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第三章 : 耳飾りの旅
甦る戦慄
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洞窟を出てすぐに、痩鬼種の群れに行く手を阻まれたあたし達。
奴らを率いるのは、かつての大戦で敵の指揮官をしていた残忍な痩鬼種の将軍、ゲブルだった。
「アサヒ殿!どうする・・・!?」
「みんなは急いで迷宮の方に戻って。コイツの狙いはあたしみたいだし・・・。」
「またアサヒ殿が囮になる気か!?そんなこと許すはず・・・」
「行って!これは、リーダーとしての命令・・・!!」
ファイセアさんは「くっ・・・!」と歯がゆい顔をして、みんなを連れて迷宮の出口まで行こうとした。
ところが手下の痩鬼種に先回りされて、みんなは完全に囲まれてしまった。
{一人とて逃がさん。貴様を殺した後、姫を奪った者の従者にも、同罪で報いを受けてもらう。}
てんで言ってることは分かんないけど、ゲブルはどうやら誰も逃がしてくれないみたいだった。
そっちがその気なら・・・。
「球形防壁。」
チョコ之丞から降りたあたしは、チョコ之丞と痩鬼種が囲ってるみんなに、防壁魔能をかけた。
「アサヒ様!!これはどういうことですか!?」
突然守りの魔能を使われて、ソレットは球形のバリアをドンドンと激しく叩いた。
「誰一人として殺させない。みんなあたし狙いだったら、遠慮なく相手になってやる。」
「いくらバカ強いからって、こんな数相手に一人で戦うなんて・・・無謀にも程がありますッッッ!!!」
半泣きになりながら叫ぶソレットに、あたしはニヤっと笑った。
「へぇ~そう!じゃあソレットはあたしが負けるとでも思ってんだぁ?こりゃ心外だな。」
「しっ、心外・・・!?」
「じゃあ聞くけどさソレット、今まであたしが負けたことなんてあった?王都の朽鬼騒ぎにディーブスでの痩鬼種との戦い、それから蝠獣種の巣のことは?」
あたしが人間のフリをしてからの戦績をソレットに列挙したら、彼女は静かになった。
「なぁ~!?あたしが負けたことなんてただの一度もないんだから。“破悦の将”だか何だか知んないけど、あんなんに比べたら蝠獣種の女王の方がよっぽど迫力あったかんね?」
ソレットはバリアに手を付いて項垂れた後、今度はキッとした眼差しであたしを見た。
「万が一にも負けたら・・・承知しませんからねッッッ!!!」
「ははっ!じゃあそうならんように、キッチリ勝ってみせるわ!!」
ソレットに笑いかけたあたしは、ゲブルの方を振り向いて、剣を抜いた。
「というワケで、みんなを安心させたいからちゃちゃと始めよっか?何ならみんなでかかってきてもいいけど?」
あたしの挑発に、ゲブルは牙を剥き出しにして怒りの表情を見せた。
{殺せ・・・!!}
怒ったゲブルの命令に従って、痩鬼種達は一斉にあたしに襲い掛かってきた。
「風の怒り。」
あたしが発生させた竜巻に、痩鬼種と禍犬種達は宙高く舞って、そのまま遥か彼方に吹き飛ばされた。
だけどその後ろから今度は痩鬼種達が弓矢を撃ってきた。
「頼もしい反撃。」
手をかざして唱えると、矢はあたしに当たる直前で全部止まり、反対方向を向いて槍みたいに大きくなった。
「そぉ~れ!!」
そして手を大きく振って、それを矢を撃ってきた痩鬼種の方に飛ばした。
「アサヒ様ッッッ!!!」
ソレットの声にハッとすると、左右から禍犬種に乗った痩鬼種が3匹やってきて、反応しきれなかったあたしは袋叩きになった。
「アサヒ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!イヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その光景を目の当たりにしたソレットの叫び声が聞こえてきた。
大丈夫だよ。
こんなの・・・屁でもなしッッッ!!!
「爆散!!」
禍犬種と痩鬼種は粉々に砕け散り、返り血でベトベトになったあたしは「よっこらせ。」と言って立ち上がった。
「アサヒ・・・様・・・?」
リリー以外のみんなが目をまん丸にすんのも仕方ない。
だって無傷なんだもん、あたし。
「ああゴメン!ビックリさせちゃって。あたしさ、物理攻撃無効なんだわ♪」
「アサヒ様・・・。本当にあなたって・・・一体どこまで、バケモンなんですか・・・?」
泣きながら笑って、いつもの毒舌を言うソレットにあたしは苦笑いした。
なんだよバケモンって・・・!
いや、それは正論だわな・・・あはは・・・。
気が付くと仲間のほとんどがやられちゃって、ゲブルはどこか怖がってるように見えた。
「あのゲブルが・・・怯えている・・・?アサヒ殿なら・・・もしや本当に・・・やってくれるかもしれない・・・!!」
自分達の仲間を大勢殺した恐ろしい敵が、今日ここで倒されるかもしれないと思ったティスムドルさんは、防壁の向こう側で目をキラキラさせた。
ええティスムドルさん!!
あなたの仲間の仇、あたしがやっつけてやりますよ!!
◇◇◇
{俺様自慢の手勢が・・・いとも簡単に・・・。一体何なのだ?この人間は・・・?}
目の前に広がる光景を、俺様は未だに受け入れることができなかった。
だけど何故だ?
この感覚は?
まるで・・・何処かで見たかのような・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前達の主の力を奪いに来た。そこをどいてもらおう。」
ッッッ!!!
そうだ!!思い出した・・・!!!
奴のあの面影、似てる・・・。
俺様を火だるまにした挙句に、|魔族達にとって唯一無二の主たる冥王を殺し、その血を吸って殺しやがった・・・あのメスの吸血鬼にッッッ!!!
