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第三章 : 耳飾りの旅
王子の悲しみと決意
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「なっ、何じゃい何じゃい!?」
デザートを食べてたら、いきなし外ですんごい爆音が聞こえたので、バルコニーに出てみると、空に向かって紫のどでかい稲妻の塔が打ち上がっているではないか・・・!!
「あっ、アサヒ殿!あれは一体・・・!?」
「わっ、分かんない!だけど・・・すんごくヤバそう!!」
上を見上げている内に、雷の塔は消えて何の変哲もない夜空へと戻った。
「なっ、何だったんだろ・・・?アレ・・・」
「あっ、アサヒお姉様!!アレ・・・!」
リリーが空を指差したので、目を凝らしてジッと見ると、紫の雷が打ち上がった場所に誰か・・・浮かんでいる・・・?
って、ナニあの角と尻尾と翼が生えたいかにも悪魔っ娘なカンジの女性は!?
その人は、空を見上げるあたし達に一切気付くことなく、どこかへ飛び去って行った。
「あの人は・・・一体・・・?」
「あっ、アサヒ様。」
あたしがビックリしていると、ソレットがあたしの服の袖をグイッと引っ張った。
「どったのソレット?」
「あの紫の雷が打ち上がる前、上の部屋から何かが飛び出した音がしたような気が・・・。」
「えっ?」
その瞬間、あたしはドキっとした。
まさかさっきの悪魔っ娘は、そこから飛び出してきたんじゃ・・・!?
「プリクトスさん!上には何があるんですか!?」
「ちっ、父上が、個人的な客人を招くのに使う客間があるのですが・・・。」
おっ、王様が?
それって・・・かなりマズいんじゃ!?
「プリクトスさん!急いでその部屋に案内して下さい!!」
「それは一体、どういうことでしょ・・・」
「いいから早く!!」
あたしに急かされ、プリクトスさんはあたし達を、王様専用の客間へと案内した。
その部屋に入って目に飛び込んだのは・・・。
天井に大きく開いた穴に叩き壊されたテーブル、部屋の脇で気絶しているアルーチェさん。
そして・・・誰かに首を斬られた王様の無惨な姿だった。
「あっ・・・。ああっ・・・。ちっ、父、上・・・?あっ・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
父親の遺体にすがりつき、プリクトスさんは悲痛な慟哭をした。
「ルーチェ!しっかりしろ!ルーチェ!!」
ファイセアさんが必死に呼びかけると、アルーチェさんはゆっくりと目を開けた。
「ふぁ、ファイ、セア・・・?」
「ああそうだ!一体何があったのだ!?」
「ファイセア・・・。ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・!」
ファイセアさんの胸にすがりつき、アルーチェさんは涙を流しながらずっと謝り続けた。
◇◇◇
すっかり目を覚ましたアルーチェさんの話を聞き、あたしははらわたが煮えくり返った。
「つまりアレ?あたし達とアルーチェさんは、アルーチェさんの仲間の悪だくみにまんまと利用されたってワケ?」
アルーチェさんは怒りながら質問するあたしに、コクっと申し訳なさそうに頷いた。
「どうしようもない連中ね。アンタの仲間。」
「ほっ、本当に・・・面目ありません・・・。」
「アンタが謝る必要なんて全くないわ。アンタだって、利用されたワケなんだし。」
リリー・・・。
「で?アンタの父親も共犯だったと?」
アルーチェさんを励ました後、リリーは落ち込んでいるプリクトスさんをジロっと見た。
「アルーチェ殿の話を聞いて・・・父も加担していたのは、疑いようのない事実です・・・。でもだからって・・・だからって何故、父上が殺されなければならないのですか!?」
「アサヒ様達が見たという存在は、特徴からして復活した冥姫リセでしょう。おそらく私の仲間達は、リセを復活させ、ミラに復讐心を持つ彼女に共闘を申し出ようとしたのだと思います。カロガンスル様は、復活したリセを止めようとし、返り討ちにあって・・・。」
王様・・・。
最後の最後で、真っ当な選択をしたんだ・・・。
しっかし、冥府のお姫様である冥王を殺してその力を奪ったって、そりゃ~ミラよ・・・恨みを買って当然だよ~。
そういや前に、アーさんも言ってたっけ。
リリーを生き返らせるのに手放したけど、あたしの魔能の中で最も危険な代物の冥王の降臨は、冥王の血を吸って奪った魔能だって・・・。
ミラのヤツってば、どんだけ荒んだ過去を持ってんだよ~・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
いや、今は本物のミラのダークな過去をあれこれ気にしてる場合じゃない。
強大な力を持った冥府のお姫様が復活して制御不能になった。
ヘタしたらこれは、ミラへの復讐なんかで収まらず、この世界全体を巻き込んでの大騒動になる。
何としても止めないと・・・!!
