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「もちろん恋愛小説よ? 糖度高めの」
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「もちろん恋愛小説よ? 糖度高めの」
何が疑問なの? という顔で、アンジェリカはエイデンを見るが。
「いや、だから、上下とか戦争とかって……」
エイデンの混乱は加速するばかりだ。
「ああ、上下っていうのはどっちが上になるか……要するに抱くか抱かれるかを賭けて勝負してるの。宰相閣下も第四王子殿下も頭いいでしょ? 一つ前の巻だとどっちの考えた政策が結果を出せたかで、争うというか競ってて」
結構詳しく書いてあるから政治の勉強にもなるのよ、とアンジェリカは誇らしげだ。
「あ、上下ってそういう……ちなみに勝敗は」
何となく納得したエイデンは、勝敗が気になり始める。
「宰相閣下の全戦全勝。判定の難しいものだと言葉巧みに丸め込んじゃうし」
今のところ結果は落ち着くところに落ち着いている。
「結果が見えてるなら、手に汗握らなくてもよくないか?」
エイデンが情緒がちょっと足りなさそうなことを言い出す。
「それがそうでもないのよ、幼少時から愛でてきた第四王子殿下が、成人してから男の色香をまとうようになってきてて、それに宰相閣下がくらっとくるような描写が出て来てて!」
宰相×第四王子固定派は、いつか立場が逆転してしまうのかとハラハラするのだ。
「ちょっと待て」
複雑な顔をしつつも、それまで黙って二人の会話を聞いていたジーンが、思わず割って入る。
「何ですかジーンさま」
「『幼少時から愛でて』とはどういうことだ」
いくら物語とはいえ、それはさすがに看過しがたい。
「大丈夫です、成人するまでは本番無しです! それまでにがっつり開発されてますけど!」
安心して下さい、とアンジェリカは返すが。
「………………開発?」
大丈夫と安心の意味を問いたくなるジーン。
「えーとですね、男性相手の閨教育も必要だと偽って、お触り系をあれこれと」
無垢な体を自分好みに仕立て上げていくらしい。
「どう偽ればそんなものが必要になるんだ……」
ジーンは頭を抱える。
「そこは虚構の世界なので何とでもなりますよ。王族の方って基本的にみんな綺麗だし。特に第四王子殿下は華奢だし中性的なお顔立ちだし、政略的にお断りできないような他国の王族から妻に迎えたいみたいなのが……実際にもあったりするんですか?」
虚構の世界から現実の世界に話を繋げようとするアンジェリカ。
「貴族だと男同士で政略結婚とか普通に有る訳ですし」
バナンゼーロ王国では、同性婚も認められている。平民同士は一対一のみだが、貴族であれば爵位に応じて複数の相手と婚姻できる。寄付という名の功徳を積むと上限突破も可能だ。
「聞いたことないし、王子しかいないのならまだしも、未婚の王女が二人もいるのに、わざわざフォート兄上を妻に迎えたいと言ってくる国があると思うか?」
正確には未婚の王女は三人いるのだが一人は婚約者有りである。
「えー、第四王子殿下が他国の王子に口説かれて攫われそうになって、宰相閣下が大層お怒りになって取り戻した後、熱い夜を過ごす話もありましたよ?」
確か十二巻目、とアンジェリカは記憶をたどる。
「…………」
王子が攫われかけるという国を揺るがす大事件も、恋愛小説だとスパイス程度なのかと、絶句するジーン。
「あ、ちゃんと成人後ですよ」
ジーンの無言を、幼少時に熱い夜を過ごしたのか? という疑いだと解釈したアンジェリカが言い添える。
「その五巻前の七巻目で成人してます。その七巻目のラストシーンで初めて結ばれるんですけど、すっごい良かったですよ。十八歳の誕生日を迎えた夜、月明かりの差し込む湖のほとりの別荘で満を持して初夜を迎える二人!」
何度も読み返したアンジェリカは暗唱しそうな勢いである。
「初めてなんだけど開発されきった体は正直で! 可愛らしく喘いじゃう訳ですよ。挙句に、初めてだからと加減してた宰相閣下に第四王子殿下が潤んだ瞳で『もっと』っておねだりして、たがが外れた宰相閣下が叩きつけるように腰を激しく振っ……」
「アンジェリカ殿!」
朝の爽やかな光の下で聞く話題ではないと、イーグスが叫ぶように割って入った。
何が疑問なの? という顔で、アンジェリカはエイデンを見るが。
「いや、だから、上下とか戦争とかって……」
エイデンの混乱は加速するばかりだ。
「ああ、上下っていうのはどっちが上になるか……要するに抱くか抱かれるかを賭けて勝負してるの。宰相閣下も第四王子殿下も頭いいでしょ? 一つ前の巻だとどっちの考えた政策が結果を出せたかで、争うというか競ってて」
結構詳しく書いてあるから政治の勉強にもなるのよ、とアンジェリカは誇らしげだ。
「あ、上下ってそういう……ちなみに勝敗は」
何となく納得したエイデンは、勝敗が気になり始める。
「宰相閣下の全戦全勝。判定の難しいものだと言葉巧みに丸め込んじゃうし」
今のところ結果は落ち着くところに落ち着いている。
「結果が見えてるなら、手に汗握らなくてもよくないか?」
エイデンが情緒がちょっと足りなさそうなことを言い出す。
「それがそうでもないのよ、幼少時から愛でてきた第四王子殿下が、成人してから男の色香をまとうようになってきてて、それに宰相閣下がくらっとくるような描写が出て来てて!」
宰相×第四王子固定派は、いつか立場が逆転してしまうのかとハラハラするのだ。
「ちょっと待て」
複雑な顔をしつつも、それまで黙って二人の会話を聞いていたジーンが、思わず割って入る。
「何ですかジーンさま」
「『幼少時から愛でて』とはどういうことだ」
いくら物語とはいえ、それはさすがに看過しがたい。
「大丈夫です、成人するまでは本番無しです! それまでにがっつり開発されてますけど!」
安心して下さい、とアンジェリカは返すが。
「………………開発?」
大丈夫と安心の意味を問いたくなるジーン。
「えーとですね、男性相手の閨教育も必要だと偽って、お触り系をあれこれと」
無垢な体を自分好みに仕立て上げていくらしい。
「どう偽ればそんなものが必要になるんだ……」
ジーンは頭を抱える。
「そこは虚構の世界なので何とでもなりますよ。王族の方って基本的にみんな綺麗だし。特に第四王子殿下は華奢だし中性的なお顔立ちだし、政略的にお断りできないような他国の王族から妻に迎えたいみたいなのが……実際にもあったりするんですか?」
虚構の世界から現実の世界に話を繋げようとするアンジェリカ。
「貴族だと男同士で政略結婚とか普通に有る訳ですし」
バナンゼーロ王国では、同性婚も認められている。平民同士は一対一のみだが、貴族であれば爵位に応じて複数の相手と婚姻できる。寄付という名の功徳を積むと上限突破も可能だ。
「聞いたことないし、王子しかいないのならまだしも、未婚の王女が二人もいるのに、わざわざフォート兄上を妻に迎えたいと言ってくる国があると思うか?」
正確には未婚の王女は三人いるのだが一人は婚約者有りである。
「えー、第四王子殿下が他国の王子に口説かれて攫われそうになって、宰相閣下が大層お怒りになって取り戻した後、熱い夜を過ごす話もありましたよ?」
確か十二巻目、とアンジェリカは記憶をたどる。
「…………」
王子が攫われかけるという国を揺るがす大事件も、恋愛小説だとスパイス程度なのかと、絶句するジーン。
「あ、ちゃんと成人後ですよ」
ジーンの無言を、幼少時に熱い夜を過ごしたのか? という疑いだと解釈したアンジェリカが言い添える。
「その五巻前の七巻目で成人してます。その七巻目のラストシーンで初めて結ばれるんですけど、すっごい良かったですよ。十八歳の誕生日を迎えた夜、月明かりの差し込む湖のほとりの別荘で満を持して初夜を迎える二人!」
何度も読み返したアンジェリカは暗唱しそうな勢いである。
「初めてなんだけど開発されきった体は正直で! 可愛らしく喘いじゃう訳ですよ。挙句に、初めてだからと加減してた宰相閣下に第四王子殿下が潤んだ瞳で『もっと』っておねだりして、たがが外れた宰相閣下が叩きつけるように腰を激しく振っ……」
「アンジェリカ殿!」
朝の爽やかな光の下で聞く話題ではないと、イーグスが叫ぶように割って入った。
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