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第四章 : 朽蝕の救済
オリスギリアムの戦い①
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翌日。
あたし達はオリスギリアムの南側、アドゥイン大河の向こう岸で朽鬼達を待っていた。
時間は朝9時過ぎ。
天気は所々に雲がかかっているけど晴れていて、とても今から人間と吸血鬼が、動く死体相手に熾烈な戦いを繰り広げるとは思えないほどだった。
頬を川の近く特有の冷たい風が撫でる。
あたしはふと、後ろを振り返って街の壁の内側の足場に立ってるファイセアさん達を見た。
神妙な顔つきをしながら、川の更に向こう側に広がる森に目をやっている。
しかしファイセアさんが、あたしの視線に気が付いたらしく、こっちを見て強く頷く。
まるで「こっちは大丈夫だ。」とでも言いたげに・・・。
それに応えるために、あたしも頷き返した。
さぁ~て朽鬼達。
来るなら来い!!
こっちはもう・・・心の準備はビシッと決まってんだよ!!
と思っていたその時だった。
突然森の方から、『ギャア!ギャア!』と甲高い鳴き声が聞こえて、その発生源と思しき鳥達が一斉に飛び立った。
「ミラ様!!」
「ミラ!!」
あたしの両隣にいるグレースちゃんとラリーちゃんが、顔を強張らせてこっちを見てきた。
「うん・・・。来るね。」
そう言った直後、森の草がガサガサと激しく揺れる音がして、明らかに大勢の何かがこっちに向かって大挙していることが分かった。
その音は次第に大きくなっていき、それに連れてあたしの胸のドキドキも激しさを増してきていた。
だけどしばらくして、森のガサガサはピタッと止み、辺りを静寂が包み込む。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
静けさは一瞬で破られ、街に向かって大量の朽鬼達が押し寄せてきた。
「総員!!剣を出せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ラリーちゃんから指示が飛び、あたし達は“血操師”で自分の血から剣を作った。
「いいかぁ!?朽鬼は“全回復”が常時発動になってる!!だから確実に首を落とせッッッ!!!」
「「「おおッッッ!!!」」」
朽鬼達の走りは留まることを知らずに、どんどんこっちへと迫ってくる。
あたし達は剣を構えて、ただずっと、奴らがここに到達するのを待つ・・・。
そして・・・ついに・・・。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
朽鬼の大群はあたし達のところに到達し、あたし達は間髪入れずに突進してくる朽鬼の首をバタバタと刎ねていった。
朽鬼達はやはり、街の前で壁になってるあたし達吸血鬼軍に目もくれず、街を襲おうと躍起になっていた。
「街には一匹たりとて入れないッッッ!!!」
「テメェらの相手は俺らだッッッ!!!」
グレースちゃんとラリーちゃんも、必死になって突進する朽鬼の首を斬っていく。
しかし、やはり数が多い・・・。
あたし達の包囲網をすり抜けて一心不乱に街を目指す朽鬼が数匹出て来る。
「弓隊、放てッッッ!!!」
しかしその取りこぼし分は、街の壁に辿り着く前に、足場の上で待ち構えている王国軍兵士達の手により、眉間に矢を撃ち込まれて沈黙する。
その様子を見て、あたしはゼェゼェ言いながらもホッとした。
今のところ、吸血鬼軍と王国軍の連携は完璧だった。
よし!!
このままのペースで何とか乗り切って見せるぞッッッ!!!
「ミラ様!!ドーラ様の姿が見当たりませんがどうしたのでしょう!?」
「あれそういえば・・・!!ドッペルちゃんどこ行ったの!?」
「ドーラならあっちで暴れまくってるぜ!!」
「ええっ!?」
少し先の方に目を凝らしてみると、“弾丸走破”で暴走機関車のように移動しながら、二刀流で朽鬼の首をどんどん刎ねていくドッペルちゃんの姿があった。
「朽鬼、全部、倒す。ドーラ、お手伝い、頑張る・・・!!」
ドッペルちゃんったら・・・。
張り切っちゃってまぁ~・・・。
◇◇◇
「そう・・・。ミラ様は予想通りオリスギリアムで朽鬼達と戦闘を開始したのね。」
王都の吸血鬼救済会の本部。
フィアナは会のNo.2のアーヴェンから“遠距離対話”で報告を受けていた。
(はい。しかし大丈夫でしょうか?)
