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第四章 : 朽蝕の救済
応援組み分け会議
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ベアエスさんとファイセアさんを応接室に待たせて、あたしは急いでみんなを集めて、二人が持ち込んだ応援要請に誰を向かわせるかの緊急会議を始めた。
「と、いうわけなんよ・・・みんな。」
「ふぅ~む!ヴェル・ハルド王国騎士と西方吸血鬼軍・・・。両勢力からの同時の応援要請ですか~。確かに、困ったことでございますなぁ~!!」
「そんなに困ることじゃないでしょローランド。王国側はただの調査。それに引き換え西方吸血鬼軍は本部存亡の危機なんだよ?どちらを優先するかは決まりきってるんじゃないの?」
「なっ!?りっ、リリーナ!貴様ともあろう者がミラ様の心中をお察しできぬとは、ほとほと呆れたものよ!!ミラ様はな、双方とも重要な案件だと捉えており、どちらに兵を割くべきか決めかけているからこそ、こうして我輩らをお呼び立てしたのだぞ!!」
「ぐっ・・・!」
ローランドさんにイタイとこ突かれたリリーはシュンとした顔で俯いてしまった。
「ろっ、ローランドさん!そうカッカしないで!確かにあたし的にはどっちも放ってはおけないってのはあるよ?でもリリーの言う通り、王国の方はそんなに気にすることじゃないかもって思ってんのもまた事実だし・・・。」
「ぐっ、ぬぬっ・・・。」
あたしに諫められて、ローランドさんは落ち着きを取り戻してテーブルに座り直した。
「なぁ?ちょいとおかしくねぇか?」
「おかしいって何が?ラリーちゃん。」
「西方吸血鬼軍の本部つったら、東西南北に置かれてる吸血鬼軍の本部の中で一番攻めるのが困難なんだぜ?」
「そうなの!?」
「ああ。なんせアドニサカ魔政国からそう離れてない場所にあるからな。見つかって、壊滅作戦まで立てられたとしても、向こうが尻尾巻いて逃げんのが目に見えてんだよ。なのに何であのベアエスっつう補佐は慌てふためいて遠く離れたミラんトコまで“助けてくれ”って頼み込んでんだよ?」
「ラリーザ殿。それについては、私から。」
さっきまでベアエスさんから話を聞いていたヒューゴ君が挙手すると、みんなの注目が一斉に集まった。
「ベアエス執将補佐官によりますと、どうやらアドニサカ側は黎明の開手の一員から支援を受けたと・・・。」
「ああっ!?」
ヒューゴ君が聞いたことをあたし達も聞いて、一気に動揺が走った。
「如何なる堅牢な守りを講じても、ミラ様と互角に渡り合える者の後ろ立てがあれば、陥落も在り得てしまう・・・と。」
「マジかよ~!まぁ、テメェらの守りに過信せず、最悪のことも考えるのが賢明だわな。アイツ、慎重なところ全然変わってねぇじゃねぇか・・・。安心したよ。」
ん?
アイツ?
「ミラ様。黎明の開手が相手となると、やはり西方吸血鬼軍の本部を優先すべきではないでしょうか?」
「僕もグレースの案に賛成だね。ミラ様、ここは我々、乙女の永友を総動員してでも事にあたるべきではと愚考いたします。」
「グレースちゃん・・・。アウレルさん・・・。」
「待って。」
「ドッペルちゃん、どうしたの?」
「王国、ドーラ、任せる。」
「「「「ええっ!?」」」」
突然のドッペルちゃんの発言に、みんな揃ってビックリした。
だってこの子、今まで自分から進んで提案したことなんてないのに。
「本体、いつも、言ってた。不測の、事態、備える。西方吸血鬼軍、危ないの、確か。だけど、王国も、何か、おかしい。放っては、ダメ。」
「ドッペルちゃん・・・。」
「しかしドーラ。あなたにはミラ様の替え玉として、ここに残っておく役目があります。外部での活動は認められません。」
「敵?本体、王国、仲良し。ドーラ、替え玉、やる必要、ない。」
「あっ・・・。」
すごい・・・。
ドッペルちゃん、ヒューゴ君を黙らせた。
何だかんだ言って、この子も色々と成長してるんだな・・・。
不測の事態に備えろ、か。
確かに、本物のミラなら言いそうなことだ。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「っし!決めた!!あたしとリリー、ローランドさん、アウレルさん、それからヒューゴ君は西方吸血鬼軍の応援に!ドッペルちゃんとリリーは、ファイセアさん達調査隊の付き添いに!ラリーちゃんはここに残って、あたしの代わりに指揮を執って!みんな!さっきドッペルちゃんが言った通り、何が起こるか分かんないから、くれぐれも気を抜かないように頑張ること!!それでは、準備開始ッッッ!!!」
「「「「「「了解ッッッ!!!!!!」」」」」」
あたしが号令をかけると、みんな張り切った顔をしながら、会議室を後にしていった。
「あっ!そういえばラリーちゃん・・・。」
「何だよ?」
「さっきさ、向こうの執将さんと知り合いみたいな感じで言ってたけど・・・。」
「知り合いも何も、俺と同じように、軍に入りたてのお前と一緒の部隊だった奴だよ。」
「へぇ~そうなんだ!で、どんな人だったの?」
「まぁ一言で言えば・・・“ハキハキして腰が低い奴”?」
「え?それってパシリのテンプレみたいな人?」
「ぱしり?何だよそりゃ?まぁ向こうに着いたら、俺の代わりにヨロシク伝えといてくれや。じゃあな。」
ラリーちゃんはそう言うと、会議室を出て行った。
色々と大丈夫かな?
向こうの執将さん・・・。
あっ、そうだ!
あとでアルーチェさんにも連絡入れとかなきゃ。
黎明の開手のメンバーのこと、もっと知っておく必要があるし・・・。
「と、いうわけなんよ・・・みんな。」
「ふぅ~む!ヴェル・ハルド王国騎士と西方吸血鬼軍・・・。両勢力からの同時の応援要請ですか~。確かに、困ったことでございますなぁ~!!」
「そんなに困ることじゃないでしょローランド。王国側はただの調査。それに引き換え西方吸血鬼軍は本部存亡の危機なんだよ?どちらを優先するかは決まりきってるんじゃないの?」
「なっ!?りっ、リリーナ!貴様ともあろう者がミラ様の心中をお察しできぬとは、ほとほと呆れたものよ!!ミラ様はな、双方とも重要な案件だと捉えており、どちらに兵を割くべきか決めかけているからこそ、こうして我輩らをお呼び立てしたのだぞ!!」
「ぐっ・・・!」
ローランドさんにイタイとこ突かれたリリーはシュンとした顔で俯いてしまった。
「ろっ、ローランドさん!そうカッカしないで!確かにあたし的にはどっちも放ってはおけないってのはあるよ?でもリリーの言う通り、王国の方はそんなに気にすることじゃないかもって思ってんのもまた事実だし・・・。」
「ぐっ、ぬぬっ・・・。」
あたしに諫められて、ローランドさんは落ち着きを取り戻してテーブルに座り直した。
「なぁ?ちょいとおかしくねぇか?」
「おかしいって何が?ラリーちゃん。」
「西方吸血鬼軍の本部つったら、東西南北に置かれてる吸血鬼軍の本部の中で一番攻めるのが困難なんだぜ?」
「そうなの!?」
「ああ。なんせアドニサカ魔政国からそう離れてない場所にあるからな。見つかって、壊滅作戦まで立てられたとしても、向こうが尻尾巻いて逃げんのが目に見えてんだよ。なのに何であのベアエスっつう補佐は慌てふためいて遠く離れたミラんトコまで“助けてくれ”って頼み込んでんだよ?」
「ラリーザ殿。それについては、私から。」
さっきまでベアエスさんから話を聞いていたヒューゴ君が挙手すると、みんなの注目が一斉に集まった。
「ベアエス執将補佐官によりますと、どうやらアドニサカ側は黎明の開手の一員から支援を受けたと・・・。」
「ああっ!?」
ヒューゴ君が聞いたことをあたし達も聞いて、一気に動揺が走った。
「如何なる堅牢な守りを講じても、ミラ様と互角に渡り合える者の後ろ立てがあれば、陥落も在り得てしまう・・・と。」
「マジかよ~!まぁ、テメェらの守りに過信せず、最悪のことも考えるのが賢明だわな。アイツ、慎重なところ全然変わってねぇじゃねぇか・・・。安心したよ。」
ん?
アイツ?
「ミラ様。黎明の開手が相手となると、やはり西方吸血鬼軍の本部を優先すべきではないでしょうか?」
「僕もグレースの案に賛成だね。ミラ様、ここは我々、乙女の永友を総動員してでも事にあたるべきではと愚考いたします。」
「グレースちゃん・・・。アウレルさん・・・。」
「待って。」
「ドッペルちゃん、どうしたの?」
「王国、ドーラ、任せる。」
「「「「ええっ!?」」」」
突然のドッペルちゃんの発言に、みんな揃ってビックリした。
だってこの子、今まで自分から進んで提案したことなんてないのに。
「本体、いつも、言ってた。不測の、事態、備える。西方吸血鬼軍、危ないの、確か。だけど、王国も、何か、おかしい。放っては、ダメ。」
「ドッペルちゃん・・・。」
「しかしドーラ。あなたにはミラ様の替え玉として、ここに残っておく役目があります。外部での活動は認められません。」
「敵?本体、王国、仲良し。ドーラ、替え玉、やる必要、ない。」
「あっ・・・。」
すごい・・・。
ドッペルちゃん、ヒューゴ君を黙らせた。
何だかんだ言って、この子も色々と成長してるんだな・・・。
不測の事態に備えろ、か。
確かに、本物のミラなら言いそうなことだ。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「っし!決めた!!あたしとリリー、ローランドさん、アウレルさん、それからヒューゴ君は西方吸血鬼軍の応援に!ドッペルちゃんとリリーは、ファイセアさん達調査隊の付き添いに!ラリーちゃんはここに残って、あたしの代わりに指揮を執って!みんな!さっきドッペルちゃんが言った通り、何が起こるか分かんないから、くれぐれも気を抜かないように頑張ること!!それでは、準備開始ッッッ!!!」
「「「「「「了解ッッッ!!!!!!」」」」」」
あたしが号令をかけると、みんな張り切った顔をしながら、会議室を後にしていった。
「あっ!そういえばラリーちゃん・・・。」
「何だよ?」
「さっきさ、向こうの執将さんと知り合いみたいな感じで言ってたけど・・・。」
「知り合いも何も、俺と同じように、軍に入りたてのお前と一緒の部隊だった奴だよ。」
「へぇ~そうなんだ!で、どんな人だったの?」
「まぁ一言で言えば・・・“ハキハキして腰が低い奴”?」
「え?それってパシリのテンプレみたいな人?」
「ぱしり?何だよそりゃ?まぁ向こうに着いたら、俺の代わりにヨロシク伝えといてくれや。じゃあな。」
ラリーちゃんはそう言うと、会議室を出て行った。
色々と大丈夫かな?
向こうの執将さん・・・。
あっ、そうだ!
あとでアルーチェさんにも連絡入れとかなきゃ。
黎明の開手のメンバーのこと、もっと知っておく必要があるし・・・。
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