ぼく、パンダ

山城木緑

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5.かなしいよう

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 もう、すごくすごく疲れていたんだ。
 遠くのお空からおかあしゃんが呼んでいる気がした。もうこのまんま眠っていれば、怖がらなくて済むのかな。おかあしゃんのところに行けるのかな?
 そう思いながら、じっと目を閉じていたんだ。
 ずっと揺れていた。
 気がついたら、早坂しゃんと佐々木しゃんが隣にいた。佐々木しゃんはこっくりこっくり眠ってる。
 頭がぼぅっとして、ぼくはそれくらいしか考えることもできなくなってた。
 うっすらと深い眠りに落ちていく。おかあしゃんがぼくに口移しで葉っぱを食べさせてくれるんだ。竹の葉の音が心地よいんだ。竹はね、綺麗なお水のような匂いがするんだ。とっても落ち着くんだ。この香りが……。
 あれ?
 ぼくは目を覚ました。ほんのすこし、お家の匂いがしたんだ。鼻を檻の外に出してみる。やっぱりお家の匂いがする。
 お家に帰りたいよう。ずっとそう想い続けてきた。夢じゃない。お家が近い。ぼくの、ぼくのお願いが叶ったんだ。狭い箱の中でぼくはウキウキしたんだ。

「早坂しゃん、ぼくのお家が近くにあるよ」

「佐々木しゃん、ぼくのお家に竹の葉があるから見せてあげる。ぼくはそれを食べるんだよ」

 ぼくは二人にそう伝えたんだ。二人はぼくの背中をさすって、嬉しそうにしてた。
 早坂しゃんがぼくを抱っこした。ぼくのお家のほうに歩こうとしてる。もう、ここを登ったところにぼくのお家がある。
 ぼくは早坂しゃんの抱っこから降りようとしたんだ。ぼくでも何回も滑って転んだのに、早坂しゃんは若くないからきっと滑って転んじゃうよ。四本足のぼくでも転ぶのに。
 最初はたくさんの木と草があって、進むのが大変だった。ぼくも早坂しゃんと一緒に草を掻き分けたんだ。
 早坂しゃん、ダイジョーブ、ダイジョーブダゾ。もうすぐ竹ばっかりになって進みやすくなるからね。
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