「何が?」
(彼女が果たして、囮として役立つのでしょうか・・・。)
「大丈夫よ。私はあの人のことを信じてるから。それで、そっちはどう?」
(王宮に繋がる地下水路を発見しました。ここからなら、王宮内に侵入できそうです。)
「分かった。私も今からそっちに行くわ。王都各所に配置した人達には、私達が侵入次第に行動を開始するように伝えてちょうだい。」
(分かりました。)
フィアナはアーヴェンとの通信を切ると、窓に映る王都の景色を見ながら物思いにふけった。
「今日でこの国は・・・終わる。そして始まるのね。吸血鬼達の理想郷が・・・。」
あたし達はオリスギリアムの南側、アドゥイン大河の向こう岸で朽鬼達を待っていた。
時間は朝9時過ぎ。
天気は所々に雲がかかっているけど晴れていて、とても今から人間と吸血鬼が、動く死体相手に熾烈な戦いを繰り広げるとは思えないほどだった。
頬を川の近く特有の冷たい風が撫でる。
あたしはふと、後ろを振り返って街の壁の内側の足場に立ってるファイセアさん達を見た。
神妙な顔つきをしながら、川の更に向こう側に広がる森に目をやっている。
しかしファイセアさんが、あたしの視線に気が付いたらしく、こっちを見て強く頷く。
まるで「こっちは大丈夫だ。」とでも言いたげに・・・。
それに応えるために、あたしも頷き返した。
さぁ~て朽鬼達。
来るなら来い!!
こっちはもう・・・心の準備はビシッと決まってんだよ!!
と思っていたその時だった。
突然森の方から、『ギャア!ギャア!』と甲高い鳴き声が聞こえて、その発生源と思しき鳥達が一斉に飛び立った。
「ミラ様!!」
「ミラ!!」
あたしの両隣にいるグレースちゃんとラリーちゃんが、顔を強張らせてこっちを見てきた。
「うん・・・。来るね。」
そう言った直後、森の草がガサガサと激しく揺れる音がして、明らかに大勢の何かがこっちに向かって大挙していることが分かった。
その音は次第に大きくなっていき、それに連れてあたしの胸のドキドキも激しさを増してきていた。
だけどしばらくして、森のガサガサはピタッと止み、辺りを静寂が包み込む。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
静けさは一瞬で破られ、街に向かって大量の朽鬼達が押し寄せてきた。
「総員!!剣を出せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ラリーちゃんから指示が飛び、あたし達は“血操師”で自分の血から剣を作った。
「いいかぁ!?朽鬼は“全回復”が常時発動になってる!!だから確実に首を落とせッッッ!!!」
「「「おおッッッ!!!」」」
朽鬼達の走りは留まることを知らずに、どんどんこっちへと迫ってくる。
あたし達は剣を構えて、ただずっと、奴らがここに到達するのを待つ・・・。
そして・・・ついに・・・。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
朽鬼の大群はあたし達のところに到達し、あたし達は間髪入れずに突進してくる朽鬼の首をバタバタと刎ねていった。
朽鬼達はやはり、街の前で壁になってるあたし達吸血鬼軍に目もくれず、街を襲おうと躍起になっていた。
「街には一匹たりとて入れないッッッ!!!」
「テメェらの相手は俺らだッッッ!!!」
グレースちゃんとラリーちゃんも、必死になって突進する朽鬼の首を斬っていく。
しかし、やはり数が多い・・・。
あたし達の包囲網をすり抜けて一心不乱に街を目指す朽鬼が数匹出て来る。
「弓隊、放てッッッ!!!」
しかしその取りこぼし分は、街の壁に辿り着く前に、足場の上で待ち構えている王国軍兵士達の手により、眉間に矢を撃ち込まれて沈黙する。
その様子を見て、あたしはゼェゼェ言いながらもホッとした。
今のところ、吸血鬼軍と王国軍の連携は完璧だった。
よし!!
このままのペースで何とか乗り切って見せるぞッッッ!!!
「ミラ様!!ドーラ様の姿が見当たりませんがどうしたのでしょう!?」
「あれそういえば・・・!!ドッペルちゃんどこ行ったの!?」
「ドーラならあっちで暴れまくってるぜ!!」
「ええっ!?」
少し先の方に目を凝らしてみると、“弾丸走破”で暴走機関車のように移動しながら、二刀流で朽鬼の首をどんどん刎ねていくドッペルちゃんの姿があった。
「朽鬼、全部、倒す。ドーラ、お手伝い、頑張る・・・!!」
ドッペルちゃんったら・・・。
張り切っちゃってまぁ~・・・。
◇◇◇
「そう・・・。ミラ様は予想通りオリスギリアムで朽鬼達と戦闘を開始したのね。」
王都の吸血鬼救済会の本部。
フィアナは会のNo.2のアーヴェンから“遠距離対話”で報告を受けていた。
(はい。しかし大丈夫でしょうか?)
「何が?」
(彼女が果たして、囮として役立つのでしょうか・・・。)
「大丈夫よ。私はあの人のことを信じてるから。それで、そっちはどう?」
(王宮に繋がる地下水路を発見しました。ここからなら、王宮内に侵入できそうです。)
「分かった。私も今からそっちに行くわ。王都各所に配置した人達には、私達が侵入次第に行動を開始するように伝えてちょうだい。」
(分かりました。)
フィアナはアーヴェンとの通信を切ると、窓に映る王都の景色を見ながら物思いにふけった。
「今日でこの国は・・・終わる。そして始まるのね。吸血鬼達の理想郷が・・・。」
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