ってあげよ?たとえヒューゴ君が行けなかったとしても、あたしがソニアさんを、助けてみせるから・・・。」
「ミラ様・・・ありがとうございます。」
畏まってお辞儀するヒューゴ君の頭を、あたしはクシャクシャと撫でまわした。
「よし!!あたし達もそろそろ、行くとしますかぁ~!!」
「はい!!」
互いに決意を固め合って、あたし達は船に乗り込んだ。
「全艦・・・出航ッッッ!!!」
指揮官さんの号令で、この船も含めて待機していた戦艦が一斉に出航した。
中々に揺れが激しかったけど、あたしは船の手すりにしがみついて何とか耐えていた。
(ミラお姉様!!)
「リリー!どした!?」
(地上部隊、会敵しました!!これから戦闘を開始しますッッッ!!!)
「了解!!こっちも今、港出たとこ!!張り切っていくよぉ~!!」
(はいッッッ!!!)
リリーとの通信を終えて、あたしは水平線を真っ直ぐ見た。
必ず・・・この戦いで勝利を取ってみせる!!
ローマン公国でずっと続いた内戦に、決着を着けるために・・・!!!
◇◇◇
「ヴァシレアス様。」
「何だ?」
「地上の軍から伝令です。どうやら戦場に、大公が姿を現していると・・・。」
「何だと!?」
予想外の報告に驚愕したローマン公国摂政だったが、すぐにニヤリと笑った。
「臆病者めが。ようやく巣穴から出てきおったか・・・。船に残ってる控えの兵も投入しろ!!これはまたとない千載一遇の機会ぞッッッ!!!」
「ははっ!!」
指揮を出した後、摂政は自分の席に悠々と座った。
「殿下、いよいよ・・・ですね。」
「ああ。我が国で長きに渡って続いた不毛な内輪揉めに、やっと終止符を打つことが出来る・・・。必ず勝利してやるぞ!!我が国が・・・かの大国、アドニサカ魔政国と手を結ぶためにッッッ!!!」
あたし達は宮殿の玄関に集まって、今日の戦いの最終チェックをすることになった。
「全員揃いましたね?ではこれより、本日の作戦の最終確認を行います。」
ヒューゴ君の言葉に全員が頷いた。
「大公様とアウヴァ様は、北部で地上部隊の指揮にあたって下さい。もちろん、なるべく目立つようにです。」
「分かった!」
「そして、陛下達が陽動している間に、ミラ様と私が艦隊を率いて、メルフ砦島を巡回する敵の艦隊と交戦。その隙に、ソニア様率いる東方吸血鬼軍100名の兵士が島に潜り込み、ほぼ無人となった敵の指揮系統を無効化・・・よろしいですね?」
「うん!!その方向で!」
「私達も、確認しました。」
素っ気なく返事するソニアさんに気まずさを感じたのか、ヒューゴ君はパッと視線を逸らした。
「皆!!我々が敵の目を逸らしている間に、どうか作戦を成功させてくれ!!この国の内戦終結は、皆の働きにかかっている・・・!!」
「もちろんです!!大公様こそ、どうか死なないで下さいね。この国には、まだまだあなたが必要なんですから!」
「ミラ・・・。多大な心遣い感謝する!!やはり君は、私の15番目の妻に相応し・・・」
「その話ならとっくに“いいえ”って決まってますよ♪」
あたしが笑顔で言うと、大公様はひどくガックリした顔をした。
全く。
どこまでも諦めが悪い人なんだから。
「そいじゃリリー!大公様のこと、くれぐれも頼んだよ!?」
「お任せ下さい!!このふしだらな男には、敵の剣の切っ先一つ掠めさせやしませんよ!!」
大事にしてるのかけなしてるのか分からん意思表明だな・・・。
「ではこれで、作戦の最終確認を終了します。皆様!それぞれの持ち場へ。」
ヒューゴ君の号令で、あたし達はそれぞれのチームに分かれた。
◇◇◇
「ミラ様!!お待ちしておりました!」
イスラドの港に行くと、マント付きの鎧に身を包んだ男の人が出迎えてくれた。
「自分はこの艦隊の指揮を任されている者です。陛下よりお話は賜っております!本作戦の間、我々が全力でミラ様方をお支えいたします!!」
「こっ、これはご丁寧にどうも!!こちらこそ、今日はよろしくお願いします!!」
「ではこちらへ!もう既に出航の準備は整っておりますので!!」
そう言われてあたし達は、戦艦が停泊しているところまで案内された。
ローマン公国の戦艦は手漕ぎ式で・・・“ガレー船”って言うのかな?
それに近い形状をしていた。
定員はざっと500人くらい。
武装は投石器とバリスタ、そして船首の下辺りに敵の船の底に穴を開けるためと思われる大きな槍が付いていた。
「ソニア様がお乗りになる船はこちらです。」
ソニアさん達、東方吸血鬼軍のみんなに用意されたのは、言うまでもなく小振りな船。
武装もほとんど付いてなくて、明らかに『上陸用』と見て取れるものだった。
「では私達はひとまずこれで・・・。オースト、乗船しますよ。」
「了解しました。」
ソニアさんの指示の下、東方吸血鬼軍のみんなは船に乗り込んでいった。
「ニア!!」
ヒューゴ君がソニアさんを呼び止めた。
敬称ではなく、あだ名で・・・。
「何ですか?ヒューゴ様。」
それに対して、ソニアさんは冷淡に敬称で応えた。
「くれぐれも・・・無茶だけはしないでくれ!!君、昔からそういうところ、あるから・・・。君のことを蔑ろにしておいてこんなこと言うのはどうかと思うけど言わせてくれ。命の危機を感じたら、僕やミラ様のことを頼ってほしい。僕達は、必ず駆け付けるから。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
切実に話すヒューゴ君に返事を返さず、ソニアさんは船に乗り込んだ。
「ニア・・・。」
途方に暮れるヒューゴ君の肩に、あたしは優しく手を置いた。
「ソニアさんがピンチになったら、絶対行ってあげよ?たとえヒューゴ君が行けなかったとしても、あたしがソニアさんを、助けてみせるから・・・。」
「ミラ様・・・ありがとうございます。」
畏まってお辞儀するヒューゴ君の頭を、あたしはクシャクシャと撫でまわした。
「よし!!あたし達もそろそろ、行くとしますかぁ~!!」
「はい!!」
互いに決意を固め合って、あたし達は船に乗り込んだ。
「全艦・・・出航ッッッ!!!」
指揮官さんの号令で、この船も含めて待機していた戦艦が一斉に出航した。
中々に揺れが激しかったけど、あたしは船の手すりにしがみついて何とか耐えていた。
(ミラお姉様!!)
「リリー!どした!?」
(地上部隊、会敵しました!!これから戦闘を開始しますッッッ!!!)
「了解!!こっちも今、港出たとこ!!張り切っていくよぉ~!!」
(はいッッッ!!!)
リリーとの通信を終えて、あたしは水平線を真っ直ぐ見た。
必ず・・・この戦いで勝利を取ってみせる!!
ローマン公国でずっと続いた内戦に、決着を着けるために・・・!!!
◇◇◇
「ヴァシレアス様。」
「何だ?」
「地上の軍から伝令です。どうやら戦場に、大公が姿を現していると・・・。」
「何だと!?」
予想外の報告に驚愕したローマン公国摂政だったが、すぐにニヤリと笑った。
「臆病者めが。ようやく巣穴から出てきおったか・・・。船に残ってる控えの兵も投入しろ!!これはまたとない千載一遇の機会ぞッッッ!!!」
「ははっ!!」
指揮を出した後、摂政は自分の席に悠々と座った。
「殿下、いよいよ・・・ですね。」
「ああ。我が国で長きに渡って続いた不毛な内輪揉めに、やっと終止符を打つことが出来る・・・。必ず勝利してやるぞ!!我が国が・・・かの大国、アドニサカ魔政国と手を結ぶためにッッッ!!!」
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