奴らを率いるのは、かつての大戦で敵の指揮官をしていた残忍な痩鬼種の将軍、ゲブルだった。
「アサヒ殿!どうする・・・!?」
「みんなは急いで迷宮の方に戻って。コイツの狙いはあたしみたいだし・・・。」
「またアサヒ殿が囮になる気か!?そんなこと許すはず・・・」
「行って!これは、リーダーとしての命令・・・!!」
ファイセアさんは「くっ・・・!」と歯がゆい顔をして、みんなを連れて迷宮の出口まで行こうとした。
ところが手下の痩鬼種に先回りされて、みんなは完全に囲まれてしまった。
{一人とて逃がさん。貴様を殺した後、姫を奪った者の従者にも、同罪で報いを受けてもらう。}
てんで言ってることは分かんないけど、ゲブルはどうやら誰も逃がしてくれないみたいだった。
そっちがその気なら・・・。
「球形防壁。」
チョコ之丞から降りたあたしは、チョコ之丞と痩鬼種が囲ってるみんなに、防壁魔能をかけた。
「アサヒ様!!これはどういうことですか!?」
突然守りの魔能を使われて、ソレットは球形のバリアをドンドンと激しく叩いた。
「誰一人として殺させない。みんなあたし狙いだったら、遠慮なく相手になってやる。」
「いくらバカ強いからって、こんな数相手に一人で戦うなんて・・・無謀にも程がありますッッッ!!!」
半泣きになりながら叫ぶソレットに、あたしはニヤっと笑った。
「へぇ~そう!じゃあソレットはあたしが負けるとでも思ってんだぁ?こりゃ心外だな。」
「しっ、心外・・・!?」
「じゃあ聞くけどさソレット、今まであたしが負けたことなんてあった?王都の朽鬼騒ぎにディーブスでの痩鬼種との戦い、それから蝠獣種の巣のことは?」
あたしが人間のフリをしてからの戦績をソレットに列挙したら、彼女は静かになった。
「なぁ~!?あたしが負けたことなんてただの一度もないんだから。“破悦の将”だか何だか知んないけど、あんなんに比べたら蝠獣種の女王の方がよっぽど迫力あったかんね?」
ソレットはバリアに手を付いて項垂れた後、今度はキッとした眼差しであたしを見た。
「万が一にも負けたら・・・承知しませんからねッッッ!!!」
「ははっ!じゃあそうならんように、キッチリ勝ってみせるわ!!」
ソレットに笑いかけたあたしは、ゲブルの方を振り向いて、剣を抜いた。
「というワケで、みんなを安心させたいからちゃちゃと始めよっか?何ならみんなでかかってきてもいいけど?」
あたしの挑発に、ゲブルは牙を剥き出しにして怒りの表情を見せた。
{殺せ・・・!!}
怒ったゲブルの命令に従って、痩鬼種達は一斉にあたしに襲い掛かってきた。
「風の怒り。」
あたしが発生させた竜巻に、痩鬼種と禍犬種達は宙高く舞って、そのまま遥か彼方に吹き飛ばされた。
だけどその後ろから今度は痩鬼種達が弓矢を撃ってきた。
「頼もしい反撃。」
手をかざして唱えると、矢はあたしに当たる直前で全部止まり、反対方向を向いて槍みたいに大きくなった。
「そぉ~れ!!」
そして手を大きく振って、それを矢を撃ってきた痩鬼種の方に飛ばした。
「アサヒ様ッッッ!!!」
ソレットの声にハッとすると、左右から禍犬種に乗った痩鬼種が3匹やってきて、反応しきれなかったあたしは袋叩きになった。
「アサヒ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!イヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その光景を目の当たりにしたソレットの叫び声が聞こえてきた。
大丈夫だよ。
こんなの・・・屁でもなしッッッ!!!
「爆散!!」
禍犬種と痩鬼種は粉々に砕け散り、返り血でベトベトになったあたしは「よっこらせ。」と言って立ち上がった。
「アサヒ・・・様・・・?」
リリー以外のみんなが目をまん丸にすんのも仕方ない。
だって無傷なんだもん、あたし。
「ああゴメン!ビックリさせちゃって。あたしさ、物理攻撃無効なんだわ♪」
「アサヒ様・・・。本当にあなたって・・・一体どこまで、バケモンなんですか・・・?」
泣きながら笑って、いつもの毒舌を言うソレットにあたしは苦笑いした。
なんだよバケモンって・・・!
いや、それは正論だわな・・・あはは・・・。
気が付くと仲間のほとんどがやられちゃって、ゲブルはどこか怖がってるように見えた。
「あのゲブルが・・・怯えている・・・?アサヒ殿なら・・・もしや本当に・・・やってくれるかもしれない・・・!!」
自分達の仲間を大勢殺した恐ろしい敵が、今日ここで倒されるかもしれないと思ったティスムドルさんは、防壁の向こう側で目をキラキラさせた。
ええティスムドルさん!!
あなたの仲間の仇、あたしがやっつけてやりますよ!!
◇◇◇
{俺様自慢の手勢が・・・いとも簡単に・・・。一体何なのだ?この人間は・・・?}
目の前に広がる光景を、俺様は未だに受け入れることができなかった。
だけど何故だ?
この感覚は?
まるで・・・何処かで見たかのような・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前達の主の力を奪いに来た。そこをどいてもらおう。」
ッッッ!!!
そうだ!!思い出した・・・!!!
奴のあの面影、似てる・・・。
俺様を火だるまにした挙句に、|魔族達にとって唯一無二の主たる冥王を殺し、その血を吸って殺しやがった・・・あのメスの吸血鬼にッッッ!!!
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