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呪いではなく祝福
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「ああっ、レティーシャさまの研究のためなら喜んで差し出したいところですのに」
母さまが悶えている。待って、差し出さないで母さま!?
「残念ながら、私の娘ですの」
残念らしい。母さまの愛を疑う。
というか、レティーシャさまは魔獣の研究をされているのだろうか。魔獣が存在する世界なんだ。魔法がある世界だから魔獣がいてもおかしくないけど、私は見たことがないし、物語の中だけの存在かと思ってた。この分だと魔王とかドラゴンとかもいるかも。
「ハルシャの娘? 猫を産んだって話は聞いてないけれど」
そりゃそうですよレティーシャさま、私、生まれた時は人間でしたし? 今でも人間ですし? 見た目は猫だけど。
「キスしてみればいいのね?」
一通り説明を受けたレティーシャさまが、顔を近付けてくる。美少女のキス顔をこの近距離で拝むことになるとは……ジスカール卿の時よりどきどきするんですけど。
「そうですわ、お願いしますレティーシャさま」
母さま、お願いしながらハンカチ握り締めて羨ましそうな顔で見てくるのやめて。
「……戻らないわね」
「ミャミャン(そうですね)」
とりあえず、解呪条件に顔面偏差値は関係ないようだ。
「人間に戻っても可愛いわね」
結局、母さまからのキスで人間に戻り、衝立の陰で侍女に服を着せてもらう。
「ありがとうございます、レティーシャさま」
美少女に言われると、なんだかすごく自信がつく。
うん、私だってもともと普通に可愛いの部類だもんね。周りもみんな可愛いから埋もれてるだけで。西洋風の顔立ちの区別が、中身日本人の私についてないだけ疑惑もあるけど。
「どういたしまして……しっかりしてるわね、お幾つ?」
「三歳です!」
中身の年齢は足さないでおく。当たり前だ。
「うちの子より一つ年上なのね」
「うちの子?」
レティーシャさま、そんな十代半ばみたいな華奢な体で既に子持ち?
「ええ、ちょっと魔力が強いものだから、毎日ボヤ騒ぎなのよ」
魔力の強さとボヤ騒ぎの関係が分からないけど、ニュアンスとしては、うちの子やんちゃで、といったところだろうか。
「デイジー嬢、診せてもらうから少しじっとしていてくれるかな」
ジスカール卿の診察を受ける。診察と言っても、猫の時のように撫でまわされたりはしなかった。普通に脈を測られ、魔力の流れがどうとか言いながら額と首筋に手を当てられる。
「完全に馴染んでいるね」
つまり猫になる魔法が定着していると?
「解除できないんですか? こんな呪いを受けたままではこの子の将来が」
父さまがジスカール卿に泣きつく。
私としても、ちょっとした衝撃で猫になってしまうからと、屋敷内をうろうろするだけの暮らしは退屈である。たまの散歩も敷地内だけだし。将来という規模で考えたら、一番問題になるのは婚姻だと思う。『私、猫になります』と言われて動じない殿方は果たしているだろうか。まあその前に『そんな呪いを受けた令嬢などとんでもない』ってことで、結婚話自体が来ないだろう。
「出来ないことはないけれど、この年齢では体力がもたないと思うよ。もう少し大きくなってからになるね。それと、これは呪いではなく祝福だよ」
「はあっ?」
おっと、淑女らしからぬ声を出してしまったわ。
母さまが悶えている。待って、差し出さないで母さま!?
「残念ながら、私の娘ですの」
残念らしい。母さまの愛を疑う。
というか、レティーシャさまは魔獣の研究をされているのだろうか。魔獣が存在する世界なんだ。魔法がある世界だから魔獣がいてもおかしくないけど、私は見たことがないし、物語の中だけの存在かと思ってた。この分だと魔王とかドラゴンとかもいるかも。
「ハルシャの娘? 猫を産んだって話は聞いてないけれど」
そりゃそうですよレティーシャさま、私、生まれた時は人間でしたし? 今でも人間ですし? 見た目は猫だけど。
「キスしてみればいいのね?」
一通り説明を受けたレティーシャさまが、顔を近付けてくる。美少女のキス顔をこの近距離で拝むことになるとは……ジスカール卿の時よりどきどきするんですけど。
「そうですわ、お願いしますレティーシャさま」
母さま、お願いしながらハンカチ握り締めて羨ましそうな顔で見てくるのやめて。
「……戻らないわね」
「ミャミャン(そうですね)」
とりあえず、解呪条件に顔面偏差値は関係ないようだ。
「人間に戻っても可愛いわね」
結局、母さまからのキスで人間に戻り、衝立の陰で侍女に服を着せてもらう。
「ありがとうございます、レティーシャさま」
美少女に言われると、なんだかすごく自信がつく。
うん、私だってもともと普通に可愛いの部類だもんね。周りもみんな可愛いから埋もれてるだけで。西洋風の顔立ちの区別が、中身日本人の私についてないだけ疑惑もあるけど。
「どういたしまして……しっかりしてるわね、お幾つ?」
「三歳です!」
中身の年齢は足さないでおく。当たり前だ。
「うちの子より一つ年上なのね」
「うちの子?」
レティーシャさま、そんな十代半ばみたいな華奢な体で既に子持ち?
「ええ、ちょっと魔力が強いものだから、毎日ボヤ騒ぎなのよ」
魔力の強さとボヤ騒ぎの関係が分からないけど、ニュアンスとしては、うちの子やんちゃで、といったところだろうか。
「デイジー嬢、診せてもらうから少しじっとしていてくれるかな」
ジスカール卿の診察を受ける。診察と言っても、猫の時のように撫でまわされたりはしなかった。普通に脈を測られ、魔力の流れがどうとか言いながら額と首筋に手を当てられる。
「完全に馴染んでいるね」
つまり猫になる魔法が定着していると?
「解除できないんですか? こんな呪いを受けたままではこの子の将来が」
父さまがジスカール卿に泣きつく。
私としても、ちょっとした衝撃で猫になってしまうからと、屋敷内をうろうろするだけの暮らしは退屈である。たまの散歩も敷地内だけだし。将来という規模で考えたら、一番問題になるのは婚姻だと思う。『私、猫になります』と言われて動じない殿方は果たしているだろうか。まあその前に『そんな呪いを受けた令嬢などとんでもない』ってことで、結婚話自体が来ないだろう。
「出来ないことはないけれど、この年齢では体力がもたないと思うよ。もう少し大きくなってからになるね。それと、これは呪いではなく祝福だよ」
「はあっ?」
おっと、淑女らしからぬ声を出してしまったわ。
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