可愛いものをより可愛くする祝福

大森deばふ

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お隣のお兄さん

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「ミャミャミャン!(トリウさまのお兄さまだ!)」
 小半時ほど経ってから、騎士がもう一人の騎士を連れて戻ってきた。トリウさまのお兄さまである。
「飼い主の方ですか!?」
 私の反応に、ルークさまがトリウさまのお兄さまに尋ねる。
「いや、違うが……隣の邸宅で飼われている猫が二日ほど前から行方不明で、騒ぎになっていて」
 トリウさまのお兄さまが、私の顔を覗き込む。
「御当主が仕事も休んで探されていてね、念の為に見に来たんだが、似てるような気もするが違うような気もするな」
「ミャミャン、ミャンミャミャミャ―、ミャミャ(酷いです、私はトリウさまのお兄さまのお顔をちゃんと覚えてるのに)」
 思わず突っ込む。
 まあ、令嬢としての私は認識していただいてますよね、猫の私はともかく。
 というか、父さま、お仕事も休んで!? つまり今日がもし平日で私が王城に辿り着いていても出仕してなかったってことですね? 無駄足にならずによかった。
 じゃなくて、そんなに心配して探してくれてるんだ、ごめんなさい。


「この猫の名前は何ですか? 呼んでみてもらっても?」
 トリウさまのお兄さまに、ロイドさまが問う。
「隣の家の猫ならデイジーだ。御令嬢と同じ名前だからな」
「令嬢と同じ名前?」
 ハンスさまが怪訝そうな顔をする。うん、娘と飼い猫の名前が一緒とか、普通じゃないですよね。でもしょうがないの、どっちも私なんだもん。
「そのくらい可愛がっているんだと……もちろん御令嬢のことも同じくらい可愛がっていらっしゃるよ」
 トリウさまのお兄さまは、フォローしてくださるつもりだったのだろうが。
「猫と御令嬢を同じくらい……」
 ハンスさまが、うっと口を押さえる。
 あ、これ、令嬢の私のほうがかわいそうに思われてるパターン。父さまに濡れ衣がかけられてる。
 だから、どっちも私だから! 同じくらい可愛がられてて当たり前なんですうう。


「デイジーなのか?」
「ミャン(はい)」
 トリウさまのお兄さまに名前を呼ばれたので応える。
「うーん、知ってる相手に対する反応っぽいけど」
 トリウさまのお兄さまは、私がデイジーだという確証を持てないらしい。猫状態での付き合いは薄いもんね。
「よく分からないまま連れて行って違ったら、がっかりさせるだろうから、もう少し待っていてもらえるかな? この猫をよく構っている妹が、見学に来ることになっているから。妹に見せれば確実だ」
「ミャ!(了解です!)」
 やっぱりトリウさま、今日、見学にいらっしゃる予定だったんだ!
「え、猫ちゃん……ええと、デイジー?」
 ひゃっほう! とテンションの上がった私に、ルークさまが目を丸くした。
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