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炎の令嬢
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「デイジー嬢は、どんな色のリボンが好き?」
ひとしきりフレイズ嬢を眺めた後、お茶会は始まった。小さいマフィンをぱくりと口に入れていると、レティーシャさまに問われる。
今日の私は、ツインテールに濃紺のリボンを結んでいる。
耳より高い位置で結ぶツインテールなんて、可愛い子にしか許されないと思っていたので、以前の私はしたことがなかったが、現在の私はそこそこ可愛い。しかもまだ幼女。やりたい放題である。実際に結んでくれるのはイチノなんだけど。
「えっと、緑?」
瞳の色が緑だからなのか、身に着けるものは緑系が多い。母さまの趣味なんだろうと思う。私も好きである。魔力の属性は土で黄色だけどね!
「そう、緑色が好きなのね。明るい色のリボンもあったほうがいいわね」
レティーシャさまが、手帳に何やらメモっている。魔法陣入りリボンが増えるという話なのだろうか。
「飾り櫛はまだ危ないかしら、ハルシャはどう思う?」
幸せいっぱいという顔でレティーシャさまを見つめていた母さまに訊ねる。
「よく転ぶのでまだ危ないと思いますわ、レティーシャさま」
転んだ拍子に頭に櫛が刺さる心配なのかな、もしかして。
「では将来の楽しみにしておきましょう。それにしても女の子だと髪型もいろいろ遊べていいわね」
私のツインテールの髪の先をくるくるとしながら、レティーシャさまが羨ましそうに母さまを見る。
「デイジーは、自分で『こんな髪型』と言ってメイドに結んでもらっているんですよ、私の自由にはなりませんの」
だって、やってみたい髪型って結構あるんだもん。母さまの希望を聞いている余裕はない。というか、レティーシャさまは、母さまを羨ましがってないで、フレイズ嬢で遊べばいいのに。
そう思って眠っているフレイズ嬢を見ると、髪はまだ小さいからか短く整えられていて、髪に結べないからなのか、手首に綺麗な水色のリボンが巻かれている。
「あ、ほどけそう」
結び直してあげようとお姉さんぶった私は、眠っているフレイズ嬢にてけてけと駆け寄った。
「デイジー嬢? フレイズから離れて!」
しゅるり、と水色のリボンをフレイズ嬢の手首から抜き取った瞬間、レティーシャさまから鋭い声が飛ぶ。
「え?」
離れろと言われても、急にかけられた鋭い声に驚いた私は、びくっとなって動けなくなった。
「レティーシャさま? どうなさいましたの? デイジーが何か?」
母さまも何事かと慌てている中、レティーシャさまが私を抱き上げてフレイズ嬢から引き剥がす。
「驚かせてごめんなさいね、そのリボンは外してはいけないのよ」
レティーシャさまは、私の手から滑り落ちた水色のリボンを拾う。
騒ぎで目が覚めたのか、フレイズ嬢が身を起こす。ぼんやりとした目で近くにいたシオン兄さまを眺める。
「だれ?」
知らない相手だと認識したのか、聞いていた通りの深紅の瞳が険しくなり、フレイズ嬢は、ぶわっと炎を纏った。
大事なことなのでもう一度言う。
フレイズ嬢は、炎を纏った。
「ええええええええええっ」
ひとしきりフレイズ嬢を眺めた後、お茶会は始まった。小さいマフィンをぱくりと口に入れていると、レティーシャさまに問われる。
今日の私は、ツインテールに濃紺のリボンを結んでいる。
耳より高い位置で結ぶツインテールなんて、可愛い子にしか許されないと思っていたので、以前の私はしたことがなかったが、現在の私はそこそこ可愛い。しかもまだ幼女。やりたい放題である。実際に結んでくれるのはイチノなんだけど。
「えっと、緑?」
瞳の色が緑だからなのか、身に着けるものは緑系が多い。母さまの趣味なんだろうと思う。私も好きである。魔力の属性は土で黄色だけどね!
「そう、緑色が好きなのね。明るい色のリボンもあったほうがいいわね」
レティーシャさまが、手帳に何やらメモっている。魔法陣入りリボンが増えるという話なのだろうか。
「飾り櫛はまだ危ないかしら、ハルシャはどう思う?」
幸せいっぱいという顔でレティーシャさまを見つめていた母さまに訊ねる。
「よく転ぶのでまだ危ないと思いますわ、レティーシャさま」
転んだ拍子に頭に櫛が刺さる心配なのかな、もしかして。
「では将来の楽しみにしておきましょう。それにしても女の子だと髪型もいろいろ遊べていいわね」
私のツインテールの髪の先をくるくるとしながら、レティーシャさまが羨ましそうに母さまを見る。
「デイジーは、自分で『こんな髪型』と言ってメイドに結んでもらっているんですよ、私の自由にはなりませんの」
だって、やってみたい髪型って結構あるんだもん。母さまの希望を聞いている余裕はない。というか、レティーシャさまは、母さまを羨ましがってないで、フレイズ嬢で遊べばいいのに。
そう思って眠っているフレイズ嬢を見ると、髪はまだ小さいからか短く整えられていて、髪に結べないからなのか、手首に綺麗な水色のリボンが巻かれている。
「あ、ほどけそう」
結び直してあげようとお姉さんぶった私は、眠っているフレイズ嬢にてけてけと駆け寄った。
「デイジー嬢? フレイズから離れて!」
しゅるり、と水色のリボンをフレイズ嬢の手首から抜き取った瞬間、レティーシャさまから鋭い声が飛ぶ。
「え?」
離れろと言われても、急にかけられた鋭い声に驚いた私は、びくっとなって動けなくなった。
「レティーシャさま? どうなさいましたの? デイジーが何か?」
母さまも何事かと慌てている中、レティーシャさまが私を抱き上げてフレイズ嬢から引き剥がす。
「驚かせてごめんなさいね、そのリボンは外してはいけないのよ」
レティーシャさまは、私の手から滑り落ちた水色のリボンを拾う。
騒ぎで目が覚めたのか、フレイズ嬢が身を起こす。ぼんやりとした目で近くにいたシオン兄さまを眺める。
「だれ?」
知らない相手だと認識したのか、聞いていた通りの深紅の瞳が険しくなり、フレイズ嬢は、ぶわっと炎を纏った。
大事なことなのでもう一度言う。
フレイズ嬢は、炎を纏った。
「ええええええええええっ」
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