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第三章 : 耳飾りの旅
新たな英雄
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「はっ・・・!」
気付くと妾は、どこかも分からぬ森の中で仰向けになって倒れていた。
「ここは・・・どこじゃ・・・?いっ・・・!?」
意識がはっきりした途端、全身を貫く激痛を覚え、頭を「ぐぐっ・・・。」ともたげてみると、両手足と翼は失われており、胴は上半身しか残っておらず、崩れかけているようにも見える傷口からは、腸が漏れ出ていた。
「くっ・・・!おっ、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!ミラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!よくも・・・よくも妾をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
己を襲う耐え難い激痛などお構いなしに、妾はミラに敗北し、このような有様にされた怨嗟が込められた絶叫を、もうほとんど残っていない四肢をばたつかせながら森中に響かせた。
あと少しで・・・。
あと少しで・・・父上の仇を・・・あの済まし顔をした憎き吸血鬼の首を我が物にできたというのに・・・!!
「くっ・・・クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「うるさいぞ。ガタガタ騒ぐな。」
妾が喚き散らしておると、誰かが傍まで歩き寄ってきて、頭と上の胴しか残っていない妾を苛ついた顔で見下ろした。
「よぉ。久しぶりだな。負け犬冥姫。」
それは、妾が復活した時にマースミレンの先王と一緒にいた、あの人間の男だった。
「きっ、貴様は・・・!!」
口を開くとすぐに、男は妾を蹴り飛ばし、妾はすぐそばに立っていた樹の根元に叩きつけられた。
「がはっ・・・!ぐほっ・・・!きっ、貴様・・・がっ・・・!?」
男は何も言わず、妾の首を掴んで、持ち上げながらギリギリと絞めつけてきた。
「この間はよくも俺をコケにしてくれたな。今からその借り、きっちりと返させてもらうぞ!」
「もうそのくらいで止してやれ、ジョルド。」
男の背後からもう一人の男の声が聞こえてきた瞬間、妾の首を絞め上げる男はパッと手を離して妾を地面に落とした。
「もっ、申し訳ございません!“泰陽雄”殿!」
「お前の怒りは重々理解している。だがせっかく転送魔能で助けたこの者を、縊り殺してよい訳がなかろうて。」
「しっ、失礼しました。少々頭に血が上り過ぎてしまったようで・・・。」
妾の首を絞め上げた男がかしこまる様子を見るに、新たに現れた男は、この者よりも格上と見れる。
朱色の騎士の装束に身を包んだその男は、ミラには僅かに及ばんが、あの天使の人形を生み出す女よりかは、明らかに強大な気配を放っていた。
そして男はどういう訳か、何故か年若い人間の女の死体を背負っていた。
「まさか耳飾りの運び手を担っていたヴェル・ハルド王国の最高位魔能士がミラ自身だったとは予想外だった。しかし、これで貴様の度量を明確に知ることができた。そのようなザマになってしまったが、あのミラと一時は互角に渡り合い、裏切り者でありながら我らの中では強者の域に達していたアルーチェを圧倒する貴様のその力・・・。まさに我らが求めるところ。冥府の姫リセよ。貴様は合格だ。」
男はそう言いながら、女の死体を妾の横に寝かせた。
「なっ、何をする気じゃ・・・!?」
「天級第四位・魔魂依人!」
