可愛いものをより可愛くする祝福

大森deばふ

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メインヒーローの条件

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「あら、第一王子殿下じゃなくて、第二王子殿下のことが知りたいの?」
 レティーシャさまに問われ、私はこくこくと頷く。
 推定メインヒーローの第二王子殿下のことをまずは知りたい。
 第一王子殿下も大事だよ? だって、物語の強制力に左右されない第一王子殿下が、陛下の跡継ぎとして存在しているお陰で、第二王子殿下が学園でのん気に恋愛に耽っていられるのである。
「はい、フレイズさまと仲良しなのかなって思って……」
 フレイズ嬢といずれ婚約するとしたら、第二王子殿下に私が直接興味を持っているというのはまずいかもしれない。知り合い(って言ってもフレイズ嬢には一回しか会ったことないけど)の知り合いなので興味がありますという体にする。
 だって本当に違うんです、野次馬根性なんです、恋とかじゃないんです!
「お名前はユードルム第二王子殿下よ。仲良しは仲良しね。活発なフレイズとは逆に、少し内気な方なんだけど」
 活発な侯爵家令嬢と内気な王子さま。
 うん、ちょっと私が思ってたのと違うけど、そういうのにも一定のファンがつく筈である。でも内気となると、メインヒーローの可能性低くならない?


「逆に違う性格だからいいのかもしれないわ、あのフレイズが、第二王子殿下には優しいもの」
 母親であるレティーシャさまに『あのフレイズが』と言われてしまうフレイズ嬢の性格とは、一体どんなものなのか。苛烈系悪役令嬢の場合、末路が割と酷いことが多いので心配である。
「優しいのはいいことだと思います」
 断罪されても、幼少時の思い出で、情けを掛けてもらえるといいなあ。というか、そもそも断罪されないようにヒロインには他の攻略対象者と恋に落ちてもらいたい。
「そうね。まあ、殿下は体が弱いから、義父上からも無茶しないように言い含められてるからなんだけど」
 内気で体が弱いって、メインヒーロー像からかけ離れていくんですけど。
 年下の攻略対象者にありがちな属性である。第二王子殿下が年下枠だと、第一王子殿下がメインヒーローに浮上してきちゃう、そんなに王子さまばっかり攻略してどうするのだと……まあ、自国の王子何人かと留学中の他国の王子(複数)が攻略対象という、どう転んでもどこかの国の王族になれるゲームもあったけど。
 いやいや、まだ諦めるのは早い。幼少時は病弱でいじめられっ子だったけど、成長とともに丈夫になって聖剣引っこ抜いて勇者になるような話だってあるし、きっと大丈夫、第二王子殿下の将来に期待。


「殿下は、お体が弱いんですか?」
 どの程度の話なのだろうか。遊び相手がいるということは、ベッドに寝たきりなんてことはないと思うんだけど。
「そうね、だから義父上がついているのだし」
 ジスカール侯爵家は、代々薬を扱う薬師の家系なのだそうだ。全国各地、主要な街には、ジスカール侯爵家の息がかかった薬屋があるのだという。地味にすごいというか、その流通網はいろいろ使えると思うんだよね、いい方にも悪い方にも。
 ジスカール卿御自身は、魔法関連の研究者であると同時に薬師である。特に魔力が関係する症例に詳しく、私の呪いも、魔法関連の異常と言えば異常なので、診ていただいたらしい。
 そんなジスカール卿がついているくらいの弱さ……大丈夫じゃない気がしてきた。
「一時期は生死の境をよく彷徨われてたけど、その頃を考えると、今は随分丈夫になられたわ」
 生死の境を彷徨うレベル……やっぱり大丈夫じゃないかも。
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