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第四章 : 朽蝕の救済

王都観光

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翌日、あたし達は当初決めていた通り、王都巡りをするために王宮の門の前で集合した。

昨夜、酒の席で女子として恥ずかしいことのこの上ないことをしようとしたリリーとグレースちゃんは、顔は青白くゲッソリとしており二日酔いであることは丸分かりだった。

「まだ気持ち悪い?」

「ミラ様から貰ったを貰って、少しはマシになったのですが・・・。」

「それにしても、良くあのような料理をご存じでしたね。」

「ふふっ!まぁね♪」

朝になって二人の様子を見に行くと、どう見ても今にも死にそうな顔をしていたので、あたしは魔能で“東の小国に伝わる二日酔いを抑える食べ物”だと言って、シメジのお吸い物を出した。

向こうの世界にいた時も、二日酔いで辛そうだったお父さんによく作ってあげてたけど、まさか異世界こっちで友達二人に出すことになろうなんて・・・。

「それにしてもさぁ~・・・二人とも本っ当に覚えてないの!?昨日あったこと。」

「お恥ずかしい限りではありますが・・・。気が付いたら下着姿のままベッドの中で・・・。」

「グレースも!?私もなんか額がすごく痛くてまったく同じ状況だったのよね~。」

「あんね!まともに話が聞けるほど良くなったから話すけど、昨日すっごく大変だったんだからね!!」

あの後、急いでパーティー会場まで戻ると、二人はヒューゴ君のかけた精神魔能のおかげで放心状態で下着のまんま立ち尽くしていた。

ところが、あたしが部屋に入るなり、リリーの魔能が解除されてしまい、四つん這いになって襲ってきて、そのまま飛び掛かってきたものだから、あたしは掌底突きでリリーを気絶させた。

そしてグレースちゃんの方に行くと、こっちも魔能が解いてしまい真っ赤っかにした顔で「私の方が豊満な体つきをしてますよねぇ!?ねぇ!?」と詰め寄ってきたから、より強力な昏倒魔能をかけて強制的にスリープさせると、伸びた二人をあたしが責任持って客室のベッドまで運んだのだった。

「そっ、それは・・・!お見苦しい姿を見せて・・・大変申し訳ありませんッッッ!!!」

あたしから事情を聞くと、グレースちゃんはすっごく恥ずかしそうにして謝ってきた。

「ひどいですミラお姉様!!愛しの妹分であるこの私に手を上げるなんて・・・!」

「あのままいったらあたしの大事なモンがあんたに取られるトコだったんだよ!?正当防衛だって!」

「そのまま身を委ねればよろしかったのに・・・♡♡♡」

「よぅし分かった!!リリーはあたしの目が黒い内は一滴もお酒飲んじゃダメぇ~!!」

「そっ、そんな殺生なぁ~!!」

「ミラ様ぁ~!!こんな変態に構ってないで早く王都巡り始めましょうよぉ~。」

「ソレットの意見に、私は大いに賛成です。」

駄々をこねるソレットと、それに納得するヒューゴ君にリリーはメンチ切ってきたけど、二人はそっぽ向いて全然反応しなかった。

「でっ、では~行きましょうか!」

なんかヤバめの雰囲気を感じたのか、イーニッドさんが申し訳なさそ~に言うと、あたし達は王都観光を始めることにした。

クーデターの翌日であるにも関わらず、王都にはかつての活気が戻っていて、いい意味で騒がしかった。

時間の許す限り、あたし達は、イーニッドさんとソレットお勧めのスポットをいっぱい巡った。

中でも一番嬉しかったのが、この間はお金も無くて、色々とバタバタしてたせいで買えなかった王都イチオシのスウィーツ、『ミナーレクレープ』を食べることができたことかな~?

新しく限定販売された新商品を二ついっぺんに買えたのはホントにラッキーだった♪

両手にクレープ持参で、それを交互に頬張るあたしにみんな若干引いてたけど、それは気にしない!

だって女の子は、甘いモノに目がないんだもん♪

あとソレットが、ヒューゴ君を婦人服が立ち並ぶ通りに言葉巧みに誘導しようとした時はかなり焦った。

だって気が付けば、通りの入口寸前まで来てたんだから・・・。

大切な部下であり、友達であるヒューゴ君の秘密を守るために、あたしは全力で止めた。

そしてどうにかソレットの純粋さから来る邪悪な野望を阻止することができた。

にしても、あのヒューゴ君に一切の疑問を抱かせずに誘導することができるなんて、ソレットには策略家の才能があるのかもしれない・・・。

とまあ~色々なことがありつつも、あたし達は王都での観光をめいっぱい楽しむことができた。

「留守を任せた皆様へのお土産も買えたことですし、充実した一日になりましたね♪」

「そうね。一度来たことがあるから退屈するかと思ったけど、意外と楽しむことができたわ。」

「ヒューゴ様、次こそは必ず策に乗っかって頂きますからね♪」

「なんだか段々、あなたのことが怖くなってきましたよ・・・。ソレット。」

夕暮れの通りを、買い物袋をぶら下げて歩くみんなは、とても満足げな表情をしていた。

みんなの言う通り、今日は楽しかったな~。

次はもっと大勢で来てみたいもんだ♪

ラリーちゃんやアウレルさん、それからローランドさんも一緒に。

「あっ!!」

楽しいあまりにことを思い出したあたしは、それを思い出してついドキっとした。

「どうかなさいましたか?」

「あ~みんな、悪いけど先帰ってて。イーニッドさんのこと、吸血鬼救済会に伝えるのをすっかり忘れちゃってて・・・。」

「そういえばまだ伝えていなかったですね。では、私達はこれで失礼します。道中くれぐれもお気をつけて。」

「ホントごめん!夕飯までには帰ってくるから!」

そう言って、あたしはイーニッドさんと一緒に吸血鬼救済会の本部へと向かった。

「すいません。私のためにわざわざ・・・。」

「いいっていいって♪あたしも王都に来た時に、フィアナちゃんに会おうと思ってたからさ。」

「ええ。代表もとてもお喜びになると思います。」

「えへへ♪まぁ~フィアナちゃんとあたしは、志が同じな友達同士だからね~♪」

一週間前に会ってるとはいえ、こっちから顔を出すのはおよそ4ヵ月ぶりくらいになるからちょっと恥ずかしくなってきちゃったな。

フィアナちゃん、あれから元気にしてるといいな~。
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