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第三章 : 耳飾りの旅
憎まれ侍女の過去
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「あの耳飾りを西方の森精人の国まで運べ・・・ですか!?」
自室に戻ったあたしは、さっき王様から頼まれたことをみんなに伝えた。
「そうなんだよ~・・・やっぱかなり危険な代物だから、王国に置いとくよりこっちに寄越してほしいって、向こうが言ってるらしくて・・・。」
「森精人はその手の物に対抗する力はこの世界でも随一ですからね。私でも、彼等の手にアレを委ねる方が最善かと思います。」
そうなんだ?
流石はエルフ族!!
闇の力に強いのは、ファンタジー世界の鉄板だからね!
「それでアサヒ様、どちらの森精人の国まで運ぶのですか?」
「何でも、マースミレン・・・って国なんだけど・・・。」
「「マースミレンですって!?!?」」
2人で一斉に驚いたから、こっちまでビックリしちゃったよ・・・。
「なっ、何・・・?そんなに有名な国なの?そこ・・・」
「アサヒお姉様、マースミレンは別名“金剛樹の森”と言いましてですね、アルスワルドでは最大勢力を誇る森精人の一大国家なんですよ!!」
「まっ、マジでか・・・!?」
「そうですよアサヒ様!森の真ん中に空にも届きそうな大木がありまして、その木の葉が放つ光で、森全体が黄金色に輝いているって言われてるんですよ♡」
「何それ!?めっちゃ幻想的じゃん!!」
金色に光る森かぁ・・・。
それは間違いなく一見の余地アリ、だね!!
「アサヒお姉様、これはとてつもなく重大な任務ですよ!!」
「うん!!ああそれで、ちょっと2人に話したいことがあって・・・。」
「何ですか?」
「実は王様の方で、あたしの護衛をやる人を何人か見繕うっていうんだけど、あたしの方でも希望を出せばその人も連れて行っていいって。」
「本当ですか!?」
「ヒバナはまぁ、あたしの弟子だから一緒に行くのは確定なんだけど・・・。」
「ですよね!!私、一生懸命アサヒお姉様の護衛を務めさせていただきますッッッ!!!ついでに、夜のお供も・・・♡♡♡」
「ごっ、護衛だけ頑張ってくれたらそれでいいんだけどネ・・・。それで問題は・・・。」
「アサヒ様!わたくしも一緒に連れて行って下さい!!」
やっぱ、そう言ってくる、よね~・・・。
「何言ってんの?あんたは留守番だよ。」
「何故ですか!?わたくしはアサヒ様のお世話係ですよ!!同行するのは当たり前じゃないですか!?」
「あのねぇ、アサヒお姉様がこれから向かう所には痩鬼種や児鬼種は勿論のこと、幻想大厄災の生き残りの強大な魔物がウヨウヨいるかもしれないんだよ。命が幾つあっても足りないとは思わない?」
そっ、そうなの!?
なんかこっちまで不安になってきたんですけど・・・。
「危険が数多く潜んでいるのは分かっています。それでもわたくしは、アサヒ様の旅路に同行したいのです!!」
「あんたみたいな子どもが付いて来たって足手まといなだけだよ。」
「そんなの分からないじゃですか!?わたくしだって、お役に立ってみせます!!」
今回はリリーが正しかった。
道は険しくて、更には危険なモンスターがたくさんいる。
そんな旅に子どもであるソレットを連れていくことなんか、できない・・・。
「アサヒ様!アサヒ様はどうなんですか!?わたくしのこと、連れて行ってくれますよね!?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ソレットは王宮で待ってて。心配しなくても、必ず戻ってくるから。」
「ッッッ!!!分かりました・・・。だったらもう勝手になさって下さいッッッ!!!」
ソレットはそう怒鳴ると、部屋を飛び出した。
「なっ、何なの?あの態度・・・。」
「そう怒らないでよ。あの子だって、よっぽど悔しいんだよ。」
「だからってあんな言い方はないでしょう。」
確かにさっきのソレットの態度は、今までの彼女と比べると様子がおかしかった。
そんなにあたしの役に立ちたかったのか?
ん~・・・普段のあの子からはとてもそうは思えないんだけど・・・。
「失礼いたします、アサヒ様。あの・・・さっきソレットが泣きながら廊下を走っていたのですが、何かあったのですか?」
「ちょっとあんた聞いてよ。それがさぁ・・・。」
◇◇◇
「なるほど。そのようなことが・・・。」
「あんた王様の小姓なんでしょ?王様に言って、お世話係の担当変えるようにしてくれないかな~?」
「ちょ、ちょっとヒバナ!いくらなんでもそれはやりすぎだって!!」
「だってそうでしょ!?アサヒお姉様に付いて行って森精人の国に行きたいって駄々こねるあまりに仕事を放棄したのですよ?それくらいやらないと・・・。」
「いや、多分本当はそうではないと思いますよ。ヒバナ様。」
「どういうこと?」
「あの子、王宮に来た最初の頃は、仕事の話以外はしなくて、決して笑わなかったのです。それで、ある時侍女長に聞いてみたんです。」
「それでなんて?」
「実はあの子、王宮に引き取られる前は姉と二人っきりで暮らしてたのです。明るく優しくて、よく冗談を言うソレットに付き合ってくれてとても楽しく過ごしていたみたいです。ところが、事故でお亡くなりになられて・・・。孤児になったあの子を、侍女長が不憫に思われて引き取られたのです。」
「じゃああのちんちくりんが、アサヒお姉様にあんなに小生意気になるのって・・・。」
「きっと重ねられているのでしょう。アサヒ様と、亡くなった姉のことを・・・。」
知らなかった。
まさかあのソレットに、そんな暗い過去があったなんて・・・。
そうか。きっとあの子は怖がってるんだ。
あたしが、自分の姉のように死んでしまうのが。
だからあんなにも、付いて行きたがってんだ・・・。
「・・・・・・・。アサヒお姉様。アイツのこと、私に任せてくれませんか?」
「え?」
「さっきの話を聞いて、私、とても他人事のように思えなくなってしまって。」
「どういうこと?」
リリーは口をつぐんだ後、言葉を搾り出すように打ち明けた。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「私も・・・姉を・・・失ってるんです・・・。」
自室に戻ったあたしは、さっき王様から頼まれたことをみんなに伝えた。
「そうなんだよ~・・・やっぱかなり危険な代物だから、王国に置いとくよりこっちに寄越してほしいって、向こうが言ってるらしくて・・・。」
「森精人はその手の物に対抗する力はこの世界でも随一ですからね。私でも、彼等の手にアレを委ねる方が最善かと思います。」
そうなんだ?
流石はエルフ族!!
闇の力に強いのは、ファンタジー世界の鉄板だからね!
「それでアサヒ様、どちらの森精人の国まで運ぶのですか?」
「何でも、マースミレン・・・って国なんだけど・・・。」
「「マースミレンですって!?!?」」
2人で一斉に驚いたから、こっちまでビックリしちゃったよ・・・。
「なっ、何・・・?そんなに有名な国なの?そこ・・・」
「アサヒお姉様、マースミレンは別名“金剛樹の森”と言いましてですね、アルスワルドでは最大勢力を誇る森精人の一大国家なんですよ!!」
「まっ、マジでか・・・!?」
「そうですよアサヒ様!森の真ん中に空にも届きそうな大木がありまして、その木の葉が放つ光で、森全体が黄金色に輝いているって言われてるんですよ♡」
「何それ!?めっちゃ幻想的じゃん!!」
金色に光る森かぁ・・・。
それは間違いなく一見の余地アリ、だね!!
「アサヒお姉様、これはとてつもなく重大な任務ですよ!!」
「うん!!ああそれで、ちょっと2人に話したいことがあって・・・。」
「何ですか?」
「実は王様の方で、あたしの護衛をやる人を何人か見繕うっていうんだけど、あたしの方でも希望を出せばその人も連れて行っていいって。」
「本当ですか!?」
「ヒバナはまぁ、あたしの弟子だから一緒に行くのは確定なんだけど・・・。」
「ですよね!!私、一生懸命アサヒお姉様の護衛を務めさせていただきますッッッ!!!ついでに、夜のお供も・・・♡♡♡」
「ごっ、護衛だけ頑張ってくれたらそれでいいんだけどネ・・・。それで問題は・・・。」
「アサヒ様!わたくしも一緒に連れて行って下さい!!」
やっぱ、そう言ってくる、よね~・・・。
「何言ってんの?あんたは留守番だよ。」
「何故ですか!?わたくしはアサヒ様のお世話係ですよ!!同行するのは当たり前じゃないですか!?」
「あのねぇ、アサヒお姉様がこれから向かう所には痩鬼種や児鬼種は勿論のこと、幻想大厄災の生き残りの強大な魔物がウヨウヨいるかもしれないんだよ。命が幾つあっても足りないとは思わない?」
そっ、そうなの!?
なんかこっちまで不安になってきたんですけど・・・。
「危険が数多く潜んでいるのは分かっています。それでもわたくしは、アサヒ様の旅路に同行したいのです!!」
「あんたみたいな子どもが付いて来たって足手まといなだけだよ。」
「そんなの分からないじゃですか!?わたくしだって、お役に立ってみせます!!」
今回はリリーが正しかった。
道は険しくて、更には危険なモンスターがたくさんいる。
そんな旅に子どもであるソレットを連れていくことなんか、できない・・・。
「アサヒ様!アサヒ様はどうなんですか!?わたくしのこと、連れて行ってくれますよね!?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ソレットは王宮で待ってて。心配しなくても、必ず戻ってくるから。」
「ッッッ!!!分かりました・・・。だったらもう勝手になさって下さいッッッ!!!」
ソレットはそう怒鳴ると、部屋を飛び出した。
「なっ、何なの?あの態度・・・。」
「そう怒らないでよ。あの子だって、よっぽど悔しいんだよ。」
「だからってあんな言い方はないでしょう。」
確かにさっきのソレットの態度は、今までの彼女と比べると様子がおかしかった。
そんなにあたしの役に立ちたかったのか?
ん~・・・普段のあの子からはとてもそうは思えないんだけど・・・。
「失礼いたします、アサヒ様。あの・・・さっきソレットが泣きながら廊下を走っていたのですが、何かあったのですか?」
「ちょっとあんた聞いてよ。それがさぁ・・・。」
◇◇◇
「なるほど。そのようなことが・・・。」
「あんた王様の小姓なんでしょ?王様に言って、お世話係の担当変えるようにしてくれないかな~?」
「ちょ、ちょっとヒバナ!いくらなんでもそれはやりすぎだって!!」
「だってそうでしょ!?アサヒお姉様に付いて行って森精人の国に行きたいって駄々こねるあまりに仕事を放棄したのですよ?それくらいやらないと・・・。」
「いや、多分本当はそうではないと思いますよ。ヒバナ様。」
「どういうこと?」
「あの子、王宮に来た最初の頃は、仕事の話以外はしなくて、決して笑わなかったのです。それで、ある時侍女長に聞いてみたんです。」
「それでなんて?」
「実はあの子、王宮に引き取られる前は姉と二人っきりで暮らしてたのです。明るく優しくて、よく冗談を言うソレットに付き合ってくれてとても楽しく過ごしていたみたいです。ところが、事故でお亡くなりになられて・・・。孤児になったあの子を、侍女長が不憫に思われて引き取られたのです。」
「じゃああのちんちくりんが、アサヒお姉様にあんなに小生意気になるのって・・・。」
「きっと重ねられているのでしょう。アサヒ様と、亡くなった姉のことを・・・。」
知らなかった。
まさかあのソレットに、そんな暗い過去があったなんて・・・。
そうか。きっとあの子は怖がってるんだ。
あたしが、自分の姉のように死んでしまうのが。
だからあんなにも、付いて行きたがってんだ・・・。
「・・・・・・・。アサヒお姉様。アイツのこと、私に任せてくれませんか?」
「え?」
「さっきの話を聞いて、私、とても他人事のように思えなくなってしまって。」
「どういうこと?」
リリーは口をつぐんだ後、言葉を搾り出すように打ち明けた。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「私も・・・姉を・・・失ってるんです・・・。」
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