上 下
91 / 514
第三章 : 耳飾りの旅

緊迫の仲間発表

しおりを挟む
コンコン・・・。

「アサヒでございます、陛下。」

「ああ、入ってくれ。」

三日後、あたしはリリーとソレットを連れて、王様に謁見しに行った。

その理由は、今日ここであたしと旅に出るメンバー発表があるからだ。

「よく来てくれたなアサヒ。それに、ヒバナとソレットも。」

「陛下。まずは先日、この2人を連れて行くことをお許しになって頂き、ありがとうございます。」

リリーとソレットの一件があった次の日、あたしは王様に2人を連れて行くことを話した。

王様はあたしの申し出を受け入れてくれた。

ただ、まだ年端もいかない子どもであるソレットを同行させることに多少の心配を見せたが、あたしとリリーが責任持って守ってみせると言うと、安心したみたいだった。

王様がせっかく許してくれたんだから、その期待に応えてソレットをしっかり守らなくっちゃ!

「陛下!」

「何だソレット?」

「わたくしからも、個人的な意見でありながらアサヒ様の旅への同行を許可して頂き、感謝申し上げます!!」

「まぁ良い。元よりお前はアサヒの世話役。そう緊張せずとも、いつも通りに務めを全うすれば良いのだ。ただ、道中は2人の傍を片時も離れるでないぞ。」

「はっ、はい!!ピッタリくっついておきますッッッ!!!」

「陛下、心配せずともこの小っこいのの面倒はちゃんと見ておきますから。」

「ひっ、ヒバナ様ッ!陛下の御前でわたくしをそのように形容するのは控えて下さいまし!!」

「よく言うよ。あんたの目線、私の胸くらいしかないのに。」

「確かに言われてみれば。ヒバナ様のお平たい胸部がよくお見えになりますわねぇ・・・。」

「なっ、何ですってぇ~!?」

「こっ、コラ2人ともっ!陛下の前でケンカなんてみっともないでしょ!!」

「はっ・・・!もっ、申し訳ございません!」

「わたくしも・・・不敬が過ぎましたっ!」

「ははっ、2人とも、ずいぶん仲がよろしいみたいだな。」

「「そっ、そんなことありませんッッッ!!!」」

息ピッタリに2人が言うと、王様はまた微笑ましそうに笑った。

「それで陛下、他のメンバーは・・・?」

「ああ、そうだった。今回の旅で其方の護衛役を担う者達なのだが・・・もうそろそろ来るだろう。」

王様がそう言った直後、玉座の間を誰かがノックする音がした。

「おお来たか・・・!入って良いぞ。」

「失礼します。」

あたしは、部屋に入ってきた2人の顔を見た途端、驚いて言葉を失った。

「紹介しよう。其方の護衛を務めることになった、ファイセア・オーネス総騎士長とその弟、ノイエフ第13斥候部隊長だ。」

ファイセアさんに、その弟・・・。

ベリグルズ平野に入る直前で、あたし達が壊滅させた斥候部隊の唯一の生き残り・・・。

この2人があたしの護衛役とかマジかぁ~!!

2人ともミラあたしに遺恨があるキャラじゃん・・・。

「あっ、あんた達は・・・!!」

いっ、マズッ!!

あたしは、今にも殴りかかりそうなリリーを制止して、「具合が悪い。」と言って急いで部屋を出た。

「ミラお姉様何を!?あの2人は、私達を殺そうとした兄弟ですよ!?」

「だとしてもここで揉めたりしたら正体がバレちゃうでしょ!?」

「しっ、しかし・・・私はあの人間と一緒に旅するなんて真っ平御免ですッッッ!!!」

「気持ちは分かるけど・・・今は私を信じて言うことを聞いて!!お願い・・・。」

「みっ、ミラお姉様がそこまで言うなら・・・。今回は、引きます・・・。」

よっ、良かったぁ・・・。

あたしは怒り心頭になるリリーをどうにか抑えると、玉座の間に戻った。

「すっ、すいません~!いきなり退出したりして。もう、大丈夫ですからっ!」

「そうか・・・。あまり無理するでないぞ。」

あたしが場を誤魔化すと、ファイセアさんが笑顔であたし達に近づいて来た。

「アサヒ殿!この間の特別訓練では世話になった。此度はともに旅に出ることが決まって大変喜ばしく思うぞ!!」

「あっ、あたしも、またお仕事することになって嬉しいです・・・。」

握手するあたし達を、リリーは殺意剥き出しの目で見てきた。

ファイセアさんは、そんなリリーに視線を向けてきた。

「おや、こちらは?」

「あっ、ああ!あたしの弟子のヒバナです。この子も一緒に行くことになりまして・・・。」

「おお!アサヒ殿の弟子とな!?ファイセアだ!よろしくな!ヒバナ殿ッ。」

「こちらこそ・・・よろしくですぅ・・・。」

リリーは一切笑わずに、ファイセアさんの手を潰す勢いで力いっぱい握り締めた。

ギチギチという音がして、ファイセアさんは笑顔のまま冷や汗をかいた。

「ぐぅ・・・!なっ、中々に力強いお人だ・・・。さっ、さすが・・・アサヒ殿の弟子だな・・・。」

あたしは肘でリリーに離すように促すと、彼女は渋々手を離した。

「っくはぁ・・・!あっ、アサヒ殿。先程紹介されたように、私の弟のノイエフだ。さぁ、挨拶せんかッ!」

「ノイエフです。王都を救った英雄に会えて光栄です、アサヒ様。」

「よっ、よろしくお願いします!ノイエフさん。」

あたしと握手を交わしたノイエフさんの目は、穏やかそうに見えた。

良かったぁ・・・。

この人、のこと、もう引きずってないみたい・・・。

「あなたとは、色々と頂きたいご意見がありますので、期待しています。」

あれ?なんか・・・目ぇ、笑ってなくね・・・?

もしかして・・・やっぱ、マズい・・・?

「アサヒ、あとの一人・・・マースミレンまでの案内役をする者だが、その者は王国の西の外れに住んでいてな。道中で合流するようにしてくれ。」

まだ一人残ってるんだ・・・。

どんな人なんだろ?

「そこでだ・・・。まだ全員揃ってないのだが、余から一つ提案がある。今夜、皆の親睦のために王宮の広間で食事会を執り行いたいのだが、どうだ?」

えっ!?

このメンバーでご飯食べんの!?

そっ、それはちょっとぉ・・・。

「いいですね!わたくしは是非賛成です!!」

ちょっ、ソレット!?

「そうだな!これから苦楽をともにする仲間だ。色々と語り合いたい!!」

ファイセアさんまでぇ~・・・!

「俺も賛成です。意見交換のためにも。」

ノイエフさん・・・。

「アサヒお姉様、どうします?」

うっ、う~ん・・・。

「あっ、アイスブレイクは必要、だもんね・・・。」

「あいす・・・何ですかそれ?」

「よっ、要するに、“いいんじゃないか”ってことぉ・・・♪」

「そう、ですか・・・。私も、アサヒお姉様の意見に、従います。」

「そうかッ!良かった。では皆、出発前に英気を養ってくれたまえ!!」

どうしよ・・・。

お腹・・・ギュルギュルしてきた・・・。

これが空腹感だったらいいのに・・・。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

処理中です...