ぼく、パンダ

山城木緑

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8.大丈夫

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 祐吾はまずシェンシェンの体力回復に努めた。
 不安があったが、園に戻ってからもどういうわけかシェンシェンは何でも言うことを聞いてくれる。
 ご飯も食べてくれるし、寝るぞーと言ったら、ぴっとりくっついてすやすやと寝てくれるのだ。
 よしよし、良い子だ。偉いぞ、シェンシェン。自分のお腹に頭をのせて眠るシェンシェンの頭をずっとずっと撫で続けていた。
 改めてシェンシェンの検査が行われる日、祐吾は竹林の隣に若い飼育員たちとやぐらを組み始めた。

「早坂さん、マジでここで寝るんすか?」

「ああ、しばらくはな。まだまだシェンシェンは子供だ。親もいねえんだから、俺は父親みたいなもんだしな」

 若い飼育員たちがやぐらの骨組みをてきぱきと組んでいく。いやあ、休憩しないともたないな。若いってのはつくづく羨ましい。祐吾は胡座をかいて、若い衆が笑みを浮かべながら組み立てるのを見ていた。

「よーし、わりいわりい。休憩終わり! 手伝うぞ」

「いやいや、早坂さん、もう終わりっすよ」

 やれやれと若い飼育員たちが肩をすくめた。悪い悪い。身体のあちこちが痛くてよ。
 みんなでやぐらの屋根の下、おにぎりをほおばった。ここからはフラミンゴの池がよく見える。シェンシェンはあの桃色の鳥はなんだろうって興味津々だろうな。

「ここで一緒に寝ようって実践しちゃうのが、やっぱり祐吾さんやわ」

「ほんっと。シェンシェンは幸せっすよ。ま、俺はやりたくてもワニなんで寝てる間に食べられてるかも」

 佐々木だけじゃなく、堂ヶ芝動物園の飼育員はみんな担当の動物に愛を注いでいる。人が持つあったかさをみんなが持っている。こういう若いやつらと一緒にいると、この混沌とした世の中も捨てたもんじゃないと思える。

「動物たちもよ、お前らも俺ぁ大好きだよ。俺はお前らのこと一生忘れねえよ」

 何だか込み上げるものがあり、感傷的なことを口走ってしまう。

「なんすか。中国から帰って早々、そんなお別れみたいな台詞。早坂さん全然そんな台詞似合わねえすよ」
「ほんまに。早坂さんは動物たちと百歳になっても触れ合ってて、俺らのほうが先に引退してそうっすわ」

 祐吾は空を見上げた。うすい雲にかかった太陽がさんさんと降り注ぎ、今日もここの動物たちに元気を与えている。

「シェンシェンがよ、この堂ヶ芝を救ってくれるからよ。お前らがもっと誇りを持てる動物園にな」

 みんなでぐびぐびと飲み干した麦茶がやけに美味かった。
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