122 / 514
第三章 : 耳飾りの旅
痩鬼種(オーク)急襲
しおりを挟む
児鬼種の国の存亡をかけた熾烈・・・でもない戦いが終わって、王様に教えられた上に続く道を進んだら、ちゃんと元居た洞窟に戻ることができた。
それからは特にモンスターの襲撃はなく、道に迷ったりもしなかったから、多分だけどあたし達の迷宮探検は、だいぶ終盤に差し掛かったと思う。
「ねぇティスムドルさん、あたし達ってどんくらいこの迷宮進んだの?」
「そうだな・・・。地図によると・・・ああ!あと1時間ほどしたら迷宮の出口に着くはずだ!」
「ホントに!?じゃあもう終わっちゃうんだ。ここでの生活・・・。」
「あれれ~?アサヒ様ひょっとして、おセンチな気分になっちゃってますぅ?」
「べっ、別にそんなこと・・・ある・・・。」
「お気持ちは察します。色々、ありましたからねぇ~。」
児鬼種の国の一件だけじゃなく、この迷宮では色々な思い出ができた。
地底湖で魚を釣ってみんなで焼いて食べたり、灯りに反射してキラキラ光る天井を見上げながら輪になって寝たり・・・。
それが後ほんのちょっとしたら、もう終わっちゃうなんて、なんだか・・・修学旅行の帰り道みたいな寂しい気持ちになる。
「アサヒお姉様?」
心配そうな顔で聞いてくるリリーに、あたしは首をブンブン振って「何でもないっ!」って態度で見せた。
「うしっ!みんな!ラストスパートかけちゃおっか!!」
「というと?」
「それはだねぇ~・・・出口まで競争!チョコ之丞、GO!!」
「あっズルい!!ノイエフ様!チーズ郎を!!」
「えっやるの?仕方ないな~。」
「ちょっ、ちょっとちんんちくりん!!アサヒお姉様の隣は譲らないわよぉ~!!」
出口まで一直線に向かって行ったあたしを、リリーとソレットが追いかけることになり、ソレットに付き合ってるノイエフさんは「やれやれ」と行った顔をした。
その後ろのファイセアさんとティスムドルさんも、顔を見合して楽しそうに後を追い始めた。
全員が追い付きそうになった頃には、出口から差し込む月明かりが微かに見えてきた。
◇◇◇
{お頭。出口からの臭いが段々強くなってきました。}
{よし。まずは向こうの実力が知りたい。お前とお前、それからお前。そこの草むらの中に潜んどけ。そして出てきたところを、一斉に襲え。}
出口の向こうから走ってくる、耳飾りを持つ者とその仲間の強さを推し量るべく、痩鬼種の首領は仲間を出口の脇にある草むらに潜ませた。
◇◇◇
「よ~し!!あたしがいっちば~ん♪」
「私は二着でしたが、アサヒお姉様のお隣に付けて嬉しいです♡」
頬を赤くして、ウットリした目で口に手を当てるリリーを、ソレットが呆れたような顔で見てきた。
「もうソレットったらムキになって~!付き合う俺の身にもなれよなぁ~・・・。」
「いいではないかノイエフ。子どもの戯れにともに興じるのも、大人の責務の一つだぞ。」
「いや~!ようやく外に出ることができたぁ~!!まぁ夜で、雰囲気的には洞窟と変わんないけど。」
外は雲一つない晴れ空で、月と星がキレイに輝いていた。
向かいには、迷宮に入る前に通ったのと、同じくらい広大な森が広がっていた。
「この先の森を通ればいいワケなの?ティスムドルさん。」
「ああ。森の細かい見取りは・・・ッッッ!!!」
地図を見ようとしたその時、脇の草むらから2頭の禍犬種と、それに跨った痩鬼種がいきなり飛び出してきた。
ノイエフさんが禍犬種を矢で仕留めて、転がり落ちた痩鬼種をチーズ郎が噛み殺した。
もう一方はあたしが消失で両方とも跡形もなく消し去った。
「アサヒ殿!これは一体・・・!?」
「どうやら待ち伏せされてたみたい。ご丁寧に団体様お付きで。」
向かいの森から痩鬼種と禍犬種がぞろぞろ出てきて、それはティスムドルさんと会う前に相手にした数の、軽く3倍はいってたと思う。
ったく!
