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キャッチャー滝音鏡水
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南東からの法螺貝が鳴り、北からの法螺貝がそれに続いた。
鏡水は胸に手をあてていた。
「鏡水、良いか?」
「ああ」
父が法螺貝を吹いた。
始まる。
腰に青い布が揺れている。白烏は白、桐葉は緑。お互いの布を奪うと、敗けとみなす。
鏡水は森を駆けた。
駆けながら、落ち着いて戦況を予測した。
全て、地形は把握した。
先程、手裏剣の軌道も記憶した。速度は毎時およそ142~4㎞か。桐葉家の剣の長さも頭に入れてある。おそらく刀の刀身は138~142㎝ほど。
南東の法螺貝と北の法螺貝の時間から、各々の準備時間を2分とし、二人の速度を逆算する。
鏡水は出足で遅れたため、その分を差し引くと、南東の桐葉家が最も速い、そして、鏡水、白烏家の順で森の真ん中に辿り着くだろう。
おそらくは森の真ん中で出会う前に、白烏家が手裏剣を投げるはずだ。手裏剣投げは接近戦にはしたくない。
先ずは先に見えた桐葉家へ放つ。そして瞬時にこちらへも手裏剣を放つだろう。あわよくば、その二投で終わらせようと。
だが、投げる瞬間、速度を時速3㎞緩め、大木に身を寄せる。そうすれば、一投目の手裏剣を避けられるはずだ。
鏡水のシミュレーションは完璧であった。
演習の初めに出会った際、白烏結人と桐葉刀貴の武器は明らかに分かっていた。よって、お互い、結人は刀貴の刀を、刀貴は結人の手裏剣を警戒した。
だが、くない一本差した鏡水が何者なのか、結人も刀貴も推し測れなかった。
二人とも鏡水のくないから、接近戦に強い者と判断した。見謝っていた。鏡水の最大の武器は脳であることを。
鏡水の予測通り、結人が森の中央で出会う前に手裏剣を二投放った。鏡水は大木に身を寄せ、それを避けた。
初投で鏡水を仕留め損ねた結人は、桐葉刀貴に狙いを絞ったようだった。刀貴は、見えない位置から来る手裏剣を最初は辛うじて刀で弾いたものの、防御に徹してその場に留まった。
鏡水はそれを読んでいた。
刀貴は目の前に木があまり繁っていない場所を選ぶ筈だ。木の影に隠れて曲がり来る手裏剣の方が対応しにくい。それならば……あの位置に向かうはずだ。
鏡水は胸に手をあてていた。
「鏡水、良いか?」
「ああ」
父が法螺貝を吹いた。
始まる。
腰に青い布が揺れている。白烏は白、桐葉は緑。お互いの布を奪うと、敗けとみなす。
鏡水は森を駆けた。
駆けながら、落ち着いて戦況を予測した。
全て、地形は把握した。
先程、手裏剣の軌道も記憶した。速度は毎時およそ142~4㎞か。桐葉家の剣の長さも頭に入れてある。おそらく刀の刀身は138~142㎝ほど。
南東の法螺貝と北の法螺貝の時間から、各々の準備時間を2分とし、二人の速度を逆算する。
鏡水は出足で遅れたため、その分を差し引くと、南東の桐葉家が最も速い、そして、鏡水、白烏家の順で森の真ん中に辿り着くだろう。
おそらくは森の真ん中で出会う前に、白烏家が手裏剣を投げるはずだ。手裏剣投げは接近戦にはしたくない。
先ずは先に見えた桐葉家へ放つ。そして瞬時にこちらへも手裏剣を放つだろう。あわよくば、その二投で終わらせようと。
だが、投げる瞬間、速度を時速3㎞緩め、大木に身を寄せる。そうすれば、一投目の手裏剣を避けられるはずだ。
鏡水のシミュレーションは完璧であった。
演習の初めに出会った際、白烏結人と桐葉刀貴の武器は明らかに分かっていた。よって、お互い、結人は刀貴の刀を、刀貴は結人の手裏剣を警戒した。
だが、くない一本差した鏡水が何者なのか、結人も刀貴も推し測れなかった。
二人とも鏡水のくないから、接近戦に強い者と判断した。見謝っていた。鏡水の最大の武器は脳であることを。
鏡水の予測通り、結人が森の中央で出会う前に手裏剣を二投放った。鏡水は大木に身を寄せ、それを避けた。
初投で鏡水を仕留め損ねた結人は、桐葉刀貴に狙いを絞ったようだった。刀貴は、見えない位置から来る手裏剣を最初は辛うじて刀で弾いたものの、防御に徹してその場に留まった。
鏡水はそれを読んでいた。
刀貴は目の前に木があまり繁っていない場所を選ぶ筈だ。木の影に隠れて曲がり来る手裏剣の方が対応しにくい。それならば……あの位置に向かうはずだ。
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