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1章

15.道具屋ミレイ

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 宿屋なのだが昨日は、余りにも疲れていて話を聞く気にもなれなかったので、寝れればいいと適当に払って眠ってしまった。
 それなので、早朝に起きた時に宿屋の事を教えてもらった。
 一泊銀貨二枚200リルで朝飯付、昼と夜はお金さえ払ってくれれば出せるそうだ、早すぎたり、遅すぎたりで提供できない場合がありますとのことだった。
 宿屋で朝飯、固いパンとあまり味のないスープを食べて、おっさんのところへ行った。

「おっさん来たぞ」

「よく来る気になったな、あれだけやられたというのに」

「そういうなら、そこまでやるなよ!それに、このままやり返せず逃げる事なんて出来ない」

 一矢報いる為に。

「まあ、強がるのはいいが、そんな様じゃな」

 と店に置いてあった、剣を投げ渡されたのだが、手に取った途端激痛が走り、剣を取りこぼした。

「それじゃ訓練できねーな。仕方ないから右隣に道具屋のばあさんっていう名前の人がいるからいってこい」

「ばあさんって珍しい名前だな」

「まあいいからさっさといってこい」

 と店を出たモトチカを送り出すと、ラルスは不気味な笑みを漏らしていた。
 道具店はもう開いていたので入って行った。

「すいません、ばあさんっていう人いますかー」

 といったら小さな陶器の入れ物を投げられ頭に直撃した。

「いってー、何をするんだ!」

「小僧、私をばあさん呼ばわりとは、いい度胸だ」

「隣の武器屋のおっさんに、ばあさんってのが名前だと言ってたぞ」

「ほう、あの馬鹿か」

 なんだろう、シュシルが怒ってる姿と重なって見える。
 
「モトチカだ、名前を教えてもらえますか?」

「ミレイだ。小僧は何しに来た?」

 ミレイさんは、おっさんにばあさんと言われてるが随分若く見えるけど、何歳なんだろう?
 同じ年代だったら、すごく綺麗だったんじゃないかな?
 しかし、シュシルといいミレイさんも綺麗なのに性格がな・・・裏表のない性格と見れば良いのか?・・・

「小僧、話を聞いているのか?」

 考え事をしていた俺に、木の棒で頭を叩いてきた。

「いて、棒で叩かなくてもいいだろう!ちょっと両手が痛くてまともに剣が握れないんだよ」

「ちょっと見せてみなさい」

「ちょ。イタイイタイ」

 容赦なく両手をぐりぐりと触られる

「男がギャアギャア騒ぐんじゃない。しっかしどうやったらこんな酷い状態になるのかね」

「あー昨日、おっさんに剣の使い方の教えを乞うこと行ったら、いきなり実技訓練始まって剣が握れなくなるまで、やらされてたらこの状態になった。今日の訓練出来ないからここに行けと言われて来たんだよ」