「みんな。これまでの経緯を聞いて思ったんだけどさ、あたしはあの冥府のお姫様、絶対に止めないといけない気がする。いや、止めなくちゃいけないんだ!」
「私も、アサヒお姉様に賛成です!利用されっぱなしは癪に障るしね。こうなったら、私達でケリをつけてやる!
あたしとリリーは強気に言ったが、みんなはどこか怖がってるように見えた。
当然な反応・・・だよな~。
なんせ相手は冥王の娘で、冥府のお姫様である大悪鬼。
勝てる見込みなんか万に一つ、だもんな~。
「もちろん、強制はしない。イザとなったら、あたし一人でも・・・」
「いや、私もアサヒ殿とともに戦いです。リセは父上の仇であるとともに、この世界を脅かす邪悪な存在です。だから・・・討ち滅ぼさなければならない!この国の・・・新たな王として!」
父親の死に打ちひしがれていたプリクトスさんだったが、今の彼の顔には悲しみの色は一切なく、そこにはこの、聖なる森精人大国、マースミレンの新たな王様としての威厳に満ち溢れていた。
あたしとリリー、そしてプリクトスさんの決意が後押しとなり、他のみんなも覚悟を決めてくれた。
こうして、あたし達は100年ぶりに復活を果たした冥姫・リセに立ち向かうことを決めたのだった。
デザートを食べてたら、いきなし外ですんごい爆音が聞こえたので、バルコニーに出てみると、空に向かって紫のどでかい稲妻の塔が打ち上がっているではないか・・・!!
「あっ、アサヒ殿!あれは一体・・・!?」
「わっ、分かんない!だけど・・・すんごくヤバそう!!」
上を見上げている内に、雷の塔は消えて何の変哲もない夜空へと戻った。
「なっ、何だったんだろ・・・?アレ・・・」
「あっ、アサヒお姉様!!アレ・・・!」
リリーが空を指差したので、目を凝らしてジッと見ると、紫の雷が打ち上がった場所に誰か・・・浮かんでいる・・・?
って、ナニあの角と尻尾と翼が生えたいかにも悪魔っ娘なカンジの女性は!?
その人は、空を見上げるあたし達に一切気付くことなく、どこかへ飛び去って行った。
「あの人は・・・一体・・・?」
「あっ、アサヒ様。」
あたしがビックリしていると、ソレットがあたしの服の袖をグイッと引っ張った。
「どったのソレット?」
「あの紫の雷が打ち上がる前、上の部屋から何かが飛び出した音がしたような気が・・・。」
「えっ?」
その瞬間、あたしはドキっとした。
まさかさっきの悪魔っ娘は、そこから飛び出してきたんじゃ・・・!?
「プリクトスさん!上には何があるんですか!?」
「ちっ、父上が、個人的な客人を招くのに使う客間があるのですが・・・。」
おっ、王様が?
それって・・・かなりマズいんじゃ!?
