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第三章 : 耳飾りの旅

せめてもの姉心

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食事会がお開きとなり、ノイエフさんは酔ってほとんど眠りこけたファイセアさんをおぶって自宅へと帰って行った。

テーブルに突っ伏して寝ていたソレットは、宴会が終わったことを察知して起きると、眠気まなこを擦りながら自分で部屋へと戻った。

残されたあたしは、使用人がゴチャゴチャになったテーブルの後片付けをしないで済むように、魔能で一瞬で広間を掃除すると、同じく残されたリリーを部屋まで送ることにした。

「んんっ・・・。ミラ・・・お姉様・・・♡」

肩を貸したリリーの口元から、ほのかにお酒の匂いがした。

「ほぉら!せめて、自分の足で立ちなさい・・・よねッ!」

「ンハ~イ・・・♡」

ホントに分かってんのかなぁ・・・この子?

とにかくあたしは、お酒でぐでんぐでんになったリリーをどうにか立たせると、一緒に彼女の部屋へと向かった。

「確か・・・あたしの部屋の、斜め向かい、だったよな・・・。」

リリーを支えながら、廊下を歩いて階段を上るには中々にしんどかった。

おまけにこの子、歩いてる途中にあたしの頬っぺたに顔をスリスリしてくるし・・・。

酔ってるとはいえ、いつも以上に甘えが激しくなってる気がする・・・。

まぁでも、あたしは別にヤじゃないからいいんだけど・・・。

そしてあたしは、どうにかリリーを引きずりながら彼女の部屋へと無事到着した。

「あはは・・・。相変わらずすごい写真の数だなぁ・・・。」

部屋に入ったあたしは、ベッドの傍や化粧台の鏡をはじめとして、所狭しと飾られた写真に苦笑いした。

いっつも思うけど、来る度に飾ってるんだとしたら、どんだけ時間がかかってるんだろう?

そんなことを考えながら、あたしはリリーをベッドに寝かすと、そっとブランケットをかけてやった。

「おやすみ、リリー。」

静かにリリーに呼びかけて、部屋を後にしようとしたその時だった。

「・・お姉・・・・。・・・が・・たの・・・。」

彼女が何やら寝言を呟いており、その内容が気になったあたしは、リリーの顔に耳を近づけた。

「ミラ、お姉様・・・。記憶、戻ったの、ですね・・・。嬉しい・・・。」

その言葉を聞いた瞬間、あたしの心がズキっとした。

食事会の席で、あたしが酔っ払って本物のミラみたくなった時に、リリーはポカンとしてビックリしていたけど、とっても嬉しくもあったんだ。

まるであたしが、記憶を失う前のミラに戻ってくれたみたいな気がして・・・。

だけど、どれだけ以前と同じみたくなっても、ミラの記憶が戻ることはない。

そもそもあたしは、この子が好きだった・・・いや、今も好きな本物のミラじゃないのだから・・・。

はぁ・・・。

こういうシチュエーションがある度に、あたしはリリーを・・・みんなを騙している事実を突きつけられて、罪悪感で自分がイヤでイヤで仕方がなくなっちゃう・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

ここにいたら、いつまでもブルーになるだけだし、早いトコ自分の部屋に帰ろ・・・。

「むにゃ・・・。」

ん?

「ミラお姉様・・・。これからも、ずっと・・・ずぅ~と一緒、ですからね・・・。」

ッッッ!!

・・・・・・・。

あたしは、リリーのベッドの中に潜り込んだ。

ベッドの中は、リリーの体温の温もりで満たされていて、とても暖かく心地よかった。

「ん・・・?ミラ、お姉様・・・?」

「あっ、ゴメン。起こしちゃった?ねっ、たまには一緒に寝よ?」

「本当・・・ですか?嬉しい・・・!」

リリーは喜びながら、あたしの胸に顔を埋めてきた。

「リリー。」

「はい・・・?」

「あたし、これから何があっても、リリーの傍、絶対離れないから。たとえもし離れたって、絶対・・・絶対リリーのトコに戻ってくるから。」

「・・・・・・・。分かりました!約束、ですよ?」

「うん!任せてッ。」

そうだ。

どんなに罪悪感を感じたって、どんなに自分がイヤになったって、もう本物のミラが帰ってくることはない。

だったらあたしは、自分に責任を感じてリリーを哀れに思うより、本物のミラと同じか、もしくはそれ以上に甘えて来るリリーに負けないくらい、この子に甘えよう。

それがあたしが・・・。

あたしがこの子にしてあげられる、せめてもの“姉”としての役目、なんだから・・・。

だから今日は、この子と一緒に寝てあげよう。

まずはそこから始めてみるかっ。

おっと、そうだ。

「あの、さ・・・。」

「はい・・・?」

「寝てる時に、いかがわしいこと、できればしないでネ・・・。」

「えへへ・・・♡ハ~イ♡♡♡」
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