上 下
146 / 514
第三章 : 耳飾りの旅

敵手との再会、再び

しおりを挟む
「よく来たな。ご客人。儂がこの国の王、カロガンスルだ。」

プリクトスさんに案内され、あたし達は彼の父にして、マースミレンの国王のカロガンスル様にお目通りした。

見た目的には息子であるプリクトスさんとあんま変わんない、大体25、6歳くらいだけど、話し方は威厳に満ちていて、頭には息子のよりよっぽど大きく、より金ピカに輝く冠を被っていた。

おそらく見た目と違って、何千年も生きてるめちゃくちゃおじいちゃんなんだろなぁ~。

「お久しぶりです陛下。相変わらず・・・ご健勝で何よりです。」

「ティスムドル、其方も息災のようだな。」

片膝をついて跪きながら、ティスムドルさんはものすごく緊張した声色で王様にご挨拶した。

そりゃ緊張するだろな~。

なんせ、およそ3000年ぶりに主君と再会したんだから。

「しかし驚きました。まさか、嫡男様がお生まれになっていたとは・・・。」

「ああ。妻には、先立たれてしまったのだがな・・・。」

「それは、心からお悔やみを・・・。」

「よい。500年も前のことだ。今更ほじくり返すつもりはない。」

ごっ、500年前!?

かなりの昔のことだけど・・・プリクトスさん、大戦後に生まれた人でわりかし若い人なのかぁ。

あれ?

なんか年代感覚がおかしくなってきたかも?

こりゃ~参った!

ははっ・・・。

「さて。挨拶はこれくらいにして、アサヒ殿。を。」

「あっ!はい!!」

王様のお膝元まで行ったあたしは、この旅をする切っ掛けになった物、たまばなの耳飾りを懐から出して、王様に差し出した。

「どっ、どうぞ・・・!」

「受け取ろう。」

あたしから耳飾りを受け取った王様は、指でつまみながらまじまじと見つめた。

「ほう・・・これが・・・。確かに強大な冥府由来の魔力を感じる。」

王様から受け取った耳飾りを目の当たりにして、その場にいた森精人エルフ全員の顔が凍り付いたように見えた。

ずっと持ってて忘れ気味になってたけど、やっぱり、すごく危険な代物だったんだな、魂喰い華の耳飾りそれ・・・。

王様に耳飾りを手渡したあたしは、そそくさと元いた場所まで戻った。

「さっ、さて!あたし達のお役目はこれで終わりましたんで、ひとまずこれで・・・。」

「まぁ待てアサヒ。ヴェル・ハルドより参ったのだ。さぞ苦労を極めた旅路であっただろう。せめて2日ほど休まれてはどうだろうか?」

「え?いっ、いいんですか?」

「よいよい。心行くまで我が王国を堪能してゆけ。」

王様が笑顔でそう言うと、ソレットは「やった~!!」と飛び跳ねた喜んだ。

そんなソレットをリリーは「はしたないでしょ!」って言いながら頭をコツンとして座らせた。

いかんいかん!

あたしも嬉しさのあまりついジャンプしそうになった。

だって森精人エルフの国だよ~!?

キレイなところがいっぱいあるだろうし、それに・・・美味しい食べ物も・・・♡

って、リーダーのあたしが浮かれてどうすんの!?

『“ただいま”って言うまでが遠足』っていうように、王国に戻るまでが旅なんだから、最後まで気を引き締めないとっ!

ああでも!

待ちきれないよぉ~!!

マースミレン観光・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

ちょっとくらい浮かれてもバチは当たらんよね♪

よ~し!

異世界初の森精人エルフの国観光!

めいっぱい楽しむぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

「そっ、それではお言葉に甘えて、ごゆっくりさせて頂きます!」

あたしが満面の笑顔で返事すると、王様は微笑みながらウンウンと頷いた。

なんか・・・思ってたより穏やかそうな人だな。この王様。

「失礼いたします陛下。がお見えになりました。」

もう一人のお客さん?

誰だろ?

近衛の人に案内されて、王様の部屋に入ってきた人を見た瞬間・・・あたしはギョッとした。

「え・・・?マジで・・・?」

「紹介しよう。こちらは・・・黎明の開手ひらきてが一人、使召雄ししょうゆうのアルーチェ=オーネスだ。」

「そっ、そんなまさか・・・!」

アルーチェさんの顔を見た瞬間、ファイセアさんは立ち上がって、そのまま固まってしまった。

「あっ、あなた・・・。」

驚くファイセアさんを見て、アルーチェさんもまた、同じように固まったまま動かなった。

だけど、固まった2人は一斉に走り出し、ひしっと抱きしめ合った。

「ルーチェ!会いたかった・・・。本当に・・・会いたかったぞ!!」

「私も・・・ずっと会いたかったわ。あなたのことを考えなかった日なんて・・・一度もなかった。嬉しい・・・。嬉しいよ!ファイセア・・・。」

一度バチバチした敵と、また蜂合わす羽目になって、かんなりヒヤヒヤしちゃったけど、それも・・・感動的な夫婦の再会を目にして、すっかり吹っ飛んでしまった。

本当に仲良しなんだな・・・。

このカップル。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~

平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。 しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。 パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...