「プリクトスさん!急いでその部屋に案内して下さい!!」
「それは一体、どういうことでしょ・・・」
「いいから早く!!」
あたしに急かされ、プリクトスさんはあたし達を、王様専用の客間へと案内した。
その部屋に入って目に飛び込んだのは・・・。
天井に大きく開いた穴に叩き壊されたテーブル、部屋の脇で気絶しているアルーチェさん。
そして・・・誰かに首を斬られた王様の無惨な姿だった。
「あっ・・・。ああっ・・・。ちっ、父、上・・・?あっ・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
父親の遺体にすがりつき、プリクトスさんは悲痛な慟哭をした。
「ルーチェ!しっかりしろ!ルーチェ!!」
ファイセアさんが必死に呼びかけると、アルーチェさんはゆっくりと目を開けた。
「ふぁ、ファイ、セア・・・?」
「ああそうだ!一体何があったのだ!?」
「ファイセア・・・。ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・!」
ファイセアさんの胸にすがりつき、アルーチェさんは涙を流しながらずっと謝り続けた。
◇◇◇
すっかり目を覚ましたアルーチェさんの話を聞き、あたしははらわたが煮えくり返った。
「つまりアレ?あたし達とアルーチェさんは、アルーチェさんの仲間の悪だくみにまんまと利用されたってワケ?」
アルーチェさんは怒りながら質問するあたしに、コクっと申し訳なさそうに頷いた。
「どうしようもない連中ね。アンタの仲間。」
「ほっ、本当に・・・面目ありません・・・。」
「アンタが謝る必要なんて全くないわ。アンタだって、利用されたワケなんだし。」
リリー・・・。
「で?アンタの父親も共犯だったと?」
アルーチェさんを励ました後、リリーは落ち込んでいるプリクトスさんをジロっと見た。
「アルーチェ殿の話を聞いて・・・父も加担していたのは、疑いようのない事実です・・・。でもだからって・・・だからって何故、父上が殺されなければならないのですか!?」
「アサヒ様達が見たという存在は、特徴からして復活した冥姫リセでしょう。おそらく私の仲間達は、リセを復活させ、ミラに復讐心を持つ彼女に共闘を申し出ようとしたのだと思います。カロガンスル様は、復活したリセを止めようとし、返り討ちにあって・・・。」
王様・・・。
最後の最後で、真っ当な選択をしたんだ・・・。
しっかし、冥府のお姫様である冥王を殺してその力を奪ったって、そりゃ~ミラよ・・・恨みを買って当然だよ~。
そういや前に、アーさんも言ってたっけ。
リリーを生き返らせるのに手放したけど、あたしの魔能の中で最も危険な代物の冥王の降臨は、冥王の血を吸って奪った魔能だって・・・。
ミラのヤツってば、どんだけ荒んだ過去を持ってんだよ~・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
いや、今は本物のミラのダークな過去をあれこれ気にしてる場合じゃない。
強大な力を持った冥府のお姫様が復活して制御不能になった。
ヘタしたらこれは、ミラへの復讐なんかで収まらず、この世界全体を巻き込んでの大騒動になる。
何としても止めないと・・・!!
「みんな。これまでの経緯を聞いて思ったんだけどさ、あたしはあの冥府のお姫様、絶対に止めないといけない気がする。いや、止めなくちゃいけないんだ!」
「私も、アサヒお姉様に賛成です!利用されっぱなしは癪に障るしね。こうなったら、私達でケリをつけてやる!
あたしとリリーは強気に言ったが、みんなはどこか怖がってるように見えた。
当然な反応・・・だよな~。
なんせ相手は冥王の娘で、冥府のお姫様である大悪鬼。
勝てる見込みなんか万に一つ、だもんな~。
「もちろん、強制はしない。イザとなったら、あたし一人でも・・・」
「いや、私もアサヒ殿とともに戦いです。リセは父上の仇であるとともに、この世界を脅かす邪悪な存在です。だから・・・討ち滅ぼさなければならない!この国の・・・新たな王として!」
父親の死に打ちひしがれていたプリクトスさんだったが、今の彼の顔には悲しみの色は一切なく、そこにはこの、聖なる森精人大国、マースミレンの新たな王様としての威厳に満ち溢れていた。
あたしとリリー、そしてプリクトスさんの決意が後押しとなり、他のみんなも覚悟を決めてくれた。
こうして、あたし達は100年ぶりに復活を果たした冥姫・リセに立ち向かうことを決めたのだった。
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