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第四章 : 朽蝕の救済

ヴェル・ハルド王国滅亡③

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王都守衛隊の本部を潰してから、あたしは生存者を求めてトボトボと王都を歩き回った。

中央通り、市場、住宅街・・・。

ところが行けども行けども人の姿は全くなく、目にするのは住人の成れの果ての朽鬼きゅうきばかり・・・。

そういえばレオルさん言ってたっけ。

“街の至るところでウィルス入りの煙玉が爆発した”って・・・。

きっと、みんなあっという間に朽鬼になっちゃったんだろうなぁ・・・。

生存者は、もちろん絶望的、か・・・。

ほとんど諦めながら王都を探索する内に、気が付けば夕方になっていた。

夕陽に染まる街と、そこを呻き声を出しながら彷徨う朽鬼は、不気味さを持っていながらどこかノスタルジックを感じさせる光景だった。

ああ・・・。

これが、ってヤツか・・・。

なんてことを呑気に考えてると、とある家が目に留まった。

ドアは破られてない。

住んでる人はおそらく外出中だったのだろう。

いや、でももしかしたら・・・。

未だに楽観的な考えを持ってる自分に呆れながらも、あたしは魔能で鍵を開けて家の中に入った。

玄関のすぐ前は階段になっていて、その下には収納スペースがあった。

「まさかな・・・。」

ありそうもない奇跡をイメージしながら、あたしは階段下の収納スペースを開けた。

「え・・・?」

収納スペースを開けてみると、ロウソク一本に火を灯して、抱き合いながらブルブル震えてる女性と男の子の親子がいた。

「あっ、あなたは・・・?」

鍵を開けて家に入ってきたあたしに、母親は目をパチクリさせた。

「あっ、ああっ・・・!良かった・・・。本当に、良かった・・・!!」

ついに生存者を見つけたことに、あたしは感情を抑えることができず、ポロポロと涙を流して泣き崩れた。

「だっ、大丈夫ですか?」

「ええ・・・。すいません。いきなり泣き出したりして。二人とも、噛まれてはいませんね?」

「はっ、はい。噛まれてないです。」

母親が答えると男の子も戸惑いながらもコクっと頷いた。

「分かりました。もう大丈夫ですよ。今この家に守りをかけますから、そこでじっとしていて下さい。」

あたしはこの家に、防壁魔能をかけるため、一旦外に出た。

よし。

何とか無傷の人を見つけることができた。

後できちんと助けるために、とりあえずは守りを・・・。

と思ってたその時、どこからかフードを被った怪しい奴らが現れて、あたしを無視して家の中に押し入った。

「えっ、ちょっ・・・!?何なのアンタ等!?」

「落ち着いて下さい。から。」

すぐ済むって、一体何が・・・!?

「やっ、止めて!!子どもには手を出さないで!!」

「ママ!!」

家に押し入った奴らが親子を家から引きずりだした。

「その人らに何する気なの!?」

「彼等にはもらいます。おい!注注射器は!?」

「すいません!一本しか残ってません!」

「仕方ないな。どちらか一方に打て!」

指示された男は、懐から一本の赤い液体が入った注射器を取り出して、それを母親の首筋に打った。

「いっ、一体、何する・・・うっ!?ぐぼぁ・・・!!」

母親は、一気に全身から出血してバタッと倒れた。

「ママ!?」

「ッッッ!!!ダメ!!お母さんから離れてッッッ!!!」

「え?」

「グゥゥ・・・!」

「ママ・・・?」

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

「あっ・・・!!痛い!!やめっ・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

変わり果てた母親は、抵抗する息子の首筋に噛み付いて、血を貪り続けた。

「なっ、何てことを・・・!!」

恐ろしい光景に目を背けようとした瞬間、奴らがフードをめくって、輪になってあたしに深々と一礼していることに気付いた。

「お会いできて光栄でございます!!救血の乙女様!!」

「は・・・?」

「まだ朽鬼御使いに生まれ変われてない者を見つけ出して頂けるとは・・・。至らぬ我々の尻拭いをさせるような真似をさせ、大変申し訳ございません。」

使



まさかコイツ等・・・吸血鬼救済会!!

「やっぱり・・・アンタ等がコレ、やったんだ・・・。」

「はい!吸血鬼に、よりよい世界をお与えするために!ご満足頂けました・・・ぐほぉ!?」

あたしは御大層な挨拶する奴の首を掴み、そのまま上に上げた。

「きゅっ、救血の・・・乙女・・・様・・・!!なっ、何を・・・!?」

「フィアナちゃんどこ?」

「は・・・?」

「この地獄作ったオタクらの代表のフィアナ=トルガレドは何処だって聞いてんだよッッッ!!!」

あまりにも鬼気迫るあたしに恐れをなして、その場にいた全員が口をつぐんだ。

「誰でもいいから早く言えよ。コイツの首、折るぞ?」

あたしの言ってることが脅しではないことを察して、首根っこを掴まれたソイツはか細い声で何とか答えた。

「おっ、王宮・・・。」

「案内しろ。いいな?」




◇◇◇




吸血鬼救済会の連中に案内されて、あたしは王宮の、フィアナちゃんがいる場所まで案内された。

王宮内にも朽鬼がたくさんいたけど、吸血鬼救済会の人達と思しき人達は、吸血鬼と同じように朽鬼には見向きもされなかった。

多分何らかの対策を講じたんだろう。

「こちらになります・・・。」

あたしが案内されたのは、王の間だった。

もしフィアナちゃんが王様に何かしてたら・・・。

きっとあたしは、とても冷静でいられないだろう。

はらわたからこみ上げてくる怒りを必死に抑えて、あたしは部屋のドアを開けて中に入った。

「ようこそ。お越しになるのが意外と早かったですね、ミラ様。」

フィアナちゃんは、膝の上に手を置きながら玉座にちょこんと座っていて、あたしに爽やかな笑みを向けてきた。
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