可愛いものをより可愛くする祝福

大森deばふ

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魔力チートはありません

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「デイジー、何処でそんな言葉を覚えたんだ……」
 父さまがわなわなと震えている。『イカれた』は、貴族令嬢的にはアウトだったらしい。高祖母さまに憤るあまり、令嬢モードに言葉を変換する前に心の声がするっと洩れてしまってた。
「街に出た時にでも聞きかじったのかしら」
 母さまが頬に手を当てて考え込む。確かに屋敷内では聞かない言葉である。
「はい、母さま、そうかもです」
 私もその路線で誤魔化そうとしたのだが。
「そうかな、完全に意味が分かった上で的確に使っていただろう」
 ジスカール卿が楽しそうに突っ込んでくる。その通りだけど見逃してほしかった。
「そうですね、まだ三歳なのに頭のいい子ですね」
 御子息は褒めてくれる。
 うん、三歳児基準ならいい線いくと思う。私の中身相当の大人と比べるとダメダメだけどね!




「話を戻すが、この祝福を無理に剥がすのは勧められないな」
 ジスカール卿が、かなり前まで話を戻した。
「今は体がもたないということでしたが、大きくなってからなら可能ですか?」
「それも勧められない。魔力的な障害が出る可能性が高い」
「そんなっ……」
 父さまは顔を覆ってしまう。私には魔力的な障害とやらが何か分かんないけどね。
「悲観する必要はないよ。他の文献も当たってみたが、子供を対象としているこの手の魔法は時間経過で徐々に弱まって行って、成人する頃には自然に解けることが多いとある」
 デイジー三歳、成人まであと……あれ、この国の成人って何歳だろ。
「成人まで十五年もありますが?」
 父さまの言葉から計算すると、成人年齢は十八歳のようだ。
「祝福の発動を阻害する魔術式は作れるから、どうしても猫になってはいけない場面はそれで対応するといい」
 一応、解決策はあるようだ。さっき、この呪いじゃなくて祝福の魔術式は読み取れなかった気がするけど、阻害するだけなら可能なのかな?


「ずっと猫にならないようには出来ないのでしょうか?」
「出来るか出来ないかでいえば、出来るけれど」
 ジスカール卿はそこでいったん言葉を切って、首を横に振る。
「魔力が安定する十歳くらいまでは、必要最低限の利用にしたほうがいいね。ずっと阻害していると、本来なら魔術師になれるくらいの魔力量を持てたのに、それを得られないなんてことになりかねない」
 あれ、私、魔術師になれるかもしれないって話?
 異世界転生したからには、魔法で無双しちゃったりするのがお約束?
「まあ、ジスカール卿、デイジーにはそんなに魔力が?」
 母さまも同じ疑問を覚えたらしい。
「いわゆる魔力があると判定される中では下の方、という程度かな」
 転生者なのに、魔力チートはついていないらしい。おかしい。
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