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第二章 : 動乱の王国

First Love in 異世界

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ヤバい。

ヤバいヤバイヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!

あたし、完っ全にカリアード君に一目惚れしたっぽいッッッ!!!

誠実な立ち居振る舞い、日差しに照らされて輝く金髪、整いながらもどこか幼く見える顔。

間違いなくあたしのストライクゾーンだ・・・!

まさかここに来て異世界で最初の恋をするなんて思いもよらなかった・・・。

ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン・・・!!

うわっ。

胸の鼓動やっば・・・。

彼の顔を見続けると、まともな考えが浮かばなくなる。

どっ、どどっ、どうしよ~!?

カリアード君あたしのお付きになる人だから、こっからあれこれディスカッションしなきゃならないのに・・・!!

おっ、落ち着けぇ~。

ここはひとまず、自分を客観的に見て、冷静さを取り戻さないとっ。

「ミラ様、いかがいたしましたか?」

「ふぁ!?」

「先ほどから私のことをジッと見て・・・。もしかして、私の態度にどこかお気に召さない点がございましたでしょうか?」

「へ・・・?ウウン。ベツニ、ナアントモ、ナイヨ?」

「そっ、そうですか?」

って、何あたしケータイショップにいる真っ白いロボットみたいな喋り方になってんの!?

これじゃあ余計に挙動不審じゃないっすかぁ!!

ああやめて!

その「何かありましたら遠慮なく言ってください。」的なパッチリ開けた目でこっち見ないでぇ~。

「カリアード。」

「はい、代表。」

「ミラ様長旅で疲れてるみたいだからお部屋に連れて行ってあげて。」

「分かりました。ではミラ様、こちらに。」

「ふぇ・・・?ウン・・・。」

カリアード君に案内されて、あたしは呆けた表情を崩すことなく応接室を後にした。

部屋を出るときボーっとして、扉の淵に頭を思いっきりぶつけようとした時は本気で焦ってしまった。

あたし、もうダメかもしんない・・・。




◇◇◇




「はぁ・・・。」

ミラが部屋を退出して、フィアナはソファに座ったままか細いため息を吐いた。

「お疲れ様です代表。」

「さすがは吸血鬼の救世主・・・。迫力が凄まじかったわね。」

表面上は動じないように徹していたが、フィアナは『神の域にすら達している。』と言われるミラの、内から溢れる貫禄と力の波動を全身に感じていた。

「私も救血の乙女様の放つオーラに圧倒されて、今にもひれ伏しそうでした・・・。でも、思っていたより親しみやすい印象でしたね。代表のことも、かなり好意的に見てくれていたようですし、良かったですね。」

「ええ。私もあれはとても嬉しかったわ。」

初対面で、しかも本人とは比べるまでもないか弱い人間の自分にあそこまで友好的に接してくれてフィアナは心の底から喜び、頬を赤らめて俯きながら笑顔を見せた。

「それで、今後の救血の乙女様への対応はどうなさいますか?」

「ひとまず今はカリアードに任せましょ。緊張気味だけど、彼の許ならミラ様も吸血鬼救済会ここのことを多く学べるでしょう。」

「その・・・の件は、まだ話さないほうが・・・?」

「ええそうね。今はまだ、その時じゃないわ。でも、ミラ様ならきっと分かってくれるはずよ。あの方は、人間と吸血鬼のことをとても大事に思ってくれてるみたいだから。」

「分かりました。では、そのようにいたします。」

部下の返答にニコッと微笑んで答えるフィアナだったが、その笑みには純粋さの裏に何処か不気味さが漂っていた。




◇◇◇




「ここがミラ様がお泊りになられる部屋です。」

カリアード君に案内されて連れてこられたのは、建物の3階の一室。

真ん中にテーブルと窓際にベッドと簡素なものだったが、ベランダから王国のシンボルである宮殿が一望できて、最高の眺めだった。

「いい景色、だね。お城がこんなにドン!と見れるなんてさ。」

「・・・・・・・。そうでもないですよ。」

「ん?」

「あそこにいる連中が、吸血鬼のみんなから搾り尽くした血で自分勝手な欲を満たしているかと思うと、反吐が出ますよ・・・。」

窓から見える宮殿を、カリアード君はまるでゴミを見るような軽蔑しきった眼差しで睨みつけていた。

そんな彼のことを、あたしはなんだか怖く思ってしまった。

「カリアード君は、人間のこと、嫌い・・・?」

「少なくとも上級の連中は好きではありませんね。アイツ等、吸血鬼のことを健康食品の原料になる家畜程度にしか見てないですから。」

「そっか・・・。」

「でもだって、そんな奴らが心を入れ替えて吸血鬼のことを大切に思って、彼等と対等な関係を築こうとするために頑張っていますからね。クソみたいな奴らでも、切って捨てるみたいなマネはしたくないですね。」

カリアード君の顔は、王国の上流階級への怨みのこもった表情から、困難なことに真剣に取り組むやる気に満ちた顔にガラッと変わって、あたしの目にはそれがとっても輝いて見えた。

「カリアード君って、本当に素敵だね。」

「みっ、ミラ様・・・!?」

あっ、やべ!!

うっとりするあまりつい本音が・・・!

「いっ、いや違うからね!!今のはカリアード君が真面目でいいなって思っただけで、別に変な意味なんかないからねッッッ!!!」

「あっ、いや、まさかミラ様にそのようなお言葉をかけられるとは思ってもみなかったので・・・。あのぉ、とはどういう意味でしょうか?」

あたしが勝手に墓穴掘っただけか~~~いッッッ!!!

「べっ、別に!意味なんか特にないよ!!カリアード君がマジでいいこと言ってるから“ああ、いいなぁ”って思っただけだから!」

「はぁ・・・。」

カリアード君がどうにも腑に落ちない様子だったけど、それ以上は何も言及してこなかったので、ひとまずは上手くごまかせたと思うことにした。

「わっ、分かりました!では私は代表と打ち合わせがあるのでこれで失礼します。それが終わりましたら私がご同伴して、屋外での活動に参りますので少々お待ちください。」

「うっ、うん!よっ、よろしくお願いします!!」

大きくお辞儀したあたしに、カリアード君もお辞儀し返すと部屋のドアをバタンと閉めてそのまま1階へと降りて行った。

足音が聞こえなくなると、あたしは靴を履いたままベッドにバタン!と倒れ込んだ。

はぁ~~~!!緊張したぁ~~~!!

カリアード君の前だとホントにドキドキして、どうにも本調子が出せないな~。

何とか平常心を保って、この団体のことをいっぱい勉強しないとな。

そうでなきゃ、わざわざ王都まで来た意味なんかないからな・・・。

カリアード君と一緒に、お昼から一生懸命勉強しないと。

カリアード君と一緒に・・・。

カリアード君と一緒に・・・?

・・・・・・・。

・・・・・・・。

ちょっと待って!!

お昼からカリアード君と街での活動勉強するって、それって最早デートなのでは!?!?

待ってどうしよどうしよ!?

化粧した方がいい!?

服はもっとオシャレなものにした方がいい!?

それ以前に何話すよ!?

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

考えが全っ然まとまんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

色んな考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返して、あたしはベッドの上で丸まりながら足首から先をバタつかせた。

やっぱあたし、もうダメかもしれんね・・・。
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