甲賀忍者、甲子園へ行く【地方予選編】

山城木緑

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セカンド月掛充

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「親父、甲賀三家って知ってるか?」

 梁に足を引っ掛け、ぶら下がってる親父に充が訊ねた。

「三家? 桐葉、滝音……あと、なんだ、白鳥だったっけか?」

「ちがう、白烏だ」

 充が天井にジャンプしながら応えた。

「あぁ、そうだったな。どうかしたか?」

「そいつらに会った。生意気だった。俺が現代の猿飛佐助だって言ったら馬鹿にしやがった」

 親父ははっはっはと大声で笑った。

「そうか、言わせとけ。確かに甲賀三家は刀術、手裏剣、そして軍師として歴史にも名を残した。ただ、身のこなしに関しては、我が月掛には敵うまいよ。子のいなかった佐助様が子として取るなら、充、お前であろう。他に佐助はおるまい」

 充は親父に向けて、跳びながら親指を立てた。さすが親父。良いことを言う。

 今日は父子ともに興奮を押さえられないでいた。今夜は『伝説の十勇士、猿飛佐助』という番組が放送される。普段、テレビを観ることはないが、今日だけはこれほど観たい番組はないと、一週間前から父子ともに気にしていた番組なのだ。

「充、始まるぞ。テレビを点けよ」

「おう」

 久しぶりに月掛家のテレビが点いた。充は座してテレビに向かった。そわそわと落ち着かない。今日は飯も風呂も19時には済ませていた。

 だが、明るく画面を点したテレビを観て、父子は、うむん、とすっとんきょうな声を出した。テレビには野球というスポーツが映っていた。画面の上段にテロップが流れている。

『野球中継延長のため、伝説の十勇士猿飛佐助は野球中継終了後に放送いたします』

 親父は溜め息をつき、腕を組んだ。

「はあ、まあ充よ、仕方ない。この野球という競技は9回が終われば競技終了となる。今その9回である。しばし待とう」

 充も心の中で溜め息をついていた。早くこのスポーツが終わらないものか。テレビではなかなか忍者についての番組はない。忍ぶ職務であるがゆえ仕方ないのだが、珍しく忍者についての放映があると充はずっと前から楽しみで仕方なかったのだから。それも憧れの猿飛佐助の番組なのだ。

 その時だった。実況の声に充は驚かされることになる。
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