「ほう、あいつがねー教える気になったのかい」

 なにかを考え込んでいた。

「一撃も当てられないままじゃ、俺の気が済まないし、おっさんのあの顔に腹が立つ!だからミレイさんこの手どうにかならないかい?」

「仕方ない、スキル使うがいいな」

 よく分からずに、頷いてしまったが動くなと言われ俺の両手の上に、手を置き言葉を紡ぎ出した。
 両手が温かくなり、痛みが引いてきた。

「これで、治ったろ?」

「ええ、痛みが無くなった。ありがとう」

「後これも持っていき、寝る前に貼っておけばさっきのようにはならない、小僧、見かけたことないがどこから来たんだ」

「東の方から来て、昨日ここに辿り着いて、冒険者になったんだがおっさんを紹介された」

「辿り着いたその日に、あいつに扱かれるとは」

「酷い目にあったよ」

 その言葉にミレイさんは笑みを漏らしていた

「小僧、治療費はここで働きな扱き使ってやる」

「待って。お金で払うよ」

「治してやったのだから言うこと聞きな」

 なんだろう、どことなくおっさんと似てる気がする。
 仕方なく、了承したがどうしても悔しいので、おっさんと同じ扱いにした。

「ばあさんいってくるよ」

「ばあさんと呼ぶんじゃない!」

 さっき返した陶器をまた投げてきたので、今度は掴み取った。

「これはおっさんに投げるからもらってくよ。訓練終わったらまた来るよ」

「こら、まちな」

 と言っていたが、そそくさと道具屋を後にしておっさんのところに向かった。

「おっさん戻ったぞ」

「遅かったなどうだった?」

 と言った時に、ミレイさんに投げられた陶器を貰っていたので投げたのだが、頭に当たらず陶器を掴まれた。

「チィ、ばあさんって言ったらそれをぶつけられたよ」

 どうなるかは予想していたのだろう、笑みを溢していた。

「不意打ちでも、これくらい掴めなきゃまだまだだな。まあ腕も治ったよう出し始めるか」

 裏庭に移動し、今日の訓練が始まった。
 昨日と、同じく剣のみでの実技なのだが、若干目が慣れたのか避けられるようにはなったが、こっちの攻撃が全く当たらない。
 
「坊主よ、そろそろ掠るくらいはできないかね?」

「だったらそこで動くな」

 荒い息使いでとぎれとぎれに言った。
 おっさんは、笑みを浮かべ当ててみろと言わんばかりに動きを止めた。
 動きを止めた相手に、何度斬りつけても木剣で防がれ、力を利用され反撃される。
 全身に疲労が溜まり息も荒く、木剣を持つ手も震えだし、なんでこんなに体力が無いんだと思った。
 その時、ふと思い出した、余計な力が入るほど筋肉が硬くなり動きが遅くなる、とはいっても、そんなのがすぐに実践に移せたら苦労はしない。
 とりあえず、深呼吸をして余計な力を入れないよう脱力し、腕だけの力ではなく全身の力を使うよう、もう何度も動けないのだからと開き直って、どうせ当たらないだろうと、人相手に使いたくは無かった突きで当てに行った。

 ラルスは、それを見て関心していた。
 ただでさえ、下手なやつが無駄な動きをして、無駄に力を込めるからさらに遅くなる。
 そんな、典型的な初心者の行動をたった二日目で脱力させるとは思わなかったのだった。
 教えられもせず、よくそこに辿り着くとはな面白いやつだと、そこに、油断があったのだろう、モトチカが今まで使ってこなかった突きという初見の攻撃で避けきれず掠ってしまった。
 
「これでも、掠っただけか」

 体力の限界が来て、そのまま、倒れこんで大の字になった。

「坊主、突きを今まで使わなかったのはなんでだ?正直、斬るよりも慣れている感じだったぞ」

「人相手だと木剣であっても突きは簡単に刺し殺せるから使いたくなかった。慣れていたのは斬ると、骨に当たって剣が刃こぼれしたり折れたりしやすいと思ったからあまり使わず、ほとんど止めだけに喉や心臓を突き刺してた」

「だから、妙に剣先だけ使われてたわけか。しかし、坊主程度の突きじゃ俺は死なないからもっと使ってこい」

 と頭を殴ってきた。

「いってー。いちいち殴ってくるじゃねー」

「坊主、今日の訓練は終わりだ。この後はどうするんだ?」

「この後は、ばあさんのところいって治療代代わりに働くことになった」

 それを聞いて、爆笑していた。

「あのばあさんに、扱き使われるのか大変だな」

「おっさんの所為だろうが!」

「坊主、お前が間抜けだからだよ」

 先に、治療費払っておけばこんなことには・・・
 昨日、預けていた武器を受け取り、剣は持ちやすいよう皮が巻かれ、ボロボロのナイフは修理され綺麗になっていた。
 いくらだ?と聞いたが、いらん良いからさっさと行けと追い出された。

「ばあさんいるかい」

 とまた別のものを投げてきたが、予想してたので掴み取った。

「腹の立つ小僧だ」

「分かっていれば簡単さ。それで俺に何をやらせるんだ?」

「小僧は、冒険者なのだろう。外に行った時にでも薬草類取ってきな。実物はこれだから間違うんじゃないよ」

薬草、消毒草、止血草、解熱草を取って来いとのことだった。

「薬草と消毒草は見たことあるんだけど、止血草と解熱草って見たことない、同じところに生えてるの?」

 止血草と解熱草を出して見せてくれて、どこら辺に群生してるのかを教えてもらい、スネクがよく出るからと解毒ポーションと回復ポーションを三つくれた

「まあ、あまり期待してないけど。頑張ってくるんだな」

 思ったよりも、鑑定があるから楽な仕事だな。
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