次の瞬間妾の意識はバチっと途切れ、次に目を覚ますと信じられないものを見た。
何と妾の横に、まるで死体のように微動だにしない妾自身の身体があったのだ。
そして、己を手を見て、その身体をくまなく触った妾は愕然とした。
妾の身体が・・・先程横にあった人間の女の物になってしまっていたのだ。
「きっ、貴様!!妾に何をした!?」
「何って、決まっておろうが。貴様の魂を、私が持ってきた女の死体に移し替えたのだ。冥王の娘である貴様にこの魔能が通じるかは少々賭けだったが、貴様があのような有様になってくれたお陰でどうやら上手くいったようだ。これでようやく、目的は遂げられた。」
その時妾は全てを察した。
妾を復活させたこの男の仲間は、妾に同盟を申し出たが、本当は復活した妾を弱体化させ、人間の身体に魂を移し替えようと目論んでいたのだ。
「まっ、まさか貴様ら・・・最初からその腹積もりで・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「当たり前だろう?誇り高き人間の英雄の集まりである黎明の開手が、下賤な魔族かなんかと手を組むか。せめて格好だけでも人間の物でいてくれねば。」
「きっ、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
確信を得た妾は、怒りで男に剣を向け斬りかかった。
ところが・・・。
「“動くな。”」
「がっ・・・!?」
妾の身体は剣を向けたままピタッと止まり、全く動くことができなかった。
「ああ。言い忘れておったが、この魔能で魂を移し替えられた魔族は、その術者との間に自動的に主従関係が結ばれる。つまり、貴様は私の命令には逆らうことができないのだ。」
「ぐっ・・・!くそぉ・・・!」
どうにか動こうともがいてみたが、妾の身体は剣を振り上げたままの棒立ちで、まるで動かなかった。
必死な顔で足掻く妾に男は歩み寄り、頭をガシっと鷲掴みにした。
「黎明の開手が一角、泰陽雄にして我が導主の直弟子たるソール=ヴェルヴァ=レクトの名の下に、貴様を我が仲間として歓迎する。今から貴様は復讐の姫の英雄、讐姫雄・リセだ。」
「讐姫雄・リセ・・・。」
「そうだ。ともに力を合わせ我らが仇敵、救血の乙女・ミラに二度目の死を与えてやろうではないか。」
もしかすると妾は、甦られたものの一度ミラを屠ったと言われるこの人間どもを少し侮っていたのかもしれん。
何故なら奴らは、冥府の姫たるこの妾を、自分達の仲間として、屈服させ迎え入れるという、とても正気の沙汰ではないことをやってのけてしまったのだから・・・。
気付くと妾は、どこかも分からぬ森の中で仰向けになって倒れていた。
「ここは・・・どこじゃ・・・?いっ・・・!?」
意識がはっきりした途端、全身を貫く激痛を覚え、頭を「ぐぐっ・・・。」ともたげてみると、両手足と翼は失われており、胴は上半身しか残っておらず、崩れかけているようにも見える傷口からは、腸が漏れ出ていた。
「くっ・・・!おっ、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!ミラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!よくも・・・よくも妾をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
己を襲う耐え難い激痛などお構いなしに、妾はミラに敗北し、このような有様にされた怨嗟が込められた絶叫を、もうほとんど残っていない四肢をばたつかせながら森中に響かせた。
あと少しで・・・。
あと少しで・・・父上の仇を・・・あの済まし顔をした憎き吸血鬼の首を我が物にできたというのに・・・!!
「くっ・・・クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「うるさいぞ。ガタガタ騒ぐな。」
妾が喚き散らしておると、誰かが傍まで歩き寄ってきて、頭と上の胴しか残っていない妾を苛ついた顔で見下ろした。
「よぉ。久しぶりだな。負け犬冥姫。」
それは、妾が復活した時にマースミレンの先王と一緒にいた、あの人間の男だった。
「きっ、貴様は・・・!!」
口を開くとすぐに、男は妾を蹴り飛ばし、妾はすぐそばに立っていた樹の根元に叩きつけられた。
「がはっ・・・!ぐほっ・・・!きっ、貴様・・・がっ・・・!?」
男は何も言わず、妾の首を掴んで、持ち上げながらギリギリと絞めつけてきた。
「この間はよくも俺をコケにしてくれたな。今からその借り、きっちりと返させてもらうぞ!」
「もうそのくらいで止してやれ、ジョルド。」
男の背後からもう一人の男の声が聞こえてきた瞬間、妾の首を絞め上げる男はパッと手を離して妾を地面に落とした。
「もっ、申し訳ございません!“泰陽雄”殿!」
「お前の怒りは重々理解している。だがせっかく転送魔能で助けたこの者を、縊り殺してよい訳がなかろうて。」
「しっ、失礼しました。少々頭に血が上り過ぎてしまったようで・・・。」
妾の首を絞め上げた男がかしこまる様子を見るに、新たに現れた男は、この者よりも格上と見れる。
朱色の騎士の装束に身を包んだその男は、ミラには僅かに及ばんが、あの天使の人形を生み出す女よりかは、明らかに強大な気配を放っていた。
そして男はどういう訳か、何故か年若い人間の女の死体を背負っていた。
「まさか耳飾りの運び手を担っていたヴェル・ハルド王国の最高位魔能士がミラ自身だったとは予想外だった。しかし、これで貴様の度量を明確に知ることができた。そのようなザマになってしまったが、あのミラと一時は互角に渡り合い、裏切り者でありながら我らの中では強者の域に達していたアルーチェを圧倒する貴様のその力・・・。まさに我らが求めるところ。冥府の姫リセよ。貴様は合格だ。」
男はそう言いながら、女の死体を妾の横に寝かせた。
「なっ、何をする気じゃ・・・!?」
「天級第四位・魔魂依人!」
次の瞬間妾の意識はバチっと途切れ、次に目を覚ますと信じられないものを見た。
何と妾の横に、まるで死体のように微動だにしない妾自身の身体があったのだ。
そして、己を手を見て、その身体をくまなく触った妾は愕然とした。
妾の身体が・・・先程横にあった人間の女の物になってしまっていたのだ。
「きっ、貴様!!妾に何をした!?」
「何って、決まっておろうが。貴様の魂を、私が持ってきた女の死体に移し替えたのだ。冥王の娘である貴様にこの魔能が通じるかは少々賭けだったが、貴様があのような有様になってくれたお陰でどうやら上手くいったようだ。これでようやく、目的は遂げられた。」
その時妾は全てを察した。
妾を復活させたこの男の仲間は、妾に同盟を申し出たが、本当は復活した妾を弱体化させ、人間の身体に魂を移し替えようと目論んでいたのだ。
「まっ、まさか貴様ら・・・最初からその腹積もりで・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「当たり前だろう?誇り高き人間の英雄の集まりである黎明の開手が、下賤な魔族かなんかと手を組むか。せめて格好だけでも人間の物でいてくれねば。」
「きっ、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
確信を得た妾は、怒りで男に剣を向け斬りかかった。
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「がっ・・・!?」
妾の身体は剣を向けたままピタッと止まり、全く動くことができなかった。
「ああ。言い忘れておったが、この魔能で魂を移し替えられた魔族は、その術者との間に自動的に主従関係が結ばれる。つまり、貴様は私の命令には逆らうことができないのだ。」
「ぐっ・・・!くそぉ・・・!」
どうにか動こうともがいてみたが、妾の身体は剣を振り上げたままの棒立ちで、まるで動かなかった。
必死な顔で足掻く妾に男は歩み寄り、頭をガシっと鷲掴みにした。
「黎明の開手が一角、泰陽雄にして我が導主の直弟子たるソール=ヴェルヴァ=レクトの名の下に、貴様を我が仲間として歓迎する。今から貴様は復讐の姫の英雄、讐姫雄・リセだ。」
「讐姫雄・リセ・・・。」
「そうだ。ともに力を合わせ我らが仇敵、救血の乙女・ミラに二度目の死を与えてやろうではないか。」
もしかすると妾は、甦られたものの一度ミラを屠ったと言われるこの人間どもを少し侮っていたのかもしれん。
何故なら奴らは、冥府の姫たるこの妾を、自分達の仲間として、屈服させ迎え入れるという、とても正気の沙汰ではないことをやってのけてしまったのだから・・・。
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