神様はあたし達を休ませる気なんかないってコトぉ~!?
{ほう。中々やるようだな。}
痩鬼種の群れの奥から、全身火傷だらけで、熱で溶けたと思われる鎧の一部がくっついた、一際大きく大剣を背負ったのが、真っ黒の禍犬種・・・いや、あの大きさと気迫、あれは禍狼種だ。
それに跨って、ゆっくり出てきた。
どうやらコイツが、この群れのボスみたいだ。
威圧感が他のよりハンパないもん・・・。
「ゲブル・・・?」
「ティスムドルさん知ってんの?アイツのこと。」
「別名“破悦の将”。かつての大戦で魔族軍を率い、殺しの限りを尽くした極めて残忍な痩鬼種の将軍です・・・!!」
「マジで!?」
「あのような風貌に変わり果て、一瞬分かりませんでしたが、あの背負った大剣・・・間違いなく奴ですッッッ!!!」
ティスムドルさんの怖がってる顔を見て、いかに危険なヤツかすぐに察した。
{この心地良い闇の魔力・・・。ああ・・・やっと、再び巡り会えたぁ・・・。}
ゲブルは痩鬼種が使う意味不明な言語を喋りながら、ウットリしてあたしの懐をジッと見ている。
ってコトは、やっぱり・・・。
{我らが姫を返してもらうぞ。魔能士。}
何言ってるか分かんなかったけど、あたしをガン見してるってことは、ヤツのお目当てはどう見ても魂喰い華の耳飾り、だよなぁ~・・・。
それからは特にモンスターの襲撃はなく、道に迷ったりもしなかったから、多分だけどあたし達の迷宮探検は、だいぶ終盤に差し掛かったと思う。
「ねぇティスムドルさん、あたし達ってどんくらいこの迷宮進んだの?」
「そうだな・・・。地図によると・・・ああ!あと1時間ほどしたら迷宮の出口に着くはずだ!」
「ホントに!?じゃあもう終わっちゃうんだ。ここでの生活・・・。」
「あれれ~?アサヒ様ひょっとして、おセンチな気分になっちゃってますぅ?」
「べっ、別にそんなこと・・・ある・・・。」
「お気持ちは察します。色々、ありましたからねぇ~。」
児鬼種の国の一件だけじゃなく、この迷宮では色々な思い出ができた。
地底湖で魚を釣ってみんなで焼いて食べたり、灯りに反射してキラキラ光る天井を見上げながら輪になって寝たり・・・。
それが後ほんのちょっとしたら、もう終わっちゃうなんて、なんだか・・・修学旅行の帰り道みたいな寂しい気持ちになる。
「アサヒお姉様?」
心配そうな顔で聞いてくるリリーに、あたしは首をブンブン振って「何でもないっ!」って態度で見せた。
「うしっ!みんな!ラストスパートかけちゃおっか!!」
「というと?」
「それはだねぇ~・・・出口まで競争!チョコ之丞、GO!!」
「あっズルい!!ノイエフ様!チーズ郎を!!」
「えっやるの?仕方ないな~。」
「ちょっ、ちょっとちんんちくりん!!アサヒお姉様の隣は譲らないわよぉ~!!」
出口まで一直線に向かって行ったあたしを、リリーとソレットが追いかけることになり、ソレットに付き合ってるノイエフさんは「やれやれ」と行った顔をした。
その後ろのファイセアさんとティスムドルさんも、顔を見合して楽しそうに後を追い始めた。
全員が追い付きそうになった頃には、出口から差し込む月明かりが微かに見えてきた。
◇◇◇
{お頭。出口からの臭いが段々強くなってきました。}
{よし。まずは向こうの実力が知りたい。お前とお前、それからお前。そこの草むらの中に潜んどけ。そして出てきたところを、一斉に襲え。}
出口の向こうから走ってくる、耳飾りを持つ者とその仲間の強さを推し量るべく、痩鬼種の首領は仲間を出口の脇にある草むらに潜ませた。
◇◇◇
「よ~し!!あたしがいっちば~ん♪」
「私は二着でしたが、アサヒお姉様のお隣に付けて嬉しいです♡」
頬を赤くして、ウットリした目で口に手を当てるリリーを、ソレットが呆れたような顔で見てきた。
「もうソレットったらムキになって~!付き合う俺の身にもなれよなぁ~・・・。」
「いいではないかノイエフ。子どもの戯れにともに興じるのも、大人の責務の一つだぞ。」
「いや~!ようやく外に出ることができたぁ~!!まぁ夜で、雰囲気的には洞窟と変わんないけど。」
外は雲一つない晴れ空で、月と星がキレイに輝いていた。
向かいには、迷宮に入る前に通ったのと、同じくらい広大な森が広がっていた。
「この先の森を通ればいいワケなの?ティスムドルさん。」
「ああ。森の細かい見取りは・・・ッッッ!!!」
地図を見ようとしたその時、脇の草むらから2頭の禍犬種と、それに跨った痩鬼種がいきなり飛び出してきた。
ノイエフさんが禍犬種を矢で仕留めて、転がり落ちた痩鬼種をチーズ郎が噛み殺した。
もう一方はあたしが消失で両方とも跡形もなく消し去った。
「アサヒ殿!これは一体・・・!?」
「どうやら待ち伏せされてたみたい。ご丁寧に団体様お付きで。」
向かいの森から痩鬼種と禍犬種がぞろぞろ出てきて、それはティスムドルさんと会う前に相手にした数の、軽く3倍はいってたと思う。
ったく!
神様はあたし達を休ませる気なんかないってコトぉ~!?
{ほう。中々やるようだな。}
痩鬼種の群れの奥から、全身火傷だらけで、熱で溶けたと思われる鎧の一部がくっついた、一際大きく大剣を背負ったのが、真っ黒の禍犬種・・・いや、あの大きさと気迫、あれは禍狼種だ。
それに跨って、ゆっくり出てきた。
どうやらコイツが、この群れのボスみたいだ。
威圧感が他のよりハンパないもん・・・。
「ゲブル・・・?」
「ティスムドルさん知ってんの?アイツのこと。」
「別名“破悦の将”。かつての大戦で魔族軍を率い、殺しの限りを尽くした極めて残忍な痩鬼種の将軍です・・・!!」
「マジで!?」
「あのような風貌に変わり果て、一瞬分かりませんでしたが、あの背負った大剣・・・間違いなく奴ですッッッ!!!」
ティスムドルさんの怖がってる顔を見て、いかに危険なヤツかすぐに察した。
{この心地良い闇の魔力・・・。ああ・・・やっと、再び巡り会えたぁ・・・。}
ゲブルは痩鬼種が使う意味不明な言語を喋りながら、ウットリしてあたしの懐をジッと見ている。
ってコトは、やっぱり・・・。
{我らが姫を返してもらうぞ。魔能士。}
何言ってるか分かんなかったけど、あたしをガン見してるってことは、ヤツのお目当てはどう見ても魂喰い華の耳飾り、だよなぁ~・・・。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
無職だけど最強でした〜無職と馬鹿にされたが修行して覚醒したから無双してくる〜
えんじょい
ファンタジー
ある日、いつものように幼なじみと学校から帰宅している時に、交通事故に遭い幼なじみと共に死んでしまった…
気がつくとそこは異世界だった。
俺は転生してしまったらしい。
俺が転生してきた世界は、職というものがあり、その職によって人生が決まるという。
俺は職受礼の儀式という神々から職をもらう儀式で、無職という職を貰う。
どうやら無職というのは最弱の職らしい。
その職により俺は村から追放された。
それから修行を重ね数年後、初めてダンジョンをクリアした時に俺の職に変化が起きる。
俺の職がついに覚醒した。
俺は無職だけど最強になった。
無職で無双してやる!
初心者ですが、いい作品を書けるように頑張ります!
感想などコメント頂けると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる