51 / 54
愛の試練は続く
しおりを挟む
「奥さま、何かございましたか? ……っ!」
母さまの声が聞こえたのか、玄関から出てきたイチノが、母さまに抱き締められている私を見て、大きく息を呑む。
「旦那さまたちに知らせて参ります!」
イチノは、メイド服の裾を翻し、外に走って行った。意外に俊足で驚く。
そっか、父さま、外に探しに行ってくれてるんだ。
「あの、アスター伯爵夫人」
少し遅れてやってきたトリウさまが、感動の再会を邪魔してもいいものかという顔で遠慮がちに母さまに声を掛けた。
「トリウ嬢? あなたがデイジーを見つけてくれたの?」
「見つけたのは私ではないのですが……」
トリウさまが説明をしようとしたところに。
「デイジーが戻ったというのは本当か!?」
父さまが物凄い勢いで走り込んでくる。
「ミャミャーン(父さまー!)」
「デイジー!!」
ひしっと抱き締められ、愛の試練第二弾である。
「はい、それで、川を流れているところを保護したそうです」
シオン兄さまからの愛の試練も終えて、客間で父さまと母さまがトリウさまからお話を伺っているところである。私は母さまの膝の上だ。
「川……? デイジー、川に落ちたの!?」
母さまの顔が青ざめる。
「ミャン(うん)」
「王城近くまで流れて行ってたなんて……あああ、本当に良く無事で」
ひしっ。
「フギャッ」
愛の試練は続く。
「その助けてくれた学生の名前は? ぜひ御礼をしなければ」
うんうん、娘の命の恩人だもんね、しっかり御礼して欲しい。
「ああ、申し訳ありません、三人いらっしゃいましたが、私、気が急いてしまってお名前を伺っておりませんわ……お一人は有名な方なので家名は分かりますけれど」
トリウさま、ルークさまたちから経緯だけ聞いてすぐ戻って来たもんねえ。
って、有名な方って?
「その方だけでも構わないので教えてもらえるだろうか」
「はい、フォレストベルグ辺境伯さまの御嫡男です。才能に恵まれ、既に剣も魔法も使いこなす百年に一人の逸材だと噂になっている方で」
「ミャッ!?(えっ!?)」
それ、攻略者候補かもしれないから一度顔を見たいなって思ってた人だよ?
魔法を使うってことはロイドさまで確定だよね。
メインヒーローは王子殿下のどちらかだろうから、第二王子殿下と仮定して、学園の在籍期間が被るヒロインとの最大の年齢差は、十三歳くらい?
ヒロイン入学時に、ロイドさまはぎりぎり二十代ということになる。乙女ゲーム的にはありである。
「母さま」
トリウさまがお帰りになり、私は首に巻いていたハンカチと足に巻いていた包帯を外され、母さまのキスで人間に戻った。
「デイジー、ああ、本当にデイジーだわ」
人間バージョンでの愛の試練もクリアし、足の怪我を確認される。
「かさぶたはあるけれど、もう治っているみたいね」
足の怪我は、二筋のかさぶたという形で残っていたが、痛みはない。結構深い傷だったけど、二日で完治とか凄いなロイドさまの治癒魔法。さすが百年に一度の逸材。
「このままお風呂に入っちゃいましょうね、ずっと入れなかったんでしょう?」
お風呂には入れなかったけど、体は拭いてもらってたので、そこまで汚れてはいないけど、念入りに丸洗いされた。
「お腹空いてるでしょう、食事にしましょうね。デイジーの好きなものを用意してもらっていますからね」
毎食ちゃんと食べさせてもらってたから、それほど空いてないけど。
「プリン!」
プリンが出れば食べないという選択肢はない。
ああ、こんな濃い甘味は久し振りだ。猫の間は素材の味、もしくは薄味なものしか……いや、体のことを考えて出してくれてたんだから文句を言う気はないんだけど。
母さまの声が聞こえたのか、玄関から出てきたイチノが、母さまに抱き締められている私を見て、大きく息を呑む。
「旦那さまたちに知らせて参ります!」
イチノは、メイド服の裾を翻し、外に走って行った。意外に俊足で驚く。
そっか、父さま、外に探しに行ってくれてるんだ。
「あの、アスター伯爵夫人」
少し遅れてやってきたトリウさまが、感動の再会を邪魔してもいいものかという顔で遠慮がちに母さまに声を掛けた。
「トリウ嬢? あなたがデイジーを見つけてくれたの?」
「見つけたのは私ではないのですが……」
トリウさまが説明をしようとしたところに。
「デイジーが戻ったというのは本当か!?」
父さまが物凄い勢いで走り込んでくる。
「ミャミャーン(父さまー!)」
「デイジー!!」
ひしっと抱き締められ、愛の試練第二弾である。
「はい、それで、川を流れているところを保護したそうです」
シオン兄さまからの愛の試練も終えて、客間で父さまと母さまがトリウさまからお話を伺っているところである。私は母さまの膝の上だ。
「川……? デイジー、川に落ちたの!?」
母さまの顔が青ざめる。
「ミャン(うん)」
「王城近くまで流れて行ってたなんて……あああ、本当に良く無事で」
ひしっ。
「フギャッ」
愛の試練は続く。
「その助けてくれた学生の名前は? ぜひ御礼をしなければ」
うんうん、娘の命の恩人だもんね、しっかり御礼して欲しい。
「ああ、申し訳ありません、三人いらっしゃいましたが、私、気が急いてしまってお名前を伺っておりませんわ……お一人は有名な方なので家名は分かりますけれど」
トリウさま、ルークさまたちから経緯だけ聞いてすぐ戻って来たもんねえ。
って、有名な方って?
「その方だけでも構わないので教えてもらえるだろうか」
「はい、フォレストベルグ辺境伯さまの御嫡男です。才能に恵まれ、既に剣も魔法も使いこなす百年に一人の逸材だと噂になっている方で」
「ミャッ!?(えっ!?)」
それ、攻略者候補かもしれないから一度顔を見たいなって思ってた人だよ?
魔法を使うってことはロイドさまで確定だよね。
メインヒーローは王子殿下のどちらかだろうから、第二王子殿下と仮定して、学園の在籍期間が被るヒロインとの最大の年齢差は、十三歳くらい?
ヒロイン入学時に、ロイドさまはぎりぎり二十代ということになる。乙女ゲーム的にはありである。
「母さま」
トリウさまがお帰りになり、私は首に巻いていたハンカチと足に巻いていた包帯を外され、母さまのキスで人間に戻った。
「デイジー、ああ、本当にデイジーだわ」
人間バージョンでの愛の試練もクリアし、足の怪我を確認される。
「かさぶたはあるけれど、もう治っているみたいね」
足の怪我は、二筋のかさぶたという形で残っていたが、痛みはない。結構深い傷だったけど、二日で完治とか凄いなロイドさまの治癒魔法。さすが百年に一度の逸材。
「このままお風呂に入っちゃいましょうね、ずっと入れなかったんでしょう?」
お風呂には入れなかったけど、体は拭いてもらってたので、そこまで汚れてはいないけど、念入りに丸洗いされた。
「お腹空いてるでしょう、食事にしましょうね。デイジーの好きなものを用意してもらっていますからね」
毎食ちゃんと食べさせてもらってたから、それほど空いてないけど。
「プリン!」
プリンが出れば食べないという選択肢はない。
ああ、こんな濃い甘味は久し振りだ。猫の間は素材の味、もしくは薄味なものしか……いや、体のことを考えて出してくれてたんだから文句を言う気はないんだけど。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完
瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。
夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。
*五話でさくっと読めます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる