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第五章 : 救世主と英雄

夏はダメだよ

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夏。

それはこの世界に生きてる命の数々が一番元気に過ごして、とっても活気のある季節なんじゃないかなって思ってる。

樹々は青々と生い茂り、至るところでセミが鳴いて、夜になるとカブトムシやクワガタ、ホタルが出て来て、男の子をワクワクさせたり、デート中のカップルをウットリさせたりする。

実を言うとね?あたしが子どもの頃なんかはぁ~田舎にある親の実家に帰省すれば、従兄弟の男の子達に混じって昼夜虫取りで森を走り回ったり、地元にあるホタルの名所に親戚一同で出かけたりして、そりゃ~もう夏の思い出をいっぱい作ったものですよ!!

だからあたしにとって“夏”ってのは、思い入れのある季節だったりするもんですよ!

そりゃ~そうでしょう!!

森には虫。

海には魚やキレイな貝。

色んな場所に生き物がいっぱいいて、退屈なんかしないんだから。

でもね?

そんなあたしにも、“夏”ってモノに一つだけ納得いかないことがあるワケですよ!

“何か?”って。

そりゃ~もちろん・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「あっつううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううういいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

何で!?

何で夏ってこんなに暑くなんの!?

しかもよ!?

ただ暑いんだけなんだったら百歩譲って許せる!!

何でそこにジメジメが追加されてくんの!?

マジでイミフなんだけど!!

「今・・・何度?」

あたしは部屋の隅っこに置いてある温度計と湿度計を手に取った。

「何じゃいコレ!?温度34℃、湿度67%!?」

こんなに暑くなんのベリグルズ平野ここ!?

こりゃいよいよクーラーが欲しくなってきたな・・・。

いや、クーラーなモノはあるっちゃあるんだけどね?

ピピッ!

「はぁ~い・・・。もしも~し・・・。」

(ミラ様、少し気温が上がったように感じるのですが・・・。)

「ゴメン、グレースちゃん・・・。ちょっとバテて集中力切れてたわ。今立て直すから待って・・・。」

グレースちゃんとの通信を切ると、あたしはベッドの上であぐらをかいて、両腕を広げて集中した。

「えっ~と・・・。ちょっとは下がったかな?」

温度計と湿度計を見てみると、気温が26℃、湿度が41%まで下がった。

「良かったぁ~。これで向こうは過ごしやすくなったっしょ?」

天級ヘヴン第四位魔能・冷吹の領域コールドウィンド・フィールド

冷気が発生している結界を作る魔能。

範囲、結界内の温度ともに自由に設定可能だから、あたしの領土にいる人達は真夏にも関わらず暑くなく、それでいて寒すぎない環境の中で生活を送ることができている。

ただ、この魔能には一つだけ欠陥があった。

それは、であるということ・・・。

つまり、みんなが涼んでる間に肝心のあたしは灼熱地獄に晒されている。

あ~あ!!

この魔能を見つけた時は、“これで猛暑とはグッバイできるぞぉ~!!”って舞い上がってたのになぁ~!!

まさかこんな盲点があるなんてよ!!

いやいい!!

いいんだよあたしは!!

領主であるあたしが我が身を投げ打って、そのおかげでみんなが快適なサマーライフを送れるんだったらとっても満足してるよ!!ウン!

だけど・・・だけど・・・!

「頼むからあたしも快適空間に入れてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

はぁ・・・!

はぁ・・・!

いかんいかん。

イライラしてたらまた集中力が切れて誰かから苦情を言われる。

あんまり興奮しないようにしなければ・・・。

ふとあたしは、首を手でなぞって、自分が汗でぐっしょりであることに気付いた。

うぇ~めちゃくちゃ汗かいてるじゃ~ん!

こんなんじゃ常に身体ベトベトのまんまだよ~・・・。

そういえば、親戚の都合が合わなくなった時は、よく家族で海沿いの温泉地に旅行行ってたっけ。

アルスワルドここにはないのかなそういうの?

“海がめっちゃ近くにあって、それを見ながら温泉に入れる場所”ってのは。

地図を見る限りじゃ、一応東の方に海あんだけど、さすがにそんな都合のいいところなんかないかぁ・・・。

「あ~あ!!温泉行きた~い!!!」

と言いながらベッドに横になった途端、今度はヒューゴ君から通信が入った。

(もしもしミラ様。)

「あっゴメン!また気温上がっちゃった?すぐ立て直すから!」

(いえ、そうではなくて・・・。)

「あっそう・・・。どったの?」

(東方吸血鬼軍の方から使いの者が来て、ミラ様にお目通りしたいと。)

「え?うん・・・分かった。とりあえず応接室で待ってるからお連れして。」

(了解しました。)

またなんかの相談かな?

急ぎの用事かもしれないから早く行こっ。

ベッドから起き上がったあたしが、自分がついさっきまでゴロ寝してたトコをさすってため息を吐いた。

「ちょっと横になっただけで寝汗でベットベトじゃん・・・。」
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