26 / 237
ライト東雲桔梗
4
しおりを挟む
好きな人……。
いないことはなかった。ただ、桔梗が想いを寄せる相手は、サッカー部キャプテンの3年生だった。中1なんかに興味は無いだろう。とても何かアクションをかける気にはなれなかった。
サッカー部はイケメン男子が多く、見学する女子が後を絶たない。
ある日、桔梗はクラスメイトに誘われてサッカー部の見学に行った。桔梗もキャプテンを見られる喜びでついていくと、部員のみんながこちらをちらちら見ながら練習しているのに気付いた。
「やだ、相澤くん、こっち向いてる」
クラスメイトがキャーキャーと黄色い声を上げている。相澤くんは同級生では断トツの人気で、何度も告白を受けていると聞いたことがある。その相澤くんがちらちらとこちらを見ている。クラスメイトではなく、明らかに私を見ている。桔梗はそう思った。
桔梗はいったん目を伏せ、また顔を上げた。キャプテンを目で追う。キャプテンは必死にボールを追い、チームメイトのプレイに目を光らせていた。チームメイトたちはやはりチラチラとこちらを見ながら練習している。
キャプテンがその様子を見て、一喝した。
「お前ら、やる気ねえなら帰れ。大会近いの分かってんのかよ」
キャプテンは迷惑そうに桔梗たちがいるギャラリーの方を睨んだ。ギャラリーの女子たちが申し訳なさそうに目を背けていく。キャプテンの目は真剣だった。牽制する目線に皆が気圧されていく中、桔梗も目が合った。桔梗がキャプテンの鋭い目線にどきりとした瞬間、桔梗は「あれ?」と首を傾げた。キャプテンは桔梗と目が合うや否や、顔を真っ赤にして目を背けた。
桔梗はサッカー部のキャプテンに告白された。嬉しくて全身が熱くなった。
秋にキャプテンと遊園地に遊びに行った。キャプテンから向けられる笑顔に桔梗は更なる笑顔で応えていたが、途中から園内を歩く人々の、いや、園内を歩く男性の視線が全て自分に向けられているのが分かった。
お母さんの持っている本を思い出した。最近になってやっと一度読んだことがある。『くノ一忍法帖』という。一度頁を開いて、顔を赤らめて閉じた本だ。中学生になって、やっとはずかしながらも読めるようになった。
男は情けない生き物だ。読んでそう思った。どんなに屈強な男でも性の前には無力だ。いつかお母さんが言った「女はピラミッドの頂点なのよ」という言葉が浮かんだ。
あれだけ憧れたキャプテンの顔がただにやにやしているだけに見えてくる。世の中の男を手玉に取ることができるんじゃないか。桔梗は初めてそう感じ、キャプテンの笑顔に軽く笑うだけで残りの時間を過ごした。
誰も彼もが桔梗に恋をした。高校生になると、身体も発育し、桔梗を目で追う者は中1の頃とは比べ物にならないほどに増えた。あの頃に憧れたキャプテンは頭の片隅にも残っていなかった。
いないことはなかった。ただ、桔梗が想いを寄せる相手は、サッカー部キャプテンの3年生だった。中1なんかに興味は無いだろう。とても何かアクションをかける気にはなれなかった。
サッカー部はイケメン男子が多く、見学する女子が後を絶たない。
ある日、桔梗はクラスメイトに誘われてサッカー部の見学に行った。桔梗もキャプテンを見られる喜びでついていくと、部員のみんながこちらをちらちら見ながら練習しているのに気付いた。
「やだ、相澤くん、こっち向いてる」
クラスメイトがキャーキャーと黄色い声を上げている。相澤くんは同級生では断トツの人気で、何度も告白を受けていると聞いたことがある。その相澤くんがちらちらとこちらを見ている。クラスメイトではなく、明らかに私を見ている。桔梗はそう思った。
桔梗はいったん目を伏せ、また顔を上げた。キャプテンを目で追う。キャプテンは必死にボールを追い、チームメイトのプレイに目を光らせていた。チームメイトたちはやはりチラチラとこちらを見ながら練習している。
キャプテンがその様子を見て、一喝した。
「お前ら、やる気ねえなら帰れ。大会近いの分かってんのかよ」
キャプテンは迷惑そうに桔梗たちがいるギャラリーの方を睨んだ。ギャラリーの女子たちが申し訳なさそうに目を背けていく。キャプテンの目は真剣だった。牽制する目線に皆が気圧されていく中、桔梗も目が合った。桔梗がキャプテンの鋭い目線にどきりとした瞬間、桔梗は「あれ?」と首を傾げた。キャプテンは桔梗と目が合うや否や、顔を真っ赤にして目を背けた。
桔梗はサッカー部のキャプテンに告白された。嬉しくて全身が熱くなった。
秋にキャプテンと遊園地に遊びに行った。キャプテンから向けられる笑顔に桔梗は更なる笑顔で応えていたが、途中から園内を歩く人々の、いや、園内を歩く男性の視線が全て自分に向けられているのが分かった。
お母さんの持っている本を思い出した。最近になってやっと一度読んだことがある。『くノ一忍法帖』という。一度頁を開いて、顔を赤らめて閉じた本だ。中学生になって、やっとはずかしながらも読めるようになった。
男は情けない生き物だ。読んでそう思った。どんなに屈強な男でも性の前には無力だ。いつかお母さんが言った「女はピラミッドの頂点なのよ」という言葉が浮かんだ。
あれだけ憧れたキャプテンの顔がただにやにやしているだけに見えてくる。世の中の男を手玉に取ることができるんじゃないか。桔梗は初めてそう感じ、キャプテンの笑顔に軽く笑うだけで残りの時間を過ごした。
誰も彼もが桔梗に恋をした。高校生になると、身体も発育し、桔梗を目で追う者は中1の頃とは比べ物にならないほどに増えた。あの頃に憧れたキャプテンは頭の片隅にも残っていなかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。




ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる