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第三章 : 耳飾りの旅

痩鬼種(オーク)急襲

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児鬼種ゴブリンの国の存亡をかけた熾烈・・・でもない戦いが終わって、王様に教えられた上に続く道を進んだら、ちゃんと元居た洞窟に戻ることができた。

それからは特にモンスターの襲撃はなく、道に迷ったりもしなかったから、多分だけどあたし達の迷宮探検は、だいぶ終盤に差し掛かったと思う。

「ねぇティスムドルさん、あたし達ってどんくらいこの迷宮進んだの?」

「そうだな・・・。地図によると・・・ああ!あと1時間ほどしたら迷宮の出口に着くはずだ!」

「ホントに!?じゃあもう終わっちゃうんだ。ここでの生活・・・。」

「あれれ~?アサヒ様ひょっとして、おセンチな気分になっちゃってますぅ?」

「べっ、別にそんなこと・・・ある・・・。」

「お気持ちは察します。色々、ありましたからねぇ~。」

児鬼種ゴブリンの国の一件だけじゃなく、この迷宮では色々な思い出ができた。

地底湖で魚を釣ってみんなで焼いて食べたり、灯りに反射してキラキラ光る天井を見上げながら輪になって寝たり・・・。

それが後ほんのちょっとしたら、もう終わっちゃうなんて、なんだか・・・修学旅行の帰り道みたいな寂しい気持ちになる。

「アサヒお姉様?」

心配そうな顔で聞いてくるリリーに、あたしは首をブンブン振って「何でもないっ!」って態度で見せた。

「うしっ!みんな!ラストスパートかけちゃおっか!!」

「というと?」

「それはだねぇ~・・・出口まで競争!チョコ之丞、GO!!」

「あっズルい!!ノイエフ様!チーズ郎を!!」

「えっやるの?仕方ないな~。」

「ちょっ、ちょっとちんんちくりん!!アサヒお姉様の隣は譲らないわよぉ~!!」

出口まで一直線に向かって行ったあたしを、リリーとソレットが追いかけることになり、ソレットに付き合ってるノイエフさんは「やれやれ」と行った顔をした。

その後ろのファイセアさんとティスムドルさんも、顔を見合して楽しそうに後を追い始めた。

全員が追い付きそうになった頃には、出口から差し込む月明かりが微かに見えてきた。




◇◇◇




{お頭。出口からの臭いが段々強くなってきました。}

{よし。まずは向こうの実力が知りたい。お前とお前、それからお前。そこの草むらの中に潜んどけ。そして出てきたところを、一斉に襲え。}

出口の向こうから走ってくる、耳飾りを持つ者とその仲間の強さを推し量るべく、痩鬼種オークの首領は仲間を出口の脇にある草むらに潜ませた。




◇◇◇




「よ~し!!あたしがいっちば~ん♪」

「私は二着でしたが、アサヒお姉様のお隣に付けて嬉しいです♡」

頬を赤くして、ウットリした目で口に手を当てるリリーを、ソレットが呆れたような顔で見てきた。

「もうソレットったらムキになって~!付き合う俺の身にもなれよなぁ~・・・。」

「いいではないかノイエフ。子どもの戯れにともに興じるのも、大人の責務の一つだぞ。」

「いや~!ようやく外に出ることができたぁ~!!まぁ夜で、雰囲気的には洞窟と変わんないけど。」

外は雲一つない晴れ空で、月と星がキレイに輝いていた。

向かいには、迷宮に入る前に通ったのと、同じくらい広大な森が広がっていた。

「この先の森を通ればいいワケなの?ティスムドルさん。」

「ああ。森の細かい見取りは・・・ッッッ!!!」

地図を見ようとしたその時、脇の草むらから2頭の禍犬種ワガドグと、それに跨った痩鬼種オークがいきなり飛び出してきた。

ノイエフさんが禍犬種ワガドグを矢で仕留めて、転がり落ちた痩鬼種オークをチーズ郎が噛み殺した。

もう一方はあたしが消失ヴァニシングで両方とも跡形もなく消し去った。

「アサヒ殿!これは一体・・・!?」

「どうやら待ち伏せされてたみたい。ご丁寧にお付きで。」

向かいの森から痩鬼種オーク禍犬種ワガドグがぞろぞろ出てきて、それはティスムドルさんと会う前に相手にした数の、軽く3倍はいってたと思う。

ったく!

神様はあたし達を休ませる気なんかないってコトぉ~!?

{ほう。中々やるようだな。}

痩鬼種オークの群れの奥から、全身火傷だらけで、熱で溶けたと思われる鎧の一部がくっついた、一際大きく大剣を背負ったのが、真っ黒の禍犬種ワガドグ・・・いや、あの大きさと気迫、あれは禍狼種ワガルフだ。

それに跨って、ゆっくり出てきた。

どうやらコイツが、この群れのボスみたいだ。

威圧感が他のよりハンパないもん・・・。

・・・?」

「ティスムドルさん知ってんの?アイツのこと。」

「別名“破悦の将”。かつての大戦で魔族軍を率い、殺しの限りを尽くした極めて残忍な痩鬼種オークの将軍です・・・!!」

「マジで!?」

「あのような風貌に変わり果て、一瞬分かりませんでしたが、あの背負った大剣・・・間違いなく奴ですッッッ!!!」

ティスムドルさんの怖がってる顔を見て、いかに危険なヤツかすぐに察した。

{この心地良い闇の魔力・・・。ああ・・・やっと、再び巡り会えたぁ・・・。}

ゲブルは痩鬼種オークが使う意味不明な言語を喋りながら、ウットリしてあたしの懐をジッと見ている。

ってコトは、やっぱり・・・。

{我らがを返してもらうぞ。魔能士。}

何言ってるか分かんなかったけど、あたしをガン見してるってことは、ヤツのお目当てはどう見ても魂喰い華の耳飾りアレ、だよなぁ~・・・。
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