甲賀忍者、甲子園へ行く【地方予選編】

山城木緑

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合宿

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「次ぃ、月掛ぇ! セカンド行くぞ!」

 月掛充つきかけみつるは地面に両手をつき、膝を曲げ、まるで陸上のスタート体勢のようだ。

 くっ、いちいち突っ込んでたら心がもたねえ。
 副島は何も言わずにセカンドへゴロを打った。少し緩めの詰まった当たり。セカンドとして、このゴロは捌いて欲しい。そんな打球だった。

「参る」

 月掛が跳ぶ。ボテボテのゴロを目指してグラブを差し出し、捕球した。距離にして4mほど飛んだか。月掛は捕球したまま、くるくると2回転し、着地した。どうだと言わんばかりに、にやりと笑う。

「いやいやいや、ちがーーう」

 月掛が首を捻る。確かに最短の距離でボールを捕ったはずだが? そんな表情だ。

「一塁に投、げ、る、の。ランナーがいたら二塁とかホームとか。打球にどんだけ早く追いつくかじゃねえの。何度も教えてるだろ」

 月掛は口を尖らす。

「なんだ、文句あんのか、月掛ぇ!」

「ゴロは面白くねえっすよ。上、俺の上のボールは死んでも捕ってやりますわ。それはノーバンで捕りゃアウトでしょ?」

 グラブをばしばし叩いて、まるで頭上へライナーを打てとでも言っている。

「てめえ、じゃあ捕れなかったらジュース奢りだぞ」

 副島は月掛の遥か頭上へライナーを打った。ノックの手元が狂って、ほぼライトライナーだった。とてもセカンドが捕れる高さではない。
 先輩を挑発したお前が悪い。副島がそう思いながら打球を見送ると、ロケットのように月掛が空へ飛び上がった。
 副島はジャンプした人間が太陽と重なる姿を人生で初めて見た。月掛はがっちりとボールを掴んでいる。

「っしゃー! 捕ったった!」

「……お、おぉ……。お、おし、まあ、うん、オッケーだ」
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