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合法ロリ
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「母さま、お花いっぱいね?」
庭でお茶会に飾る花を選んで、母さまは手づから鋏をふるう。
父さまの許可をもぎ取った母さまは、すぐさまレティーシャさまの都合を伺う使者を送った。そして今日が、お茶会当日である。
「レティーシャさまがいらっしゃるんですもの、花いっぱいでお迎えしたいでしょう? あの方の前ではどんな花も霞んでしまうけれど」
確かにすっごい美少女だったけど。
「十代の頃は妖精姫なんて呼ぶ人もいて、人間じゃないんじゃないかって噂まであったのよ」
あまりの美貌に妖精姫と崇めたくなる人がいたのだろう、それは分かるが。
「十代の頃???」
今も十代では? と、私が混乱していると。
「レティーシャさまは、十代の頃からあまりお変わりないが、私よりも年上だよ」
庭にやって来た父さまに抱き上げられる。
父さまは二十代後半である。それよりも年上? あの十代半ばに見える美少女が?
それってそれって、いわゆる。
「合法ロリ?」
思わず口に出して聞いてしまった。
「ごうほう……何だって?」
父さまに聞き返され、さっと目を逸らす。
「何でもないの」
この異世界にはない概念のようだ。
「あ、ねんねしてる……」
約束の午後二時少し前に、ジスカール家の馬車が到着した。馬車から降りてきたレティーシャさまの腕の中で、深紅の髪の幼児が眠っている。
「こんにちはデイジー嬢。馬車に揺られているうちに眠っちゃったのよ」
私がお子さまに会いたいと言ったのを覚えてくれていたらしい。
「何か掛けるものを用意しますね。ようこそいらっしゃいましたレティーシャさま」
「本日はお招きありがとう、ハルシャ」
「可愛い……」
客間のソファの片隅に寝かされた幼児を覗き込んだシオン兄さまの息が、一瞬止まった。二歳にして男の心を射抜くとは、将来有望過ぎる。
「うんうん、可愛いが渋滞してるよね!」
レティーシャさまによく似た面差しの幼児がすぴすぴ寝息を立てているのである。可愛い以外の語彙がどっかにいっちゃうよね。
「渋滞してるの?」
レティーシャさまがくすくすと笑う。
「この子が起きてたらそんなこと言ってられないわよ、それはもうやんちゃで」
寝顔だけ見ているとやんちゃさを感じないけど、二歳と言えばイヤイヤ期に差し掛かった頃かもしれない。
「レティーシャさま、この子のお名前は?」
「フレイズよ」
そんな感じの女神の名前を聞いたことがあるな、などと思っていたら。
「火属性の魔力が多いから、炎を意味する言葉からつけたの」
女神は関係なかったようだ。炎のフレイムかららしい。
「だから、びっくりするくらい赤い髪でしょう? 今は眠っているから分からないけど、瞳もそうなのよ」
この世界、髪の色は、大体の人が茶系統である。それとは一線を画す深紅の髪はかなり珍しいと思う。レティーシャさまの髪もかなり赤みがかってるけど。
「火属性だと、赤くなるの?」
属性によって、髪色が左右されるのだろうか。
「普通はならないわ、魔力が強い人だけね。髪や瞳の色に属性の影響が出るのよ」
そういえば御子息が、火は赤、水は青、風は緑、土は黄って教えてくれたっけ。
私は土属性だから黄色……うん、髪は薄茶だけど瞳は緑なんだよね、影響全然出てないね! さすが魔力持ちの中では下の方って言われただけのことはあるね!
庭でお茶会に飾る花を選んで、母さまは手づから鋏をふるう。
父さまの許可をもぎ取った母さまは、すぐさまレティーシャさまの都合を伺う使者を送った。そして今日が、お茶会当日である。
「レティーシャさまがいらっしゃるんですもの、花いっぱいでお迎えしたいでしょう? あの方の前ではどんな花も霞んでしまうけれど」
確かにすっごい美少女だったけど。
「十代の頃は妖精姫なんて呼ぶ人もいて、人間じゃないんじゃないかって噂まであったのよ」
あまりの美貌に妖精姫と崇めたくなる人がいたのだろう、それは分かるが。
「十代の頃???」
今も十代では? と、私が混乱していると。
「レティーシャさまは、十代の頃からあまりお変わりないが、私よりも年上だよ」
庭にやって来た父さまに抱き上げられる。
父さまは二十代後半である。それよりも年上? あの十代半ばに見える美少女が?
それってそれって、いわゆる。
「合法ロリ?」
思わず口に出して聞いてしまった。
「ごうほう……何だって?」
父さまに聞き返され、さっと目を逸らす。
「何でもないの」
この異世界にはない概念のようだ。
「あ、ねんねしてる……」
約束の午後二時少し前に、ジスカール家の馬車が到着した。馬車から降りてきたレティーシャさまの腕の中で、深紅の髪の幼児が眠っている。
「こんにちはデイジー嬢。馬車に揺られているうちに眠っちゃったのよ」
私がお子さまに会いたいと言ったのを覚えてくれていたらしい。
「何か掛けるものを用意しますね。ようこそいらっしゃいましたレティーシャさま」
「本日はお招きありがとう、ハルシャ」
「可愛い……」
客間のソファの片隅に寝かされた幼児を覗き込んだシオン兄さまの息が、一瞬止まった。二歳にして男の心を射抜くとは、将来有望過ぎる。
「うんうん、可愛いが渋滞してるよね!」
レティーシャさまによく似た面差しの幼児がすぴすぴ寝息を立てているのである。可愛い以外の語彙がどっかにいっちゃうよね。
「渋滞してるの?」
レティーシャさまがくすくすと笑う。
「この子が起きてたらそんなこと言ってられないわよ、それはもうやんちゃで」
寝顔だけ見ているとやんちゃさを感じないけど、二歳と言えばイヤイヤ期に差し掛かった頃かもしれない。
「レティーシャさま、この子のお名前は?」
「フレイズよ」
そんな感じの女神の名前を聞いたことがあるな、などと思っていたら。
「火属性の魔力が多いから、炎を意味する言葉からつけたの」
女神は関係なかったようだ。炎のフレイムかららしい。
「だから、びっくりするくらい赤い髪でしょう? 今は眠っているから分からないけど、瞳もそうなのよ」
この世界、髪の色は、大体の人が茶系統である。それとは一線を画す深紅の髪はかなり珍しいと思う。レティーシャさまの髪もかなり赤みがかってるけど。
「火属性だと、赤くなるの?」
属性によって、髪色が左右されるのだろうか。
「普通はならないわ、魔力が強い人だけね。髪や瞳の色に属性の影響が出るのよ」
そういえば御子息が、火は赤、水は青、風は緑、土は黄って教えてくれたっけ。
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