cat statue~猫の石像~

むきらお

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序章

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私は猫の石像である。

もともとは人でありました。
大好きなつれあいと楽しく幸せに過ごしていました。
私が病で倒れた時、つれあいは嘆き悲しみ、生きる気力さえ失ってしまった。
その姿を見た私は
「悪霊になってもそばにいたい」
天上へ逝くことを拒みました。

神は言いました。
「そんなに共にいたいのなら、我の眷属として姿を変え、つれあいの命が尽きるまで側に居るとよい。
しかし、再び新たな生として生まれ変わることは出来ぬが良いか?」
私は何度も頷き、そばにいたいと乞いました。

そして、猫に姿を変えつれあいの残りの人生を看取りました。

しかし、私は自分勝手でした。
再び生を受け、またつれあいと共に過ごしたいと思ってしまったのです。
眷属として使命も何もかも投げ捨て、
日々、つれあいの事しか考えていませんでした。

そんな私を神は怒り、
「石像となり、話は出来ず、自分で動けず、人と共にあり、己を見直すがよい」
と、猫の石像にしてしまわれました。

そして、地上に落とされました。

その日は空が茜色に染まり、遠くに電車の音が聞こえた。
「あぁ、もうつれあいと居られないならどうでもいいわ」
沈みゆく太陽をボーッと見ていた。
    
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