【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。

ハニィビィ=さくらんぼ

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第四章 : 朽蝕の救済

西方吸血鬼軍決戦⑰

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西方吸血鬼軍本部を守るため、一つになったトヴィリンと戦う覚悟を示したあたし達に対して、トヴィリンは馬鹿にしたかのような笑みを見せた。

「お前達の絆など、ただ単に群れているだけに過ぎない。私達の、完全に一つに重なり合った絆の前では・・・無力だ。」

「そんなの・・・やってみないと分かんないじゃんッッッ！！！」

トヴィリンの嘲笑を跳ねのけたあたしに、みんなも同じ気持ちになって大きく頷いた。

「ならば・・・分からせるまでだ！！」

そう宣言した後、トヴィリンが右足で地面を強く踏みつけると、地面の影が彼女の身体を上っていき、影の鎧はより厳つくなり、兜には赤い目が開いて、伸ばした右手から自分とほぼ全く同じ大きさの真っ黒な大剣を作り出した。

「みんな・・・行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！！！！」

怒声にも似たあたしの掛け声を合図に、あたし達は一斉にトヴィリンに向かって走り出した。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」

「うおりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！」

まず最初に仕掛けたのはアウレルさんとローランドさんだった。

二人は天高くジャンプすると、トヴィリンの頭上目がけてそれぞれ斧と鎚メイスを振り下ろそうとした。

ところがトヴィリンの肩からもう二本の、先がブレード状になった腕が生えて来て二人の攻撃を受け止めてしまった。

するとそこへ、リリーが無詠唱で作った氷の槍を飛ばし、ルイギさんがトヴィリンの背後に瞬時に回って、斬撃を与えようとした。

「フン。見え透いた浅知恵だな。」

トヴィリンは持っていた大剣を地面に大きく突き立てると、それを手にしたまま柄を支えにして逆立ちして、正面と背後からの攻撃は大剣によって弾かれた。

「ぬっ・・・！？」

「まずは爺から。」

トヴィリンは逆さになったまま大剣を引き抜くと、背後に回ったルイギさんを真っ二つにしようとした。

そこへ寸でのところであたしが割って入り、あたしはトヴィリンのめちゃくちゃ重い一撃を渾身の力で抑えた。

「ぐっ・・・！負けて・・・なるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」

あたしは両腕に力を込めてトヴィリンの大剣を跳ねのけると、ルイギさんと一緒になってトヴィリンに斬りかかった。

だけどトヴィリンは素早く斬撃を繰り出すあたしとルイギさんの動きを全て見切って、華麗な身のこなしで次々とかわしてみせた。

トヴィリンがあたしとルイギさんを相手にしているのを好機と見て、アウレルさんとローランドさんが彼女の背後から同時に攻撃を仕掛けたが、さっき二人の攻撃を受け止めたもう二本の腕が、まるで触手のように縦横無人に襲い掛かった。

結果トヴィリンは正面のあたしとルイギさん、背後のアウレルさんとローランドさんという4対1の構図で、それぞれ攻めと回避を行うという離れ業をやってのけた。

「どうしよ・・・！これじゃあ・・・！！」

周りにあたし達がいるせいで、リリーは魔能による攻撃ができないようであり、すごく苦々しい顔をしていた。

この膠着状態をどうにかするにはあたし達がトヴィリンから離れるしかない！

だけどいざ離れられたとして、トヴィリンはリリーの動きを読んでまた回避するかもしれない。

いや、もしかしたら動きを読んだ上でリリーを真っ先に潰してくることだって在り得る・・・！！

結果として、あたし達はこうやってトヴィリンの相手をすることによって、彼女の注意をリリーから遠ざけるしかできない・・・。

クソ！

どうすればいい！？

どうすれば・・・。

考えろ！

考えろあたし！！

ッッッ！！！

そうだ！！

策を思いついたあたしは、近距離の相手とテレパシーで会話できる魔能“明かされざる意通ヒドゥン・コミュニケート”を発動して、ヒューゴ君に連絡した。

（ヒューゴ君！全意暗転オールセンス・ブラックアウトを使って、トヴィリンの意識を完全に吹っ飛ばせない！？）

（意識を完全に・・・ですか？）

（そう！！）

（私に残された全ての魔力を以ってすれば可能でしょう。ですが、トヴィリンだけでなく周囲の者まで確実に巻き込んでしまうでしょう・・・。）

（みんなにはあたしから謝っとくから、お願い！！やってッッッ！！！）

（みっ、ミラ様！？）

（全意暗転オールセンス・ブラックアウトは地・級・魔・能・！つまり・・・あたしなら効かない！！唯一動けるあたしがトヴィリンを倒すから、遠慮なくやっちゃって！！）

（しっ、しかし・・・！）

（ヒューゴ君！！勝つにはこれしかない！！命令だから早くやってッッッ！！！）

（・・・・・・・。分かりました！）

あたしの強い意志によって、ヒューゴ君は覚悟を決めた。

急いでヒューゴ君！

あたし達がトヴィリンを相手できてる隙に・・・！！

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「全感覚よ！闇に沈め！全意暗転オールセンス・ブラックアウトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！！！！」

「あっ・・・！がっ・・・。」

よし！

トヴィリンの動きが止まった！！

今の内にあたしが・・・！！

ザシュ！！

「がはっ・・・！」

「ぐはぁ・・・！」

え？

あたしの目に映ったのは、トヴィリンのブレード状の腕に身体を貫かれた、アウレルさんとローランドさんの姿だった。

「アウレルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！！！ローランドぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！！！！」

リリーの叫びがこだまする中、トヴィリンの影の腕は大きく振りかぶって、二人を左右の大砲がある階に投げつけた。

え？

何で？

「くっ・・・クッそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！！！！」

怒りに任せてトヴィリンに魔能を撃ち込もうとしたリリーだったが、トヴィリンは一気に間合いを詰めてきてリリーの両腕を大剣で吹っ飛ばし、一階に向かって蹴り飛ばした。

何で？

何で動けるの？

「ミラ！早く動かんかッッッ！！！」

ルイギさんの声でハッとすると、トヴィリンがあたしのすぐ側まで迫ってきていた。

トヴィリンがあたしを大剣で斬ろうとした瞬間、ルイギさんがあたしを守ったが、トヴィリンの一撃を受けてルイギさんの剣は折れてしまい、彼は胸からお腹にかけて大きな切り傷を負って地面を転がり、ピクリとも動かなくなってしまった。

「そっ、そんな・・・。バカ、な・・・。」

突然のことにひどく混乱しながら、ヒューゴ君は魔力切れで卒倒した。

あたしも同じように、状況が全く理解できず、頭が真っ白になりそうになりながら膝から崩れ落ちた。

そんなあたしのところへ、トヴィリンがゆっくりと歩み寄ってきた。

「ッッッ！！！まっ、まさか・・・。」

トヴィリンの方へ顔を上げたあたしは、彼女の顔を見た瞬間、衝撃を覚えた。

本人は白目を剥いていたが、彼女が被ってる兜に付いてる赤黒い目が、あたしを見下ろしていたのだ。

そう、つまり兜の目はト・ヴ・ィ・リ・ン・の・影・の・も・の・だったのだ。

影には精神魔能は効かない。

だから同調していた主人格の意識が吹っ飛んだ瞬間、彼女を包んでいた別人格鎧が自立移動して、あたし達に襲い掛かったんだ。

完全に失念していた。

彼女は、一・人・で・も・あ・り・二・人・・・・だったんだ・・・。

「あっ・・・あっ・・・はっ・・・ははっ・・・。」

白目になっていた彼女の本体が、笑いながら意識を取り戻し始めた。

そして、兜に付いた目と合わせて、合計4つの眼光であたしを見据えた。

「これで分かっただろう？私・達・の前では、お前達は・・・無力だ。」

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